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	<title>story&#039;s Novel２</title>
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	<description>ギル菊腐向け・菊女体化混在注意</description>
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		<title>LAST</title>

		<description>各国の化身が集まる懇親会が始まる3時間程…</description>
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			<![CDATA[ 各国の化身が集まる懇親会が始まる3時間程前。

日本、プロイセン、ドイツ、イギリス、ロシア…そして面白そうだからとフランスが大きなテーブルを囲んでいる。

ーーコンコンコン

「入ってくれ」
大きな両扉をノックする音にドイツが気付き、入室を促す。扉の向こうから姿を見せたのは菊だ。
「失礼します。おはようございます皆さん。遅くなりました」
「Bonjour！菊ちゃん！」
我先にと挨拶の声を上げたフランスを筆頭に夫々が穏やかに朝の挨拶を告げた。
菊の背後からニュルンと姿を見せたのはゴースト達。今朝も元気そうに発光している。心做しか昨日よりもツヤツヤして見えるのは気の所為だろうか？
「いつまで拗ねてるんですか？ほら此方へ」
「……拗ねてねえし」
菊は扉の影に隠れている人物を呼び込む様に手を差し伸べながら何やら話をしている。
昨日の幼子であろうと、直ぐに興味を無くした化身達はこの後の懇親会の内容や段取りについて話し出す中、感じたことの無い気配にイギリスは菊の方を訝しむ様にじっと見詰めた。
『何だこの気配……抑えちゃいる様だが、安定してないしブレがある』
視線の先で菊が手を引いて入室して来た人物にイギリスはギョッと目を見開く。
「……プロイセン？」
イギリスが懐疑的にプロイセンと名を呼んだ人物に皆の視線が集中した。
ロシア、フランス、ドイツも驚いた様にイギリスの視線の先を見つめて絶句する。

しかし、当のプロイセンはイギリスの目の前に位置する席に着いており、隣の日本と目を丸くしてイギリスの先を見つめているのだ。

ーーこれは誰だ？

その場に居る全員が思った。
化身達の視線の先には輝く銀の髪、赤味の強い暴力的な眼差し、服の上からでも分かる引き締まった身体のラインに、剥き出しの腕や首に目立つ綺麗な筋肉。異質なのはその額から天井に向かって湾曲した髪色と同じ角。
その角を除けば、どこからどう見てもプロイセンそのもの。
その角の生えたプロイセンはこの部屋に姿を見せてからずっと無表情で腕を組んで立つ姿は無愛想な様子。
だが、いつものプロイセンにある筈の普段の喧しさが也を潜め、感じる事の無い厳かな美しさが際立つ。
自分達が知っているあのプロイセンとは正反対で、その静けさが奇妙で逆に怖い。
「すみません、改めてご紹介させて頂きます。此方、魔界の王ギルベルト様で御座います」
「…フン」
隣に菊が並び立ち、皆に紹介した事で漸くそのプロイセンが昨日の幼子･ギルベルトであると認識出来た。
「！、……えぇ…真面目なプーちゃんとか気持ち悪い【ガンッ】ッブフ！？」
ボソリと呟いたのはプロイセンの隣に座するフランス。そのフランスに無言の裏拳をキメたプロイセンはまじまじとギルベルトを眺めた。
「…やべ。俺様小鳥カッコイイぜ……！見ろよ日本！！あの角とかかっけぇ！！！」
「なんて厨二的な……っ！！」
キャッキャと騒ぐプロイセンの隣で日本はこの手にカメラが無い事を心底後悔していた。
プロイセンには厨二が似合うのだ。通常よりも赤が強い瞳に、胸元のボタンを三段目まで開けたシャツの下から覗く美しい胸筋と腹筋。額から生えた角がより一層非現実を実感させる。
全てが自前で最早コスプレ要らずとは……っ！イケメンなプロイセンは侮れないのだ。
イケメンは爆ぜろ！と男として悔しく思いながらも目の前の厨二イケメンの前では素直になる他ない。この際あとで写真でも撮らせてもらおうと日本は密かに画策する。
「流石プロイセン君！あ、この場合はギルベルトさんですね！もうもう！完璧ですよ！」
「お？……おう…」
珍しく握りこぶしを作り、プロイセンを見上げる日本は興奮状態だ。普段死んだ魚のような目をしている瞳がキラキラと輝いてるのは気の所為だろうか？
目の前の日本にプロイセンは何だか面白くない心地になる。
「……お、俺様の方がかっけぇし」
「？、何か仰いました？」
「べっつにー」
唇を尖らせてそっぽを向くプロイセンに日本は首を傾げた。

＊

未だに腕を組み、静かに化身達を見つめるギルベルトには無言の圧力があった。
ドイツは遠い記憶にある厳しくも優しい兄の姿を思い浮かべ、僅かに高揚感を覚える。
戦時中をも思わせる兄は贔屓目でなくともカッコよかった。前線にて統率力を発揮した才能溢れる兄。ドイツの憧れである。
僅かに緊張する己に叱咤して、ギルベルトと菊の元へ足を進めた。
「その姿を見るに、力が戻ったと解釈しても良いのだろうか？」
ドイツの問い掛けにギルベルトは厳しい眼差しを少しばかり緩めてニヨリと口角を上げる。
「まあな。9割ってとこだけど」
9割？
全快には至らなかったと残念そうにしているギルベルトは菊の隣で浮遊しているゴースト達を恨めしそうに睨んでいる。
ゴースト達が関係しているのだろうか？とドイツは答えを求めて菊を見下ろした。
だが、ドイツと目が合った菊はビクリと肩を跳ねさせて視線を落としてしまう。ドイツが求めているのは明確な返答だったのだが、これでは全く分からない。
「すまない、何か事情があっての事だろうか？ホテルの設備に問題があったのならば詫びよう」
申し訳なさそうに眉を下げたドイツにギルベルトは目を瞬き、菊は気まずそうに「いえ、快適でしたよ」とフォローを入れた。じゃあ何でこんなにもギルベルトは不機嫌なんだとドイツは眉を寄せる。
どれ程の魔力が必要なのか皆目見当もつかないが、全快じゃない状態で向こうの世界に帰れるのか疑問だ。
「あー、別にお前が悪い訳でも部屋が悪かった訳でもねえよ。肉欲っつうか菊とセッ…【ゴスッ】ってえ！！！！」
スラスラと理由を語り出したギルベルトに菊はギョッとした表情になると突然ギルベルトの脇腹に肘鉄を喰らわせる。無防備だった脇腹にめり込んだ肘鉄は嫌な音が鳴っていた。想像以上に痛そうだ。ドイツは顔色を悪くする。
「何でもありませんよ」
ニッコリと微笑む菊が怖い。
ドイツはこれ以上追求するのはやめておこうと決めた。
「〜ッ、」
蹲って痛みをやり過ごすギルベルトの周りにゴースト達が浮遊し、ブルブルと揺れている。あれは何だろうか？
ドイツの隣に並び、同じようにフランスとアメリカがゴースト達を観察した。
一見心配している様に見えるが、あれは…………笑っている。
腹を抱え込んでグルグル空中を転げ回っている。
「可愛い顔して性格が悪魔なんだゾ……」
「確かに…でもお兄さんは嫌いじゃないけど」
うげぇと表情を歪めたアメリカの隣でフランスはウンウンと楽しそうに頷く。
「そんな事より、向こうの世界には帰れるのか？」
1番気掛かりなのは帰れるのかどうかだ。ドイツは眉を寄せて微笑む菊に問いかけた。
「はい。恐らく大丈夫です」
「恐らく？」
釈然としない返答にドイツは蹲るギルベルトを見下ろした。
「あーいってぇ……。まあ、帰るには帰れるぜー。俺様優秀だからな」
口端を引き攣らせながらも不敵に笑むギルベルトを前に、早々に問題が終息しそうだとドイツは安堵の息を吐いた。
「そうか。それならば良かった」

ーーバァアアアアン！！！
「「「！？！？」」」

ホッと息を吐いたのも束の間、突如扉が木っ端微塵になりそうな悲鳴を上げて放たれる。
驚いて見遣った視線の先、そこには朝から御免蒙りたい人物が立っていた。
「グッッモオオオオニン！！ダーリン！！！」
左の指先にランチバッグらしき物を吊り下げて仁王立ちしているゴウリー。
目当てのダーリン、イギリスを見つけるや否やアメフトを思わせる瞬発力と風圧を以て白目を剥くイギリスへと突進をキメた。
勿論、イギリスは色んな意味で危機を感じ取り、その場から逃げ出そうと踵を返して走り出す。
だが、ビターンッと痛い音を響かせてその場で倒れ伏してしまった。
「……ッ！！！」
何も無い床だったはず、何に躓いたのだとイギリスは痛みを耐えながら諸悪の根源を認識すると、剣呑に目を尖らせた。
「あらやだ。お兄さんの長い足が邪魔しちゃった？ごめーん★」
「てめっ……！！」
そう、イギリスの足を態と引っ掛けたのはフランスだ。イギリスはフランスに掴みかかろうと体制を整えるが、その指先はフランスでは無く、真っ白なフリル付きのシャツを掴んでしまう。無駄に生地が滑らかで高級品だと分かるのが癪だ。
「ダーリンったら、朝から大胆ね…！ゴウリーはいつだってOKだけど！」
「！、OKどころかKOだわ！！！」
頬を染めてイギリスを見下ろすゴウリーに思わず突っ込むが、それどころじゃない。
「ダーリンの為に朝3時に起きて、お風呂に入ってスキンケアにメイクまで頑張ったのよ？1時間程余った時間で、ゴウリー特性のサンドイッチを作ったから一緒に食べましょ？あ、アタシを前菜になんてナンセンスよ！アタシはメ･イ･ン♡」
バチコンとブラシの様な睫毛を靡かせてウィンクするゴウリーにイギリスは言葉を無くす。
「良かったねー。お兄さん羨ましくなっちゃう。こんな献身的なamourがいるなんて」
ニヨニヨと嫌味全開でフランスが笑えば、遠巻きに閲覧していたアメリカとロシアも失笑気味に見下ろしてくる。
ドイツと日本、プロイセンは我関せずを決め込み、ギルベルトと菊を囲んでい話を進めているようだ。
「さあダーリン！お腹空いたでしょ？ゴウリー特製サンドイッチを召し上がれ！」
ズイッと眼前に押し付けられたのはドデカいサンドイッチ。厚切りベーコン、少量の玉ねぎ、厚切りベーコン、チーズ、厚切りベーコンの順でサンドされている。高カロリーお化けだ。朝からはキツい。
色んな意味で吐き気を覚えるイギリス。
「……ッ、」
「あらやだダーリンたら！嬉しくて感極まっちゃっあの？キャー可愛いんだからッ！！」
「〜ッShut Up!!fuckin'○○！！！！」
ピョンピョン跳ねると聞こえは良いが、実際はズドンズドンと跳ねるゴウリーにイギリスは放送禁止用語を力の限り叫んだ。
そんな生温さでゴウリーは黙る筈も無く、頬を染めて瞳を輝かせてさえいる。ド変態気質を刺激された様だ。
「ダーリン……ッ、ウチ…恥ずかしいっちゃ」
「……(白目)」
「あ、駄目駄目。神聖なラ○ちゃん穢さないで。お兄さんそれだけは許せないわ」
イギリスが精神的かつ視覚的な衝撃に白目を剥いたところで、オタク国家フランスが不快感を顕にゴウリーを指摘する。
某鬼っ娘代表ラ○ちゃんのモノマネをゴウリーがした事によってフランスの遺憾を買ってしまったのだ。
「ダーリン聞いてちょうだい！ランチは会食があるって調べたから仕方ないけど、ディナーはアタシが腕を奮って作っちゃうから早くホテルに戻って来てね！」
「……ッ、誰かコイツを出入り禁止にしろぉおおおおおおおお！！！！」
「ああん！ダーリンったら恥ずかしがり屋さんね！」
だが、フランスが異を唱えようとゴウリーの耳には届いていない。目の前のイギリスにしか興味が無い。イギリスも目の前の危機をどうにしかしたい一心でフランスの事など気にも留めないで逃走した。
「……え？聞いて？ねぇ……、あれ？ちょっとお兄さんに気づいてくんない？」
「待ってダーリン！！」
「ぎゃぁあああ！！！こっち来んじゃねぇええ！！！！」
「…嘘でしょ……！」
そう、これが本当のアウトオブ眼中だ。フランスは身を以て体感した。
そんなフランスを他所に日本は段々とカオスになって来ていると嫌な予感に襲われていた。
ゴウリーの暴走から発狂したイギリスがまたあの魔法のステッキでハプニングを起こし、冷ややかに睨み合っているアメリカとロシアが乱闘を始め、事態を終息させようとドイツが奮闘するもストレスからの頭痛と胃痛にダウンしそうだ。
更に言えば先程からギルベルトを睨むプロイセンが気になる。何故そんなにももう1人の自分に対して敵意剥き出しなのか理解出来ないし、悪い事にギルベルトもその視線を受けてドス黒いオーラを放ち始めているではないか。
頼みの常識人である菊はゴースト達と呑気にお茶を楽しんでいる。何処からお茶のセットを出したんですか！？とかツッコミたい要素満載だが、今は敢えて見なかった事にしておこう…と日本は1人思考に暮れている。
「…無事に帰して差し上げたいのに、困りましたねぇ」
はぁ。と大きく嘆息した時だった。
ーーバチバチッ……
「！？」
視界の端で菊と呑気にお茶をしていたゴーストが軽い電気を纏いながら光出した。
これには菊も驚いた様子で目を丸くし、傍にいたギルベルトは慌てて菊を自分の背に隠す。
明滅していた光が安定したのか、ピカピカしていた光は電球を思わせる光を灯していた。ゴースト達はピッタリ頬を寄せて眩しく光るが、当の本人はウキャキャと擽ったそうに目を細めている。
〔……れ、大丈……ん？？〕
暫く様子を窺っていれば、途切れ途切れに声が響いた。その声音は聞き覚えがある。
日本は顎に手を当てて、ジッとゴースト達を観察した。
〔ーーッ、ギ……ちゃん……える？？〕
先程よりも聞き取り易くなってきた音声は、誰かがこちら側に話し掛けているようだ。
トランシーバー越しの音声と同じだ。と菊は懐かしい記憶を手繰り寄せた。
「……まさか、通信ですか？」
摩訶不思議なゴーストの事だ。異空間を越えて来たのだから、通信機能があると言われたら納得してしまう。
日本の隣にプロイセンが立ち並ぶと「何処から通信なんか……」と疑問に眉根を寄せた。
〔ーーッ、聞こえとるー？？〕
今度は鮮明に聞き取れた。
この声に反応したのはギルベルトだ。
「！、トーニョ！！」
〔！！、えっ！？ギルちゃん！！〕
「おう！俺様だぜ！っつうかなんで…」
〔あーーーもう！！やっと正気に戻ったんかいな！！！ギルちゃん暴走しよるから親分止めるの大変やったんやで！？でも正気に戻ったんなら安心したわー！！！良かったなぁ！！〕
「……あー、何か…悪ぃな」
物凄い勢いで喋り出したのはアントーニョだった。ギルベルトは懐かしい気持ちになりながらも、随分と迷惑を掛けてしまったと素直に反省した。
〔おいコラ！どけハゲ！！〕
〔痛っ！？ちょっ、ロヴィ！酷ない！？それにまだハゲてへんで！！！〕
〔うるせえカッツォ！！そんな事よりもだ！菊は居るか！？無事か！？〕
アントーニョの声から今度はロヴィーノの声がする。ロヴィーノは菊の安否が気掛かりだったらしく、魔王であるギルベルトよりも先に菊の存在を心配した。
「あ、はい！菊は健在です！」
菊はギルベルトの背後から横に並ぶと声を発しているゴースト達を見上げる。
〔よ、良かった……！菊が無事なら安心したぜ。ゴースト達が居てくれて助かった。もう少ししたら、こっち側で受け入れ用の陣を描くからな。準備が出来たらゴースト達に伝えてくれ。もう少しの辛抱だぞ菊〕
「はい。有難う御座います」
「いや、俺様は？俺様の心配は？」
〔あ？〕
「ナンデモナイデス」
菊への過保護なまでの心配をするロヴィーノ。ギルベルトは魔王であり、魔界のカリスマ(自称)である自分の存在が空気になっている様で思わずロヴィーノに存在をアピールするが、威圧感溢れる一声で心が折れる。
ズゥンと音がしそうな程肩を落とすギルベルトに菊は苦笑しながら頭を撫でてやる。
魔王でありながらなんと情けない。と弟であるルードヴィッヒが嘆きそうな姿だが、そんなギルベルトもまた愛おしいのだと菊は微笑む。
「き、菊ーーッ！！」
「はいはい」
ギルベルトは涙に濡れながらガバッと菊に抱き着きHPを回復した。
「受け入れ用の陣？」
イチャイチャするギルベルト夫妻を無視してドイツが興味深げにロヴィーノに問えば、ロヴィーノは小さく「げっ、芋野郎と同じ声だぜ」と悪態を吐いた。
向こうのロマーノもこちら側のロマーノと同じ様な悪態にドイツは少し傷付く。
〔〜チッ。めんどくせぇな。良いか？早い話が、スタート地点を作ったならゴール地点を作るもんだろ？それと同じで、そっちがスタート地点ならこっち側がゴール地点として陣を作らないと辺鄙な世界に飛ばされちまう…要は迷子になっちまうって事だ！分かったか芋野郎コノヤロウ！〕
「う、うむ……理解した」
何故いちいち語尾に悪態を付けるんだ。
理不尽に思いながらも、わかり易いよう(？)に説明してくれたのだから彼もきっと根は面倒見の良い兄属性なのだろう。こちら側の世界に居るイタリア兄弟を思い浮かべてドイツは少しだけホッコリした。
〔なんだコレはァァァァァァ！？！？〕
〔ちぎゃああああ！？！？〕
「「！？」」
ホッコリしていたドイツの耳に悲鳴とも怒号とも取れる声が劈く。
一体何事だ？とドイツは周りを見渡したが、周りの者はドイツの反応とは少し違う様で眉を寄せて此方を訝しんでいた。
「……な、なんだ？」
周りの者の視線を一身に浴びている状況に疑問符が浮かぶ。その視線は「いきなり叫びだしたらビックリすんじゃん」と言わんばかりである。
「おいおいヴェスト、何かあったのか？」
「いや、俺じゃない」
プロイセンが子供を諭す様な眼差しでドイツの肩を叩くが、断じて自分が発した声じゃない。
「ん？じゃあ……」
プロイセンは疑問符を浮かべてドイツからゴースト達へと視線を移したが、2体とも口を大きく空けて微動だにしない。
そこでピクリと反応を示した者が居た。
「……やべ。これルッツじゃねえか」
ポツリと大きく洩らしたのは菊とイチャイチャしていたギルベルトだ。さっきまで頬をピンク色に染めていたのに今は真っ青である。
「あら、ルートさんもうお戻りになったんですねぇ」
幌に手を当ててのんびりと微笑む菊と真っ青なギルベルトのリアクションは正に正反対だ。
〔何故こんな瓦礫が……ッ、いや先ずは会食だ！あの眉毛は何処に…いや兄貴は何処だ！！！またサボってるのか！！出て来い兄貴ぃいいいい！！！〕
〔い、芋野郎コノヤロウ！！！デケェ声で威圧すんじゃねぇよカッツォ！！！〕
〔もう、親分耳痛いわぁ。ロヴィも大概声デカいねんで？〕
〔うるせえぞハゲ！！〕
〔まだハゲてへんわ！！！！！〕
〔おい！！あの馬鹿兄貴は何処に行ったんだ！！今度と言う今度は許さん！！！〕
ギャーギャーと通信機代わりのゴースト達から騒がしい声が止まない。
安易に想像出来てしまう展開にギルベルトはゆっくりと両手で顔を覆い隠し床に懐いた。
「やべぇって……」
「しっかりして下さい。きちんと説明すればルートさんも頭ごなしに怒ったりなんてしませんよ？」
聖母のように微笑む菊は眩しいが、きっと無駄であろう。記憶がほぼ飛ぶぐらいに暴走したのならば、あの魔界一と謳われた会食の会場はルードヴィッヒの絶叫から容易に想像出来てしまう。きっと会場は無惨にも瓦礫の山となっているだろう。
説教３時間コースなら優しい方だ。菊との接触を１週間禁止にされたらと思うだけで絶望から涙が出る。
我が弟ながら、如何に相手を精神的に痛め付けられるのか熟知しているのが誇らしい様で悲しい。
それから1時間が経過する頃、ギルベルトはゴースト達が宙に浮く真下で菊と並び、化身達に「一応世話になったなドイツ」とドイツにだけ礼を述べた。方方から「ドイツだけかよ！？」と不満の声が上がったが、世話になった覚え等無いのでスルーした。
ギルベルト達のその足元には複雑な模様の円陣がある。これはギルベルトが床に手を付けた瞬間に出現した術式だ。
1時間の猶予を置いたのは向こう側(ゴール地点)の陣が完成する頃合いを狙っての事。
「ザコ、ハゲ。繋いでくれ」
ギルベルトの声にゴースト達は随分と嫌そうだ。
「……てめぇらな」
「宜しくお願いしますね」
怒りに震えるギルベルトの隣に居た菊が微笑みながらゴースト達に告げれば、気合い充分とばかりに大きく頷く。何という贔屓だ。
怒りの矛先を失い虚脱感に襲われたが、ギルベルトの腕に菊がそっと寄り添ってくれたので我慢する。
まるで電球の様にゴースト達が電気を纏いながら、大きく口を開けた事で通信環境が整った様だ。
〔よう、待たせたな。こっちは完璧だぜ。シエスタの時間削ってんだから戻ったら特別手当出せよ〕
ゴースト達からロヴィーノの声が響いた。向こう側の受け入れが完成したのならば何時でも移動出来る。
「日本さん」
ふと、菊はプロイセンの隣に並ぶ日本を呼んだ。
「？、はい、どうされました？」
キョトンと首を傾げる日本に菊は微笑む。
「憂いが晴れた様で安心しました。貴方に逢えて良かったです。どうか、今の想いを大切に育んで下さいね」
「！」
日本は驚いた。昨日の不安定な感情を見抜く者がプロイセンの他に居ようとは思わなかったのだ。
もう一人の自分という繋がりで通ずるモノがあったのかもしれない。
彼女の言葉に、より一層プロイセンへの愛おしい感情が溢れる。
「はい。有難う御座います。菊さんのご多幸をお祈りいたしております」
深く一礼した日本の所作は辺りが静寂に包まれる程に美しかった。
ギルベルトは少しだけ日本をライバル視していたが、ここに来て菊と日本に通ずるモノがあってそれは別次元の信頼なのだろうと思えた。
昨夜の菊の話では、この世界に飛ばされてからもう一人の自分と言う事もあり日本の存在がとても大きく、精神安定となっていたと言う。
「菊が世話になったな。日本」
だからこそ、ギルベルトは心からの礼を日本に述べる事が出来た。
日本は一瞬目を丸くしたが、言葉の意味を理解した時には「こちらこそ」と微笑んだ。
その遣り取りを見ていたプロイセンは眉を少しだけ不快に寄せる。
「……まあ、あれだな。もう一人の自分とか言っても、俺様の方が小鳥カッコイイよな！」
「ちょ、痛っ！何ですか突然」
バシバシと日本の肩を叩くプロイセンに今度はギルベルトが眉を寄せた。
「ぁあ？俺様がカッコイイのは分かるぜ。だがな、この俺様が１番に決まってんだろぅが。２番手は黙ってろ」
フスーと鼻息を鳴らすギルベルトにプロイセンは口端を引き攣らせた。
「喧嘩売ってんのか？てめぇが２番目だろうが。俺様の方が小鳥カッコイイっつうの！！」
「いいや！俺様が1番だ！」
「俺様だっての！」
俺様だ！合戦に菊と日本はお互い顔を見合わせて頷き合った。
周りの化身達は呆れた様に佇み、ドイツは項垂れている。
未だに言い合うギルベルトとプロイセンの腕を菊と日本がそっと引いた。
「「貴方が１番カッコイイのは私だけが知っていれば良いんです」」
二人同時に同じ事を告げた。
凄いシンクロ率だとフランスが目を丸くして、これは面白いと動画を撮る。
当のギルベルトとプロイセンは周りの事等頭に無い。今彼等の脳内には目の前の愛おしい人しか居ないのだ。
「そうだな。お前だけが分かってくれてるならそれで良い」
至極真面目な顔と声音で菊を見つめて抱き締めたギルベルト。
「お前の１番が俺様なのは当たり前だっつうの」
頬を染めて唇を尖らせるプロイセン。
同じだとしてもこうも態度が違うのかとフランスは面白いとばかりに動画をネタとして共有した。
「そろそろ行くか」
一頻り菊を抱き締めて満足したギルベルトは良い笑顔で言う。
「はい。それでは皆様、大変お世話になりました」
化身達へと挨拶を述べた菊にアメリカ、ロシア、ドイツは笑みで応え、フランスは投げキッスを贈ったが、直後に原因不明の腹痛に襲われた。
日本は最後に菊とギルベルトと握手を交わし、プロイセンは菊とだけ握手しようとしたが、ギルベルトに手刀で阻まれていた。

そうして漸くギルベルトと菊は魔界へと帰って行ったのだった。

＊


「てんめぇえらぁあ！！！」
ーーガシャンッ！パリーンッ！
爽やかとは言えない魔界の朝、魔王の怒声が響き渡る。
城の従者達はこの怒声で王の目覚めを確認し、朝食の配膳やらを開始する合図としている。

怒声が響き渡った魔王夫妻の愛の巣といっていい寝室には上半身裸のギルベルト、艶めかしいネグリジェ姿の菊が居る。
この二人が寝室に居るのはごく当たり前の光景である。
「いい加減ベッド下に忍び込むのやめろ！！あと！盗撮と盗聴もな！！何回言や分かんだよ！？」
そう、ギルベルトの怒りの原因はゴースト達がまたまたベッド下に潜んでいた事だ。懲りもせずにほぼほぼ毎晩。
ギルベルトが睨み下ろす先、モゾモゾとオレンジ色のゴーストがプラカードらしき物をギルベルトに掲げて見せた。
「あ？ンだよ？…えーと【毛根も蘇る驚きのエロさ！！】って喧しいわ！！！」
ゴツンッ！！と大きな拳骨音が魔王城に響き渡り、魔界のモンスター達の１日が今日も始まる。

そう、いつもと変わらない魔界の話。

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		<dc:date>2020-04-11T12:53:07+09:00</dc:date>
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		<title>14</title>

		<description>スンスンと部屋の隅で鼻を鳴らすプロイセ…</description>
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			<![CDATA[ スンスンと部屋の隅で鼻を鳴らすプロイセンを放置して、ドイツ、ロシア、日本、イギリス、菊、ザコ、ギルベルトが輪になって話を進めて行く。

「そのゴーストが気配を辿って、異世界を越えて来たってのは…本当なのか？」
俄に信じ難いといった含みを持たせたイギリスの言葉にザコがプラカードをサッと掲げて見せる。
その文字をイギリスは読み上げた。
「えー、と…《てめぇの脳細胞は眉毛で出来てんのかクソ野郎め》……ぁあん？」
プラカードの内容があまりにも辛辣だった為、イギリスは指の間接を鳴らしながらザコを睨み上げた。
ザコはプラカードの文字をハンカチで綺麗にすると、凄まじい勢いで何事か書き込んでいく。
《我々は異世界だろうが異次元だろうが思念があれば飛び越える事が可能だ。今回の転送は急だった為、ロヴィーノの魔術の力の軌跡を追い掛けて来た。我々はロヴィーノの力の軌跡を追い掛けただけであって、この世界に辿り着けたのはロヴィーノの力が大きい。ロヴィーノが対価としてあのクソ変態を使った理由は簡単。この世界にあのクソ変態との繋がりが強い者が居たから。飛ばされているクソ変態に追いついた我々は胴体が時空の気圧にバラバラにならないようにバリアを張っていたのだ！》
ドヤ顔でプラカードを掲げるザコに菊が「本当にお利口さんですね」とツルツルの頭を撫でてやれば途端にザコの顔がデレデレと垂れた。
遠くで「なんかアンタに変態とか評されると腹立つんですけど！！」と秘書Ａの抗議の声が上がるが流れる様に全員スルーだ。
「こっちからあっちにもどるには、おれさまのまりょくがもどればぞうさもねぇぜ！」
菊の足元で胸を貼る幼子に化身達は眉を下げる。
「その……言い難いのだが、お前の魔力とやらで向こうの世界に戻る事が本当に可能なのか？」
こんなに小さな子供にそんな大層な事が可能なのかとドイツは訝しむ。
ギルベルトはムスッと唇を尖らせて腕を組むと「できる！」と声を張り上げた。
「だっておれさまは【まおう】だからな！できねぇことなんかあるわけねぇだろ！いまはかりのすがたなんだぜ！」
「「「…………は？」」」
フンと得意げに鼻を鳴らした子供に化身達は目を丸くした。子供の言っている言葉が中々理解出来ない。
フンスと鼻を鳴らす幼子を見下ろし、これは幼子の可愛らしいジョークだと呆れた様に肩を竦めて見せたり、微笑ましそうに見下ろされたりしている。
そこにギルベルトの期待する尊敬の念がない事にギルベルトはイライラを隠しもせずに怒鳴った。
「なんだおまえら！いまはこんなすがただけどほんとはおとなだし、もっともっとでけぇんだぞ！！」
「！、仮の姿…なのか？」
両手両足をジタバタと振るギルベルトを見下ろして「と、言う事は……？」と今度は隣に立つ菊へと視線が注がれた。
「？」
「……え？お前ら親子じゃねぇの？夫婦とか何の冗談だよ」
イギリスは至極真面目な顔で切り捨ててくる。
イギリス同様にロシア、ドイツも同じ事を思っていた様で、やはりこれは子供の妄想だと思いながら、口元を僅かに緩めた。

そんな中、日本はジタバタと怒りを顕にする幼子と苦笑しながらも幼子を宥める菊を眺めながら酷く安堵した心地になっていた。
「…夫婦……っ」
異世界ではプロイセンと親子関係なのだろうか？という失望に気持ちが追い付かないでいたのだ。
それがまさか、夫婦だったなんて……。
どんなに願ってもプロイセンと日本は婚姻関係を結ぶ事が出来ない。異世界であり、もう1人の自分達とは言え、日本が渇望し心底望む形で営みを送る菊とギルベルトに胸が歓喜で叫び出している。

こんなに嬉しいと思う事があるなんて……。

「聞いたかよ？日本」
日本はいつの間にか背後にまでやって来ていたプロイセンを見上げた。
「……プロイセン君」
プロイセンはいつものニヨニヨした笑みでなく、穏やかに優しく微笑むと、日本にだけ聞こえる声量で囁いた。
「俺ら夫婦だってよ…。やったな」
同じ様に《夫婦》である事を心から喜んでくれていた事に日本は頬を染めて、穏やかに微笑み返した。
「で？お前の憂いは晴れたかよ？」
「！、気付いてらしたんですね……」
目の前で騒ぐメンバーの輪からそっと離れた日本とプロイセンは大きな窓辺に向かい、ネオンが煌めく夜景に視線を向ける。
「私、どうしようも無いショックを受けていたんです」
「うん…」
窓に添えた日本の手にプロイセンはそっと手を重ね、優しく握った。
「きっと向こうの世界でも私達は共にあると、勝手に期待して……、でも貴方が子供の姿で現れた時嫌な予感がして…あれ程の絆を見せ付けられて菊さんの子息だと、そう思った瞬間、私は…理不尽にも認めたくないと…。こんなの菊さんに対する侮辱ですよね」
自己嫌悪から俯くと日本の髪がサラサラと重力のまま下に流れ、その表情を隠す。
プロイセンは日本の握りこんだ手を掴み上げると、その指先に唇を押し当てた。
「！」
驚いて手を引こうとした日本に構わず、今度は頬を指先に擦り寄せた事で日本は抵抗を止める。
「……プロイセン、くん？」
プロイセンのその美しいリンゴ飴の様な瞳は熱を孕み、日本だけを映し出す。日本はその瞳に囚われた。
「なぁ…、俺たち同じ事思ってたんだな」
「……え？」
夢心地からハッとする日本にプロイセンは反対の手でその柔らかな頬を包んだ。
「俺も、自分がガキの姿だって分かった時、認めたくなかったぜ。あんな執着を菊に見せてよ…正直、親子だろうなって思った。だってよ、菊の旦那は魔王だっつってたから、あんなガキが魔王とか想像出来ねえし」
だからあんなにも否定していたのか。と日本はプロイセンの言葉を振り返る。
プロイセンの認めたくないという気持ちには、悪友達に馬鹿にされたくないという気持ちと向こうの世界での日本が別の者の妻となっている事に対する拒絶があったのだが、悪友達との遣り取りを知らない日本は後者として捉えた。
「違う世界でも、俺はお前と一緒が良い…」
「プロイセンくん…」
真摯な瞳に嘘は無い。
「日本は？」
「私もです。貴方の傍が良い」
日本は頬に添えられたままのプロイセンの掌に擦り寄るように顔を傾けて至極幸せそうに微笑んだ。

ーーーカシャシャシャ！

良い感じのプロイセンと日本を被写体にそれまで空気と化していた秘書Ａのカメラ。しかも連写。
「んふんふ！！！流石我が祖国！！凛々しく聡明なのにふと見せる一瞬の色香！！はぁああご馳走様です！！！プロイセン殿の祖国にだけ見せるその微笑みぃいいい！ギャップ萌え！！！」
誰に邪魔される事なく、思う存分推しをカメラに納めながら思った事が口から垂れ流し状態の秘書Ａ。
まだまだ唸るカメラの連射音を無視し、御花畑を展開している日本とプロイセンを他所に、化身達は小さな自称魔王様を見下ろしていた。
「君みたいな子供が魔王…ねぇ。ごっこ遊びなら他所でやってくれない？」
「しかし、菊と夫婦とは…随分と年齢差があるように思う」
「おいガキ、これは遊びじゃねえんだ。大人の大事な話だからガキンチョは大人しくしてろ。何なら俺が昨日作ったスコーンを分けてやっても良い。じ、自信作だからって誰かに食べてもらいたい訳じゃねえからな！！俺の気紛れなんだからな！！勘違いすんじゃねえぞ！！！」
口々に否定をしてくる化身達。しかもイギリスは我儘な子供を窘める大人として対応し、ゴソゴソと真っ黒な墨を取り出し、何故か盛大にツンデレを披露する始末。この墨…既視感が凄まじい。
「〜ッ、おまえらっ！くそむかつく！！」
キーッと怒りを顕にしたギルベルトを見兼ねて菊はフォローを入れる。
「あの、すいません。どうやら、力を使い過ぎて子供の姿になってしまっている様なのです。魔力が回復すれば元の大人の姿に戻りますので、魔力を回復する間場所をお借り出来ないでしょうか？」
申し訳なさそうにする菊にドイツは居住まいを正し｢無論だ。惜しみなく協力しよう｣と頷いてくれた。
「俺も何か出来る事があれば協力しよう」
「僕も今回だけ特別に譲歩してあげる」
続いてイギリス、ロシアが協力を表明すれば、菊は「有難う御座います。心強いです」と感謝を述べた。
「……」
菊の足元に居たギルベルトは化身達の余りにも違う態度の変化に頬が引き攣るのをザコがこっそりカメラに納め、腹を抱え揺れている……そうザコだけが涙を流しながら爆笑していた。

可愛らしいモノは見た目に反しドス黒いモノである。

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		<title>13</title>

		<description>
菊は膝の上に幼子となってしまった夫を…</description>
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			<![CDATA[ 
菊は膝の上に幼子となってしまった夫を乗せ、未だにあらゆる角度からカメラやボイスレコーダーを此方に向けるゴースト達を見上げる。
「……ところでギルさん、どうやって此処に？」
ギルベルトは菊からの疑問の声に目を瞬くと「ん？どうやってって…分かんねぇ」と首を傾げた。
「あら？そうなんですか？」
頬に掌を寄せて同じ首を傾げた菊にゴースト達がユラユラと近くに寄って来て何やら胸を張っている。
「ゴーストちゃん達…え？貴方達が説明を？」
菊の声にゴースト達はウンウンと嬉しそうに頭というか体を上下に揺らす。
「…いやいや、なんでいってることわかるんだよ？」
ギルベルトは若干引き攣った顔を前に菊は曖昧に「何となく…ですかね？」と苦笑して見せた。

菊とギルベルトはゴースト達がプラカードに一生懸命説明書きをしている間、ここまでのギルベルトの記憶を辿る事にした。
「きくがきえちまって、そこからおぼえてねぇんだ。なんかこえがきこえてたけど…かすみがかったかんじでよ、はっとしたときにはあのへんたいがいて、ひかりがはじけたとおもったらここにいたんだ」
「声が？……ギルさんが小さくなってしまったのは不思議な空間という事ですね。恐らくですが、何らかの原因で魔力をかなり消耗してし、魔力を備蓄する為に今の幼子の姿に一時的になっている。といった所でしょうね」
「おお…！たしかに、からだおもいし、だるいぜ」
己の小さな掌をニギニギとさせて、ギルベルトは体内にいつもある筈の魔力が少ない事に気づく。
この姿はどうも察知能力が悪いし、ちょっとした移動も出来そうにない。どうにか魔力を元の正常な状態まで溜めたい所だが、今すぐという訳にはいかない。半日はかかるだろうか？と思考を巡らせる。
「…まりょく、たりねぇよな」
ポツリと消沈気味に呟けば、菊がギルベルトの開いたままだった掌をそっと包み込んだ。
「大丈夫ですよ。私の魔力を微力ながら注がせて頂きますし、頼もしいゴーストちゃん達も居ります」
小さく笑む菊にギルベルトはその暖かく柔らかな胸へと顔を埋めた。
「…おれはおまえが、きくがそばにいたらそれでいい」
モゴモゴも小さく呟いたギルベルトに菊は頬を染めてギルベルトの小さな身体を抱き締めた。

そして、騒いでいた化身達が漸く落ち着きを見せ始めていたのと同時にゴースト達がドヤ顔でプラカードを菊達に掲げて見せる。
「ありがとうございます。ご苦労さまでしたね？」
ゴースト達に礼と労いの言葉を贈り、菊は綴られた文字を黙読していく。その傍らではギルベルトが素早く目を通していたが、段々と顔色を青ざめさせ、そして今度は真っ赤にして黙り込むと何か得体の知れない物から隠れるように菊の胸の谷間へと顔を沈めてしまった。
ギルベルトと同じ様に菊は目を丸くした後、歓喜で頬を高揚させ、ギルベルトの柔らかな銀髪に頬を擦り寄せた。

[newpage]

「……漸く落ち着いて話が出来そうだな」
ドイツは眉間の皺を指先で揉みほぐしながら溜息混じりに言った。
そんなドイツの目の前にはホテルの柔らかいラグの上で鎮座する人影がある。
「っつうか、俺様何もしてねえのに酷くね？反抗期かよ…」
腫れた両頬を晒しながら理不尽だと唇を尖らせているのはドイツの兄プロイセン。隣では日本がプロイセンの膝をベシッと叩き「今は黙らっしゃい」と窘めている。その隣ではイギリスが心地悪そうに床を見つめ、そのまた隣ではアメリカとロシアが鼻血や痣の数を言い争いながら火花を散らしている。
そしてそんなロシアの隣ではゴウリーが太い腕を組んでムッスりし、そのゴウリーの後ろに座っているのが眉を申し訳無さそうに下げている菊と菊の膝の上で菊の豊満な胸を枕にふんぞり返って座る偉そうな幼子。
そんな中更に異質なのはレトロなカメラを構え、日本と菊を写真に納めるのに忙しい秘書Ａ。菊にカメラとボイスレコーダーを傾けるゴースト達の異常な姿。
何とも字面で表しただけでも疲れるメンバー。
何故床に鎮座しているのかと言うと、あの後ドイツが声を響かせても席に着こうとしなかった為、ドイツの物理的な実力行使が成された背景がある。
ドイツは頭痛薬を水で流し込みながら頭痛を誤魔化し、問題解決の糸口を探った。
「あー、それで本題だが、菊達を向こうの世界に戻すにはどうするかだ」
「えー！戻ってしまわれるのですか！？」
ドイツの顬に筋が走る。本題に横槍を入れやがって…！と声を発した秘書Ａを鋭く睨んだ。
ドイツの睨みなどいつもなら青ざめてしまうだろうに、今は全く効果がない。
秘書Ａの生き甲斐と言っても過言ではない日本と瓜二つの菊。しかも女体だ。一目で二倍美味しい。こんな楽園の様な光景を崩壊させるなんて考えもしなかったのだ。
「祖国と菊さんのウハウハパラダイスなんですよ？え？誰のパラダイスかって？私のですよ！このパラダイスを守る為なら魔王にだって抗ってみせます！！」
フンッと鼻息を鳴らす秘書Ａに賛同する者なんて居ない。賛同するどころかドン引きだ。
「……あんた、つくづく思うけど筋後寝入りのド変態よね」
「え？…それって褒めてます？」
ゴウリーの呆れた様な台詞に何故か嬉々とした秘書Ａ。最早、何も言うまい。
「…話を元に戻す。意見がある場合のみ挙手して稔のある発言をする様に。脱線しそうな話題をした者は問答無用で、退席だ」
言葉に圧をかけるドイツに意見する者はもう居ないだろうと思われていたが、スッと長い腕を伸ばして発言の許可を待つ者が居た。
「…ロシアか。発言内容を簡潔に述べてくれ」
「うん。さっきから黙ってるみたいだけど、イギリス君の見解はどうなの？」
ロシアの発言に皆がハッとした様にイギリスに意識を向けた。
騒ぎの中心に居るような常連が今の今まで静観しているなんて、明日は季節外れの雪が降るかもしれない。
一斉に注目を浴びたイギリスは一瞬虚をつかれた様に目を丸くしたが、小さく咳払いをして身形を整えると太い眉を顰めた。
「べ、別に黙ってた訳じゃない。ちゃんと考えていたんだ」
「What's !?君が？ちゃんと考えてただって？面白いジョークじゃないか！」
アメリカの意外だと言うような態度に若干イラッとしながらもイギリスは鼻を鳴らして腕を組んだ。
「……、ジョークじゃない。菊達が向こうに帰る為の方法を考えていただけだ」
他に何があるというのだ？と言った風情でイギリスが片眉を上げればアメリカは面白く無さそうに膝の上で頬杖をついた。
「ふーん。それで？方法とやらはあったのかい？」
「何言ってるのアメリカ君。イギリス君が無駄に考える事なんて沢山あるけど、今の状況は元々イギリス君と向こうのイギリス君が元凶なんだから尻拭いぐらいは自分でやらないと面目も立たないんだよ？尻拭いも出来ないなんて嘗ての大英帝国の名折れじゃないか」
「そうだった！イギリスが元凶じゃないか！不味いスコーンばっかり俺に食わせないで何か役に立つ事でもやってくれなきゃね！」
「…ぐっ」
なんでこんな時ばっかり春待ち組は仲良くなるんだ！？とイギリスは歯軋りしながら目の前で嫌な笑みを浮かべるロシアとアメリカを睨んだ。
「…チッ。まあ良い。1つ気になる事がある。俺は数ヶ月前の(あくまで)事故で日本の秘書とゴリ…あのSPを異世界に飛ばした」
あくまで事故だと強調するイギリスにアメリカの眼差しが呆れたように半眼になるが、アメリカよりも過敏に反応した者がいる。
「んもう！！やだダーリン！アタシはゴリラでもSPでも無くて貴方だけのゴウリーちゃんよ！！あっ！ダーリンがどうしてもって言うならダーリンだけのSPになっちゃうけど！アタシの身も心も全部ダーリンだけの物なんだからね！」
「ーーッ！！」
バチコーンとウィンクを飛ばすゴウリーを何とかスルーしてイギリスは鳥肌のたつ己の腕を摩る。
「君、今から弁明でもするつもりかい？」
そこで漸く口を挟めたアメリカの言葉にイギリスは「いや、」と真面目に否定した。
「俺がやったのは転送だ。だが、彼奴らがここに来たのは転送とは少し違う…妙な力を感じた。恐らく、召喚魔法に分類される物だろうな」
その見解に今まで拗ねていたプロイセンが目を丸くする。
「あ？転送魔法と召喚魔法…？って事はだ、召喚には対価があったって事だよな？」
「ああ。転送に対価は必要ない。一方的な物だからな。だが、召喚魔法は違う。いやこの場合喚起魔術…と言うべきか。何らかの方法を用いて対象の位置を特定し、それ相応の対価を元に魔術が成立するんだ」
「ま、魔術……だと？」
イギリスの説明にドイツは頭の整理が追いつかないで疑問符ばかりが頭上を飛び交う。
魔術の類には精通していない日本も訳が分からないと首を傾げた。そんな日本とドイツにイギリスは頭を搔くと「つまりだな…」と噛み砕いた説明をする。
「……上手く説明するのが難しいが、種々の霊的存在（精霊）を呼び出す技法が今や世界中の書籍で知られていると思うが、それらの諸技法を召喚、召喚術、召喚魔術などと呼ぶことがあるんだ。場合によっては悪魔召喚ともいう。近世のグリモワール『ゴエティア』に基づく魔術作業は、典型的な喚起魔術であるとされ、魔術師は地に描いた魔法円の中に身を置き、円外に配置された魔法三角の中にデーモンを呼び出す。呼び出されたモノはユダヤ・キリスト教の神の威光を借りた魔術師の命令に服する…。な、筈なんだがな…」
渋い顔をしたイギリスはキョトンと首を傾げる菊と何故かニヨニヨと態度のデカい子供を見遣る。
どう見ても命令に服するなんて雰囲気は塵ほども感じない。むしろあの子供は見下した態度が板についている。
どう見ても服する気なんて毛頭ないだろう。
「……菊達が単なる転送魔法だったとして、そこのガキがココに来たのは喚起魔法じゃないかと思っていたんだが、一体どうなってるんだ？」
「もう！君の説明は解りにくいんだよ！」
アメリカが頭を抑え、天井に向かい吠える。
「〜ッ俺だって分からねえんだよ！fuc〇！！」
イライラを隠しもせずに今度はイギリスが吠えた。
「ま、待て、落ち着いて整理しよう」
また脱線していきそうな状況にドイツが待ったをかけた事で、イギリスは配られたペットボトルの炭酸水を飲んだ。
「……はぁ。端的に言って俺がやった転送魔法ってのは対価が要らない代わりに適当な世界線を通って未知の世界に飛ばせられるんだ。そこに術者の強い意志が無い。要するに適当だ」
この場にフランスが居たら「そんな適当な世界にお兄さんを飛ばそうとしてた訳！？何この子怖い！！」と騒いでいただろうに、今は居なくて良かったと日本は思った。
「で、召喚魔法ってのは、術者が対価を元に呼び寄せる……目の前に召喚する魔法だ。召喚魔法は多岐に渡る逸話があるが、対価を必要とするのは共通している。だが、こちら側が召喚してもいないのに召喚されたというのが謎なんだ。となると、召喚魔法に何か特殊な詠唱か陣が加わっている特異な召喚魔法だろう。俺の使う単なる転送魔法じゃ帰してやるのが難しい」
「……よく分からないが、要約するとイギリスの知り得ない魔法か何かがあって、あの子供と日本の秘書達が飛ばされた…と？」
ドイツは眉間の皺を深く刻みながら絞り出すように考察を端的に纏めた。
「癪ではあるがな。相当な術者が向こうに存在している様だ」
むぅ……と唸るイギリスに今度はロシアが何でもない事の様に口を開いた。
「ねぇ、イギリス君は随分自分の事を過大評価するんだね？」
「ッ！？ンだとコラ！！」
「え？なぁに？」
ロシアに海賊時代を彷彿とさせる口調と表情で食ってかかるイギリスだが、ロシアの絶対零度の笑みにスンと黙り込んだ。
「だって、君は魔法に精通しているんだろうけど単なる国の化身で魔法なんて信じない人の方が多い世界に住んでる。向こうは本場の魔界なんでしょ？だったら国の化身如きが魔界の専売特許の様な魔術になんて太刀打ち出来る訳ないじゃない？知らない魔術や方法があっても不思議じゃないよね」
「……」
ド正論である。
ロシアに反論する事も出来ないイギリスを横にアメリカが「お腹空いたんだゾ」とKY発言で重い空気を取り払った。
「……仕方ない。アメリカは何か食べに行ってくると良い。寧ろ、この件に関係していない者や明日の予定が早い者は引き上げてくれて構わない。どうなったかの結果は明日の午後からの会議で話すとしよう」
「それもそうだな！よし！この件で関係のある奴だけ残れ」
ドイツの提案にプロイセンが賛同し、関係のある奴は…とドイツに目配せすればドイツは承知したとばかりに頷いた。
「先ず、開催国である俺が責任と権限がある者として残ろう。後は、魔法の類に詳しいイギリスとロシア、兄貴、それに菊が安心するだろうから日本、すまないが力を貸して欲しい。当事者である菊とそこの子供、あとは……アレは…？ゴースト…？……と、まあ以上名前の呼ばれなかった者は各々好きにしてくれ」
ドイツが厳格な態度で宣言すればズザッと目の前に影が現れた。
「なっ！？」
唐突に目の前になんて、今ハマっている日本文化の1つ、あのカッコイイ忍者だろうか？心躍るドイツ。ワクワクする気持ちを抑えきれずにドイツの頬に紅が刺している。
「ちょっとお待ち下さい！！！」
「異議ありよドイツちゃん！！！」
「……」
残念。忍者じゃない。変態だった。
ドイツの心底ガッカリした気持ちなんて無視して自他共に認める変態は捲し立ててくる。
「なんで！！なんで私は当事者に数えられていなあのですか！？こんなにも祖国に尽くし、あっちの世界にも行って菊様に尽くしてたんですよ！？関係ない事無いじゃないですか！！！」
「酷いわドイツちゃん！！アタシはダーリンの傍にいたいの！！片時も離れたくないわ！！何故だか分かる！？向こうの世界のダーリンとは愛を深める事が出来たけど、こっちのダーリンとはまだ何も進展してないの！！アタシはね！向こうのダーリンと結婚の約束までしてたフィアンセなのよ！？結婚式目前にコッチに戻された悲劇のヒロインなの！！でもね！それはこっちのダーリンが呼び寄せたってんならアタシはこっちのダーリンと結ばれる運命にあったって事でしょ！？今が大事なの！1分1秒とも離れたくないの！！この乙女心が分かるでしょドイツちゃん！！！」
「なんて烏滸がましいんですか貴方！！私だって祖国に逢いたくて逢いたくて震えるぐらい待ち焦がれてたんですよ！？あんなに一緒だったのに！！片時も離れたくないのは私の方です！！」
「はぁあ！？アンタ菊ちゃんにデロデロのメロメロだったじゃない！後を追い掛け回して盗撮してたの知ってんのよ！！この浮ついたド変態が！！あと所々フレーズパクってんじゃないわよ！！懐かしいじゃない！！！」
「黙って聞いてれば……ッ！浮ついたド変態ですって！？ド変態とか褒めてんですか！？有難う御座います！！」
「〜ッ喧しいわ！！失せろ！！！」
「ひぃ！！」
ガッと吠えたドイツに言い争っていた秘書Ａとゴウリーの勢いが削がれてしまう。いつも以上に憤怒の形相を浮かべて吠えるドイツが怖い。

そんな3人を前にイギリスは固まっていたが、ゴウリーの言葉の反復を何度か繰り返した。

「…婚約？結婚式目前？？？向こうの俺がか？あのゴリラと？…何のジョークだ。はは…いやいや……。いやいやいやいやいやいや！！！ねえよ！！！！」
手にしていたペットボトルがグシャァアとイギリスの握力によって無残な姿に変わる。
「うふふ。結婚式だって！僕も見てみたかったなぁ。イギリス君惜しかったね」
「向こうのお前すげぇな…ッ！おもしれぇ！！」
口々にイギリスを嘲るロシアとプロイセンにイギリスがギロッと眼光鋭く睨みつけたところで、今度はポソりと「イ、イギリスさん、十人十色。趣向は人それぞれと申しますし…」と日本に変に気遣われてしまった。
「…ッ」
ショックから言葉を失ったイギリス。
「おい。しんぱいしなくてもじぶんでかえれるぜ」
そこへ聞き慣れぬ声のトーンが少しばかり威圧感を持って空気を震わせた。
それぞれが声の主へと視線を向ければ、偉そうに菊の柔らかな膝の上でふんぞり返る子供の姿。
「自分で？そりゃどういう意味だ？」
プロイセンが訝しむように問えば、子供はプロイセンに良く似た顔でニヨリと笑み、ピョンと菊の膝から床へと飛び降りる。
「ことばどおりだ。な、きく」
「はい。大変お騒がせして誠に恐縮ではございますが、此方に居りますゴースト達が転送魔法を得意としておりまして」
菊の説明に自前のカメラの映像を確認していた黄色とオレンジ色のゴーストが此方を振り返った。
日本を視界に入れて頬を染めたオレンジ色のゴーストとプロイセンを視界に入れてニヤリとした黄色のゴーストはスルーしておく。きっと碌でもない事を考えているに違い無い。
ゴースト達に構わず菊は化身達に向き直ると「実は……」と話を続ける。
「どうやら彼等の話によりますと、秘書さんとギルさんをココに召喚したのは向こうの知り合いの術者でして、ゴースト達は気配を辿って秘書さん達を追い掛け、一緒にここまで来たと言う事です」
菊の説明にゴースト達はドヤ顔でふんぞり返った。
「…は？いやいや、ちょっと待て。気配を辿って追い掛けて来た？この丸いだけの…《バシン！》…ッンゴ！？」
イギリスは引き攣る頬をそのままにゴースト達を指差して聞き返したが、オレンジ色のゴーストにプラカードで頭をぶん殴られた。
「わぁ良い音〜」
「ンゴ！って何だよ！ケセセセセセ！腹痛てぇ！！」
ロシアとプロイセンは叩かれた衝撃でフラつくイギリスの有様を笑う。
ハゲの持つプラカードには《指刺してんじゃねぇよ。へし折るぞ》とポップ調の可愛らしい文字で恐ろしい文言が綴られている。
このゴースト、口より先に手が出る典型的なタイプだ。
「〜ッ痛えな！！何しやがんだfuc〇you！！！」
涙目のイギリスがオレンジ色のゴーストに中指を立てながら怒鳴るのと同時に背後からドドドドと轟音が聞こえてきた。
振り返ろうとするイギリスの視界の端でファイティングポーズをとるオレンジ色のゴーストと数メートル距離をとるロシア、プロイセン、日本。
スドドドドドという地響きを体感しながらイギリスは振り返った事を後悔した。
「おんどりゃァァァァ！！！！」
「ぎぁああああああああああああ！！！！」
此方に筋肉ダルマが鬼の形相で迫って来ていたのだ。イギリスは恐怖から絶叫しながら人生で中々感じる事の無い恐怖を覚えた。
そんな頭の片隅では『なんで此奴らが距離とったのかと思ったらコレだったのか！！ってか何で日本まで無表情で距離とってんだよ！？普通相棒だったら助けるだろうが！！巫山戯んなバカァァァ！！』と盛大に嘆いている。
咄嗟にその場で屈みこんだイギリスの頭上をズオッと飛び越えて行く筋肉ダルマ…もとい怒り狂うゴウリーはオレンジ色のゴースト…もといハゲに向かって殴りかかって行く。
だが、ハゲも負けてはいない。プラカードを黄色のゴースト…もといザコに預けると目を吊り上げて威嚇した。
「ダーリンに何しとんじゃい！！お前フルーツポンチに混ぜたろかボケェエエ工！！！」
｢フシューーーーッ！！！！｣
ゴウリーのオネェ言葉は也を潜め、本来の野太い声音で拳を振りかぶったそのデカい拳をスゥっと受け流すハゲ。
ゴウリーの巨体が僅かにぐらついた隙を狙い、ハゲはゴウリーの懐に飛び込むと、ゴウリーの鼻の穴目掛けて両手で指サックならぬ腕サックをキメた。
「ンゴォオオオ！？！？」
可愛らしい見た目を裏切るハゲのエグい攻撃に周りの者はドン引きである。
だが、ゴウリーも負けていない。浮いていた片足を振り上げてハゲの脳天目掛けてカカト落としを繰り出した。
なんて柔軟性なんだろうと思わずゴウリーの身体能力に感嘆してしまう。
しかしながらハゲはゴースト。自分を透過する事が可能である。
ゴウリーの踵は強かに床にヒット。タイル張りの床にヒビが入った。
「〜ッ乙女の美顔に何さらしとんじゃコラ！！なめんじゃねぇぞクソがぁああ！！！」
「フシャーーーーッ【上等だ！かかってこいゲテモノが】！！！！！」
赤いドレスに見合わず、身体中の血管を浮き上がらせて憤怒するゴリ…、ゴウリーと猫又妖怪を思わせる形相で威嚇したハゲ。
両者はそのままお互いの拳を打ち合わせると、衝撃音を上げながらドラゴン〇ールの様な戦闘へと発展していった。
｢と、言う経緯がございました｣
カオスな状態を見なかった事にして、良い笑顔で締めくくろうとする菊に思わずその場にいた全員がツッコミを入れた。
｢何がだ！？勝手に終わらせようとか無理あり過ぎんだろ！｣
プロイセンが声を大にして菊を指差す。
「しかし、気配を辿ってくるなんて…そんな事可能なんでしょうか？」
まるで先程の事が無かったかのように、日本も話を強引に軌道修正してくる。それにプロイセンが物言いたげな顔で日本を見つめるも「プロイセン君も真面目に考えて下さい」と言わる始末。
「え？何だコレ。俺様が可笑しいの？」
ポツリと呟くプロイセン。常識人を探して頼みの弟に半ば呆然とした視線を送る。
「兄貴、邪魔するなら帰ってもらって構わない。人員は足りている」
その頼みの弟から溜息混じりに辛辣な言葉を賜わってしまった彼は膝から崩れ落ちた。
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		<title>12</title>

		<description>
目の前で繰り広げられる騒動にギルベル…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 
目の前で繰り広げられる騒動にギルベルトは菊の膝上で当事者なのに傍観を決め込んでいる。
「きく、ニンゲンっておもしれぇな」
ギルベルトの旋毛を見下ろしながら菊は「他人事のように……」と嘆息しながら「人間では無いそうですよ」と告げた。
「ん？ニンゲンじゃねぇって…？」
くるりとした赤い瞳が菊を見上げてくる。とても可愛らしいアングルに菊はギュッと抱き締めたくなる衝動に耐えながら「ほら、言っていたでしょう？」と話し出す。
「ゴウリーさんと秘書さんが私達に瓜二つの祖国様達が存在していて、その方々は人間ではなく国家の化身だと」
菊の台詞にギルベルトは漸く思い出した。弟のルードヴィッヒが取り乱し疲弊までしたあの日、確かに国の化身が存在すると言っていた。
「ってことは、もうひとりのきくってあいつか？」
白く小さな人差し指がプロイセンと話し込んでいる日本へと向けられると、菊は「えぇ、そうですよ」と頷く。
「……おとこ、だよな？あれ」
「可愛らしい御方ですよね。私の想像よりもずっと」
もう一人の自分とは言え他人…ましてや男を賛辞する妻にギルベルトは面白くないと黙り込んだ。
菊はギルベルトの小さな頭を優しく撫でながら、視線の先で言葉を交わす日本の機微に気を揉む。
「……」
「きく、きになるのか？」
ギルベルトは少しばかり嫉妬を含ませた声音で頭上の菊を見上げた。眉を下げた菊の憂い顔は他の男に向けられている感情だと思うと、腹の底でドロドロした感情がとぐろを巻く。
「えぇ。言葉に表すには難しいのですが、何だか日本さんが辛そうに見えて…」
「つらい？おれにはそうみえないぞ？」
「何故でしょうね？もう1人の私…だからでしょうか？日本さんの嫉妬…悲しみ……総じて切なくなる様な負の感情が伝わってくるんです」
菊の説明がギルベルトが予想していた回答ではなかった事に安堵し、菊の細い指先を小さな掌でギュッと握り締めた。
「ギルさん？」
「ん。きっとだいじょうぶだ。だって、きくにはおれさまがいるように、アイツのそばにはもうひとりのおれさまがいるからな。だろ？」
「！」
力強い言葉に菊は胸が熱くなる。菊の夫であるこの人はいつだって菊を安心させてくれるのだ。
「……貴方が居てくれて良かった」
「！……ん」
耳まで赤く染めて照れるギルベルトの小さな身体を菊は優しく包み込んだ。
きっと日本は大丈夫だ。だって、菊にギルベルトが居るように、彼にはプロイセンが居る。きっとどんな困難も想いも全部乗り越えてしまえるだろう。
『日本さん、大丈夫ですよ』
菊はそっと日本へのエールを胸中で贈った。

＊

「だぁかぁらぁああ！こんな角っこで人の頭ガンガン殴るのやめません！？普通に死にますから！私はまだ生きる！《バシィッ 》ぁ痛ァァァ！！！！」
床に頭から突っ伏す秘書Ａに黄色のゴーストであるザコが悠々と煙草を吹かす仕草で見下している。
また何やら揉めていたのだろう。
「ハンッ！！このアタシに喧嘩売る奴なんておチビちゃんぐらいのもんよ！ダーリンの前だからって汐らしくしてるゴウリーちゃんじゃないわぁあああ！！」
また向こうでは太ましい剛腕を組んで唾を飛ばしながら吠えるゴウリーと短い腕を勇ましく組んだオレンジ色のゴーストであるハゲが睨みあっていた。
こっちもこっちで大した事でも無いのにまたまた揉めているのだろう。
そのまた向こうではアメリカとロシアが冷気を漂わせながらピストルと水道管を交えて笑っている。笑っている…では語弊があるかもしれない。目は笑っていないのだ。だって遠目からでも分かる程、凍てついている目付きをしていた。
春待ち組はいつもの事だから放置を決め込む。
スペインとフランスは何やら場に飽きたらしく、ロマーノとフェリシアーノを飲みと称した女漁りに誘っている…いや、待てコラ。人が胃痛頭痛に悩まされているのに呑気な事じゃないか。巫山戯るな。
「貴様ら…ッ」
「よし！ヴェスト！問題解決だぜ！明日の余興に俺様がギター1本で弾き語りしてやるからよ！しっとり歌いあげる俺様の美声に酔いな！決めポーズも考えとくぜ！！」
「……ッ兄貴、何の話だ」
怒りの咆哮を発しようとしたドイツの肩を兄であるプロイセンがドヤ顔で止めた。
……止めた？……止めたのだろうか？これは自分が如何に明日の打ち上げの余興で目立つかどうかしか考えていないのではないか？
ドイツの胸に一抹の不安が過ぎる。
「何の話ってお前、明日の余興で何するか決めて無かったから今悩んでんだろ？胃痛と頭痛が酷いです！って顔しやがってよ。だから小鳥カッコイイお兄様であるこの俺様が明日の余興で弾き語りしてやるって案だよ。あ、そうか！インド仕込みのダンスの方が盛り上がるか！？呆気なく問題解決じゃねえか！流石俺様！！今から特訓だぜー！！」
そうじゃない！
ドイツは悲観に叫びたくなった。こんなにも頭を悩ませているのは明日の余興なんかじゃない。こんな状況で暢気に明日の余興に悩むなんてする訳が無い。あの喧しいメンバーが悩みの種なのだ。
兄弟なのに何故こうも意思疎通が難しいのだろうか。兄弟とは一体何だ？寧ろその喧しいメンバーに己の兄さえも含まれている。なんてカオスだろう。
誰か助けてくれ……！！
「……ッ神よ」
「お？何だ？」
肩を落とすドイツに一人楽ししく盛り上がっていたプロイセンは訳が分からないと首を傾げた。
「どうしたヴェスト？トイレか？我慢すんな。出すもん出してスッキリして来いよ！な？此処はお兄様がちゃんと監視しといてやるからな！」
「！！」
ケセセセ！とドイツの肩をバシバシ叩き、高笑いするプロイセンにドイツは言葉を失った。同時に頭の中でブツリと切れる音がした。
「〜ッこんの…！！馬鹿兄貴がぁあああ！！！」
「ンブフッ！！？？」
ドイツの分厚い掌が高笑いをしていたプロイセンの両頬を押し潰す勢いで圧を加えた。
傍から見れば何と微笑ましい両頬グリグリかと思うだろうが、ドイツをなめてはいけない。ゴリラの如きパワーを以て押し潰しているのだ。痛いに決まってる。リンゴなんて木端微塵だろう。
「ンガッ！ブフォ！？ンブブッ！！！！」
「フン！何を言っとるのか皆目見当もつかんわ！！」
グリグリ押し潰すドイツの手首を引き離そうと踏ん張るプロイセンだが、悲しい事に腕力では弟に適わない。しかもプロイセンの必死の訴えはドイツのドSな台詞と共に一蹴されて終わる。
遠い昔、金髪碧眼の幼い天使だったドイツはもう居ない。脳内では幼いドイツが頬を赤くして照れながらも「兄さん、この本を読んでくれないか？」とプロイセンを窺っていた天使を思い出す。
カムバック天使、兄ちゃん悲しい…。とプロイセンは物理的な痛みと感傷的な痛みに涙を浮かべた。
そんなゲルマン兄弟を他所にアジア組が喚く中国を引き摺り予定されていた会食へと向かった為、ホール内はかなり静かになり、日本は人知れず安堵した。一部(ゲルマン兄弟)を除き。
さて、と日本は気を取り直し問題解決の為に未だにプロイセンの顔を潰そうとしているドイツの元に歩み寄った。
「ドイツさん、お取り込み中恐れ入りますがそろそろ本題に入りませんと時間がありません」
日本の言葉にドイツはハッとすると、咳払いをしながらプロイセンを捨て置き、背筋を伸ばす。
「そ、そうだな。すまない、取り乱した」
頬を可愛らしく染めたドイツが微笑ましい。日本は思わず緩みそうになった顔を引き締めてコクリと頷いた。日本の背後でスンスン鼻を鳴らすプロイセンに構うとまた話が脱線しそうなので心を鬼にして恋人は放置する。
落ち着いたと思ったらあちこちで火花が散る現状なのだ。不憫とは思うが仕方ない。

「そろそろ話を元に戻す！皆静粛に！！！」

ドイツの勇ましい声がホール内に響き渡り、漸く事が進みそうな予感に日本は少しばかり安堵した。 ]]>
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		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2020-04-11T12:50:49+09:00</dc:date>
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		<title>11</title>

		<description>バチンッ！と大きな破裂音と目に痛い程の…</description>
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			<![CDATA[ バチンッ！と大きな破裂音と目に痛い程の閃光にテロか何か分からず化身達に緊張が走る。
アメリカは腰元から銃を取り出し、ロシアは水道管を握り締めて険しい表情で煙が昇る一点を注視した。
「「「……」」」
イタリアとロマーノはドイツの背中に隠れて青ざめ、日本は菊やドイツ達を護るように前に出る。
イギリスは漸く鎮める事に成功したゴウリーを他所に懐から銃を取り出し、中国は台湾や香港マカオ、ベトナム、タイに向けて「お前達は下がるアル！」と過保護を発動し、煙の中を訝しむ様に睨む。
プロイセン、フランス、スペインもさっきまでの雑談に興じる様な雰囲気とは違い、張り詰めた雰囲気でそれぞれ銃を手に構えた。
「菊、お前は俺たち化身とは身体の創りが違う。良いか？合図があるまで動くな」
怯えるイタリアとロマーノを背中に貼り付けたまま、ドイツは視線を煙の元に向けて菊に小さく告げた。
「は、はい……」
何が起こっているのか…勿論菊にはサッパリ分からない。悪魔である為、ある程度頑丈には創られているのだが、ドイツの指示に大人しく頷いておいた。
皆が煙が晴れるのを待つ。
化身達は握り締めた武器に力を込める。
「げっほ！げっほげっほげっほげっほげっほ！！うぉえっ！！！……ッ咳き込み過ぎて喉が痛い！！！」
「「「……は？」」」
予想を大きく裏切るかのように何とも緊張感の欠片も無い台詞が木霊する。
「……この声、」
日本は聞き覚えのある声に警戒していた体勢から棒立ちになり、思わずポツリと呟いた。
ーーバキッ！
「あ痛っ！！痛いじゃないですか！！咳き込んで嘔吐く人間に対して暴力を振るうなんて最低です！この悪魔！鬼！え？…【黙れ。邪魔だ】じゃ、邪魔！？言うに事欠いて邪魔ってなんですか！？先ずは心を込めた労りと謝罪でしょうが！！ほんと酷くないで《ガッ》ぐふッ！！！」
「……」
「～ッ痛いつってんでしょ！あ！？また角の所じゃないですか！？角の所はやめなさいって言ってんでしょうが！！ほんとにココにこうめり込んで！そう！その角度からの！そこが1番硬くて痛いんですよ！！…え？何ですか？【お前そのまま三歩進め】……なんで？…え？理由は何ですか？ハン、どうせ落とし穴とかしてる魂胆でしょ？5回も同じ手には引っかかりませんよ、残念でしたね……って何ですかその態度！！舌打ちとか良くない！！！」
この不憫極まりない台詞。
日本は嬉しいような懐かしいような、それでいて可哀想な…そんな言い表しようのない感情になった。
日本同様に他の化身達も警戒を解き椅子に座り直した。
「おい、日本。…一応、良かったな」
「プロイセン君たら…えぇ。安心しました」
プロイセンは銃を腰ベルトに差し込みながら日本の隣に並ぶ。
これまでの日本の心情を思えば、さぞこの声を聞いて安堵した事だろうとプロイセンを含めた化身達が思った。
「……でもプロイセン君、」
「……ッい、今！！【日本】って聞こえませんでしたか！？！？嗚呼…祖国！！私の祖国が近くに居るんですか！？祖国ぅううう私は此処におりま《バキッ》ぁいたぁああ！？」
「……」
なんという事だろう。小声で会話をしていた日本とプロイセンの声が3メートル先まで聞こえていたとは…。地獄耳(日本限定)とはこの事だ。
日本はプロイセンに疑問を投げかけようとした所で黙り込んだ。
「何だかシラケちゃったんだゾ…」
「少し損した気分になるんだけど…これって日本君に賠償請求出来るかな？だって日本君の所の子でしょ？」
「…君ってそういう所あるよね？」
「？、そういう所ってどういう所かな？モスクワかな？あ、北方領土とか言わないでね？」
大きな嘆息を零すアメリカに珍しくロシアが同調する。だが、内容が恐ろしい。アメリカの皮肉も通じないで首を傾げている。
しかしイギリスはそんな2人とは違い、深く考え込んでいた。
秘書Ａはさっきから誰と会話をしているんだという点。ゴウリーは既に此方に帰って来ている為、ゴウリーではない。そうなると…煙の向こうに居るのは異形の物かもしれない。
……ならば警戒を解くには早い。
「ちょっと！さっきから何で邪魔するんですか！？私の祖国なんですよ！え？【囲まれてるのに喚くな】ですって？知った事か！！私には関係ありませんよ！！行かせて下さいぃいいい！！祖国ーッ！そこーーーく！！！《バチンッ》あ痛！！！」
「……」
この会話の内容からそこまで心配する様な物では無いのかもしれないが…、状況が分からないだけに判断に困る。イギリスは取り敢えず懐に手を入れて瞬時に銃を取り出せる様にしておいた。そして隣でギャーギャー煩いアメリカとロシアを黙らせる。
「……おぃ、騒ぐな」
イギリスの険しい声音にアメリカとロシアは目を丸くして黙り込み、フランスとスペインはイギリス同様に静かに煙の向こうを睨んでいた。
「ヴェ？何なに？？どうなったのドイツ〜、兄ちゃん……」
「うるせぇバカ弟！こういう時は芋野郎を肉盾にして静かにしてろ！危なくなったら芋野郎を押し飛ばして逃げんぞコノヤロー！」
「ひ、酷いや兄ちゃん！ごめんねドイツー！！でもでも！もしもの時は俺を助けてね！！」
「チギッ！？このバカ弟が！！自分だけ助かろうとすんじゃねぇぞコノヤロー！！おい！芋野郎！先に俺を助けろよ！！！」
「ヴェ！兄ちゃん酷いよー！！！！」
「うっせえバーカバーカ！！！」
「あ！バカって言った！バカって言った方がバカなんだ！！日本が言ってたもんねー！！」
「なんだと！？このクソ弟が生意気なんだよ！カッツォ！！」
「ヴェ！痛い痛い痛い痛い！！！ドイツ助けてー！！！」
「……頼むから背中に引っ付いたまま叫ばないでくれ」
ドイツの背中にイタリアがしっかり張り付き、そのイタリアにロマーノが張り付いている為、ドイツの背中は大変温かい。そして至近距離で大声を出されると耳に痛いのだ。喧嘩していても離れようとしない兄弟にドイツは大きな溜息を吐いた。
騒がしいドイツ達の目の前では日本とプロイセンが雰囲気を和らげながらも、イギリスやフランス、スペインとどこか同じ様に煙立つ場所から視線を逸らさないでいる。
「っつうかよ、あの変態は誰と揉めてんだ？」
「ええ。先程から随分賑やかですし……、得体の知れぬ者が居るのかもしれません」
「お待ち下さい」
小さく囁き合う2人の元にドイツ達の後方から抜け出してきた菊がやって来た。
「大丈夫ですよ。害のある者では御座いませんのでご安心下さい」
「菊さん…、分かるんですか？」
俄に驚いた表情を見せる日本に菊はニッコリと微笑んで頷いた時だった。
「うるさい！」
「！？」
大きく響いたのは耳馴染みの無い高音。
「……え？今のって」
「なんや？あん中に子供が居るん？」
フランスが驚いた様に呟けば隣のぺド…子供好きであるスペインが表情を明るくした。
霧散していく煙が晴れると、そこには床に頭から土下座体勢の秘書Ａ。そしてその頭にプラカードの様な物を押し当ててグリグリする可愛らしいリラック〇を思わせるオレンジ色のマスコット。そして同じ様に可愛らしい黄色の方のマスコットは幼い子供の周りを浮遊しながらカメラのシャッターをきっていた。勿論被写体は子供だ。その子供はぷくぷくしたほっぺに銀髪。珍しい赤と青の入り交じった瞳を持っていた。年齢の断定は出来ないが、人間で言うところの幼児ぐらいだろうか。そんな可愛い風貌に似合わず偉そうに腕を組み、ふんぞり返っている。しかも額から小さな角とお尻辺りから白い尻尾が覗いていた。
「…あれ？何か誰かに似てるような……？」
日本が思わず独り言ちる。既視感が凄まじい。
「なんでガキが？っつうかあの黄色いのとオレンジ色のはなんだ？」
プロイセンは浮遊するゴーストを興味深げに観察していた。
日本の後方では菊がザワザワと落ち着かない感覚に戸惑いを覚えて俯いている。
「…？、急に何故？」
子供の様な声を耳にした瞬間からどうにも鼓動が早くなり、体中の血液が沸騰しているように熱いのだ。
「おまえらいいかげんにしろ！かこまれてんのにのんきだぞ！」
「…グェッだ、だって！コイツらが私に対して酷いんですもん！愛しの祖国が居るってのに邪魔した挙句暴力のオンパレードな《ゴンッ》ングフッ！！」
プラカードの角でグリグリされていた秘書Ａにオレンジ色のゴーストは黄色いゴーストから渡された大きなハンマーで秘書Ａの脳天を殴打してみせる。
親指を立てて頷く黄色いゴーストにオレンジ色のゴーストも達成感に満ちた表情で親指を立てて応えた。恐らく「やっと黙らせる事に成功した★」と健闘を称えているのだろう。
何の緊張感も無い面々に子供は大人顔負けに溜息を吐く。
「……」
「ドイツ〜？どうしたのさ？」
そんな子供の様子にドイツは親近感を感じずにはいられない。
イタリアがプルプル震えるドイツの肩に疑問を投げ掛けたが返答は無かった。訝しむ様にイタリアがドイツを覗き込もうとするも「いつもの事じゃねぇか」とロマーノが吐き捨てれば、イタリアは簡単に納得すると、あろう事か「シエスタしても良いかな？でもバレて怒られたら嫌だなぁ〜」とマイペースを発揮した。
「……」
ドイツは背中で交わされるイタリア兄弟の遣り取りに脱力感を覚えながら、目先の子供のあの苦労を痛い程痛感していた。
人の意見も聞かずに暴走に暴走を重ね、更に事態の悪化を招くメンバーを纏めなければならない時のあの苦労。胃薬なんて物じゃあの苦労を癒せないのだ。あんな小さな身体であんなに濃いメンバーを纏めなければならない子供が不憫に思えてきて、ドイツは人知れず目元を指先で拭った。

「菊さん？大丈夫ですか？」
「何だ？調子悪ぃのか？」
日本達の後方で自身を抱き締めて俯いていた菊に気づいた日本が慌てて声を掛ければ隣のプロイセンも驚いた様に目を丸くする。
「だ、大丈夫です……」
苦笑混じりに菊が顔を上げれば、頬は赤らみ、瞳は潤んでいた。熱でもあるのだろうか？と日本もプロイセンも気を揉む。
「きく？きくってきこえた！コラ！おまえらしずかにしろ！」
子供の大声にハッとしたプロイセンは子供へと目を向ける。あの子供は《きく》と名前を呼んでいたのだ。
日本も思わず子供を凝視した。
子供が大きな瞳で部屋のあちこちへと視線を走らせていたが、此方を見た瞬間、目を更に大きく見開いた。
「……ッ！き…く。きく！！きくだ！！！」
此方……日本の後方に居た菊を目にしたのだろう。子供は今にも泣き出しそうな顔をしながら此方に向かって飛び込んでくる。
「え！？」
文字通り飛び込んで来ているのだ。
ギュンッと音が鳴りそうな程の凄まじい勢いで飛んでくる。
その非現実的な事象を前に日本は目を丸くし、プロイセンは空いた口が塞がらないでいる。
「きく！！！！！」
「え、もしかして…」
飛び込んで来る心当たりの無い子供に菊は驚いたが、とある人物の特徴を思い出せば全て当て嵌る見目。魔族の特徴であり、唯一ギルベルトだけが持つプラチナの角。
そして《きく》と名前を呼ばれただけで、胸の奥がカッと熱く燃えるような感覚は……、ギルベルトしか居ない。
子供が声を発してから落ち着かないあの感覚はギルベルトの存在を漸く身近に感じる事が出来たからに他ならない。
「ギ…ッ」
「きくぅうううう！！！！」
菊が名前を呼ぶ前に子供は菊の豊満な胸元に顔からダイブをキメた。
「……ッきく…きく！！よかった……！！」
涙と鼻水で胸元が濡れていくのが分かる。こんなに小さな子供になってまで、自分を探しに来てくれたのだと思うと菊の目から涙が溢れた。
「〜ッ、ウソ…ほんと、に？……ッ！！わ、たしも……逢いたッ……かっ…〜ッうぅ」
小さくなってしまった夫をぎゅうっと抱き締めた。菊の鼻を掠めたのは夫の匂い。五感で愛する夫を感じると更に感極まり言葉に出来なくなった。
本当は聞きたい事がある。
何故小さくなったのか？
どうやって此処へ来れたのか？
……異世界に迎えに来てくれる程、私を……。
言葉も無く抱き締め合う2人を前に化身達は温度差を感じていた。
菊と子供は感動的な再会を果たしているのに対し、いつの間にか復活していたゴウリーが可愛らしいオレンジのゴーストと並々ならぬ殺気を溢れさせ、その向こうでは黄色のゴーストと行方不明で探していた秘書Ａが殺気を滲ませながらゼロ距離で睨み合っていた。
「なんやこれ…。それにや、あの子供まさかやけど……」
「あの子供何なの！？ずっと神々の谷間で喋ってんじゃん！？生意気！！場所変われよ！！ってかあれプーちゃんでしょ！」
呟くスペインの隣で何故かフランスが悔しそうにハンカチを噛み締めながらあの子供はプロイセンであると指摘している。
「プロイセン君、まさかとは思うのですが…」
「お？おう……」
やけに真剣な顔をしている日本にプロイセンは何事かと表情を険しくした。
「あの子供さんの特徴…貴方に似てません？というか、貴方ですよね？」
「…は？…え？俺？」
少しばかり拍子抜けしたプロイセンだったが、日本に言われ指摘された子供を注意深く観察した。
顔は菊の巨乳に埋もれて分からないが、あのプラチナブロンドはよく似ている。だが、それだけで似ているとも言い切れない。
それにだ、なんでもう1人の俺様は子供の姿なんだ。と目を背けたくなる。これをあの悪友共に知られたら揶揄されまくるだろう。ならばあの子供が自分だと認めたくない。しかも、菊との関係が分からずに、モヤモヤと蟠りが膨れ上がる。
「…いや？似てねぇな…、全然！全く！これっぽっちも！似てねぇぜ！！」
「そ、そこまで否定しますか」
口を真一文字に結び日本から目を逸らすプロイセンに日本は「ま、いいか」と追求する事をやめた。
「いやいや！何でそんな否定してんの！あの子供は正しくプーちゃんじゃなぁい！」
「せやで！瓜二つやん！って言うてもプーちゃんの子供の姿とか記憶にあんま無いねんけどな！」
そこへプロイセンをここぞとばかりに揶揄いに来る悪友がプロイセンの肩に手を乗せて笑っている。
「げっ！お前ら……」
「こんな美しいお兄さんに向かって、げっ！とは何よ？」
「酷いわー。傷付くわー。騎士とか言うてテンション上げとったのに実際はショタやったプーちゃんが酷いわー」
「酷いのはどっちだコノヤロー！！失せろ！！」
「「きゃー！暴力はんたーい」」
また騒がしく暴れだした悪友トリオを前に、しかし…と日本は再度件の子供に目を向ける。
菊と同じ様に臀部辺りから伸びる白い尻尾。一瞬だけ見えた額には湾曲した白い角。どうやら菊と同じ種族だという事が窺えるのだが、珍しい事に悪魔といえば黒。なのに、あの子供は白い角と尻尾を持っている何とも稀有な悪魔だ。
菊の夫は魔王だと言っていた。そしてあの子供の異様な執着心と菊の愛おしさが溢れ出ている眼差しと抱擁……もしや、あの子供は菊と魔王の子息？だとしたら(本人は否定しているが)、プロイセンは向こうの世界で日本の子供という事になる。
「……ッ」
そこまで考えが至ると日本は息を詰まらせた。
魔王がプロイセンだったら…と僅かに希望を抱いていたが、まさか他の人との間に出来た子供とは……。
「……ッ、」
ーーいや、違う。
向こうは向こうの世界。こっちはこっちの世界があって……だから、勝手に悲観に暮れるなんて菊達に失礼である。そう、こっちの世界の私達には関係ない。
視界の端で悪友を追い払う事に成功したプロイセンがネクタイを緩めながら歩いて来るのを認識し、マイナス思考を振り払う。
日本は何度も自分に『此方の私達には関係ない』と言い聞かせて、人知れず心を落ち着かせた。
「日本、どうした？」
そんな日本にプロイセンは何かを察したのか、一瞬眉を寄せると、静かに隣に立ち並んだ。
「ッ、プロイセンくん……」
慈しみと心配を織り交ぜた眼差しが日本を優しく包み込む。それだけで切なさが押し寄せて苦しい。
「…いえ、何でも無いです」
「……そうか。言いたくなったら言えよ」
見透かされているだろう。
それでも深く追求して来ないプロイセンの優しさに申し訳なく思いながら頷いた。
「取り敢えず皆静かに！席に着いてくれ。現状を整理したい」
背中で口喧嘩を繰り広げるイタリア兄弟を背負ったままドイツは若干疲れた顔で声を張り上げた。

騒いでいても何の解決にもならない。 ]]>
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		<title>10</title>

		<description>目の前で星空が高速回転している。
ギル…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 目の前で星空が高速回転している。
ギルベルトは未だぼんやりとした思考で星の光が線になって伸びていく光景を眺めていた。
目の前でキクが消された。
その事実に耐え難く体中の血が沸騰したのを覚えている。
キクを奪った元凶が同じ空間に存在している事が許せなかった。キクが居ないのに、なんでアイツが此処に存在してんだ。と悲鳴ともつかぬ怒号を吐き出してからの記憶が朧気だ。
「こ、ここここここれは一体何事ですか！？」
シリアスに陥るギルベルトの隣から動揺を極めた声が聞こえて、ギルベルトは少しばかりげんなりした。
ギルベルトの足元で腰を抜かして座り込んでいたのは秘書Ａ。超人的ポジティブ思考の秘書Ａもこの状況には頭が追い付かないようだ。
「……お前」
「ヒィイ！？喋ったぁあああ！！」
一言ギルベルトが発した声に異常に反応する秘書Ａ。
失礼な奴である。まるで怪物でも見たかの様なリアクションにギルベルトは思わず眉間の皺を刻む。怪物ならゴウリーという強烈なオネェが居るのに。
「後生でございます！！今はまだ召されたくないです！まだ普日の同人誌出しても無いし大好きな作家様の御本も手に入れてないんですよ！？こんちきしょう！！私の楽しみといえば日々祖国を崇拝し！秘書Ｂの鬼畜な仕打ちから逃げ！ゴウリーから祖国の貞操を毎夜守っていたんです！そして魔界に来てからはキク様のドレスからチラチラ見える柔肌と豊満なおっぱいに胸を馳せ！妙ちくりんな変態ゴーストから命を守りつつキク様の全てを余すこと無くカメラに収めてたのに未だ現像してマイアルバムにお蔵入りしても無いんですよ！？！？まだ死んでたまるかってんで〈ガッゴンッ！〉んがへ！？！？」
後半になるにつれてヒートアップしていき、ストーカーじみた事を喚き出した。しかし、突如何の前触れも無く秘書Ａの目の前の空間が歪んだと思ったらニュルンとゴースト達が湧き出た。
その湧き出た勢いのままオレンジ色のゴーストハゲがプラカードの角で秘書Ａの無防備な頭頂部を殴り、平たい面で横面を弾き飛ばしたのだ。
ズサァア！と床を頭からスライディングする秘書Ａを心配する者は居ない。
「痛いじゃないですか！！角はやめなさいよ！なんか懐かしくなるでしょうが！！ってか何処から現れたんですかコノヤロー！！！」
頬を抑えながら飛び上がる様に身体を起こして抗議している秘書Ａに向けて黄色のゴーストザコがハゲから借りたプラカードを脳天に叩きつけて追撃してみせた。容赦ないとはこの事だ。
「～〜ッ！！！ぁにすんですかぁあ！？質問に答えろ黄色いの！！」
最早涙目で怒り出した秘書Ａに対し、ザコは清々しげにふんぞり返る。空かさずハゲがプラカードを秘書Ａの眼前に掲げてみせたのを、秘書Ａはプリプリしながらも律儀に読み上げた。
「何です？えー、と【誰が変態だこのド変態！ストーカー野郎！！】……えツッコミ？私に対する一方的な暴力がアンタ達のツッコミなんですか？これツッコミにしては些か激しくないです？やり過ぎでしょアンタ達」
目の前で繰り広げられるコントの様なバトルにギルベルトは目眩を起こした。コイツらが引き金なのは確かだが、先程力を使い過ぎた為立っているのがやっとの状態だ。
それにさっきから周りを流れていく星の筋に気分が悪い。
星の流れに身体が持っていかれそうになる。
先の見えない星の川の向こうへと…二度と戻っては来れない深い闇の永遠に流されてしまう。
そこまで考えて知らぬうちに足が一歩後退した。
「…、なんだ…気持ち、悪ぃ……ッ！！」
グラグラと今度は頭の中が掻き回されて気分が悪くなる。途端、ヤバいと思った時には倒れ込んでいた。
異変に気付いたゴーストと秘書Ａは驚愕の表情で駆け寄り、ギルベルトの様子を窺いみる。
「ギルベルト殿！？どうしたんです！？」
ワタワタとする秘書Ａとゴーストの姿を最後にギルベルトの視界はフェードアウトした。

＊

多目的ホールに辿り着いた面々はそれぞれ好きなテーブルにつき、菊は日本、ドイツ、イタリア、ロマーノとテーブルについた。
ゴウリーは有無を言わさずイギリスを膝の上に乗せようとし、ぶちギレしたイギリス(ほぼ泣いてる)に【ほあた☆】で召喚されたナニかと戦っている。アメリカとロシアは何故か隣に座ってニコニコしているが、足元ではお互いの足を踏み付けようと乱闘が起きている。足元だけという起用さだ。
プロイセンはスペインとフランスと何やらゲスい話題で盛り上がり、中国と香港、台湾、ベトナム、タイ、インドのアジア組は菊の存在が日本に伝わる鬼では無いかと恐々と憶測を交わしていた。そんな会話が聞こえていたのか日本は中国を睨む事で菊の心境を気遣い、話題の摩り替えを訴えていたのだが中国は気にした素振りも無く「日本が我に助けてって言ってるアル…」と斜め上を行く思考で意思の疎通が出来ていない。

ザワザワと落ち着かない室内に痺れを切らしたドイツが「静かにしろ！話を始める！」と宣言した事で漸く静かになった。
イギリスは咳払いをすると席から立ち上がり、今回の魔術について話し出す。
「今回の魔術は俺と同じ類の転送魔法だと思う。向こうにもう一人の俺が存在し、菊とバケ…ゴウリーを此処に転送したと菊から聞いている」
「何で此処にゴウリーなら分かるけど菊まで飛ばされたんだい？」
アメリカの鋭い質問にイギリスはグッと詰まる。
その反応にロシアが純粋な笑みを浮かべながら追い討ちをかけてきた。
「もしかしてさ、もう1人のイギリス君の事だからまた魔法を暴走させて巻き添えにしちゃったんじゃないのかなぁ？ほんと迷惑だよね〜」
「なッ！？なんで分かるんだよバカぁあ！！」
顔を真っ赤にして怒鳴るイギリスに反応したのはゴウリーだ。ナニに勝ったのか鼻血を流しながらイギリスを背に庇いロシアを睨み下ろした。
「ちょっと！アーサーちゃんを何だと思ってんの！？アントーニョちゃんと喧嘩して魔法使ったらそれが外れたの！それがギルちゃんに当たりそうになったんだけどギルちゃんがヒョイッて避けちゃったからギルちゃんの後方に居たアタシ達乙女に魔法がクリティカルヒットしたのよ！！だから暴走じゃないわ！お分かり！？」
「「「……」」」
ゴウリーの剣幕と台詞に言葉を失う面々。
しかし、「え、暴走じゃない。どう違うの？」とロシアの口は言葉を失わなかった。
「ロシアちゃん！アンタ可愛い顔してるから贔屓にしてあげてたのに酷いじゃない！暴走じゃないのよ！アントーニョちゃんとギルちゃんが避けるからこうなったの！！アーサーちゃんの所為じゃないのよぉおお！！！」
胸に響く(物理的に)声でアーサーの弁護を熱弁するゴウリーにイギリスは鳥肌が止まらない。
「贔屓してくれなくて良いのになぁ。アメリカ君の所の子ってだけでもプチッてしたくなっちゃうのに」
「Hey、面白いじゃないか。俺の所出身だと問題なのかい？喧嘩なら買うよ？」
またもや冷戦を起こしそうになるアメリカとロシアを遠巻きにしていたスペインとプロイセンはお互いに顔を見合わせた。
「なあ、アントーニョちゃんとギルちゃんって俺とプーちゃんの事やんな？人名同じやし…どう思う？」
「マジかよ。やべえな……華麗に避けたって言ってたけど向こうの俺様も小鳥カッコイイじゃねぇか！」
「いや、どこに感動してんの。華麗とか言ってないし」
スペインの真面目な台詞にフランスは面食らっていたが、続いたプロイセンの台詞に思わず突っ込んだ。
「しかし、面白いよね」
フランスは頬杖をついてイタリアと楽しそうに会話する菊を眺めた。サラサラと流れる長い黒髪に赤い唇は何とも色っぽい。更に悪魔という男には堪らない設定が盛り沢山だ。ベッドの中ではさぞかし妖艶な小悪魔になるだろう。
「…イイ。うんうんホント面白…ガブァ！？」
フランスの鼻の下が伸び始めたところでスペインのトマトが口の中に捩じ込まれた。
「フランが面白い言うても菊ちゃんは堪ったもんちゃうで。酷いわ」
「お、お前……！お兄さんの一張羅にトマトの汁が着いちゃったんですけど！？あとこのトマト美味しいからあとで空輸して！もうお前がマトモな返答ばかりしてくるからお兄さん不安になっちゃう！」
自分の身体を抱き締めながら言いたい事を一気に言い放つフランスにスペインは「へーそーなん」と半ば対応が投げやりになった。面倒くさいと思ったのだろう。
「だいぶ話が脱線しちまったけど、あの菊って女を戻すにはどうすりゃいんだ？」
話の軌道を戻すプロイセンにスペインは「それやソレ！」と身を乗り出した。
「親分な、ラテンの血が騒ぐんや…。女の子は助けたらなあかんって」
無駄にキリッとした顔で告げる。
「お前それ男だったらどうなんだよ？」
「ンなもん決まっとるやん！知らんぷりや！可愛ええ子やったら別やけどな」
ドヤ顔が眩しいスペインにプロイセンの頬が引き攣るが、男には冷たいスペインらしいかもしれないと思い直し、そこでふと疑問が生まれる。
「なあ、向こうの世界に俺様とかスペインとか居るんだっつうならよ、何になってると思う？」
プロイセンの言葉にスペインもフランスもキョトンと目を丸くした後、眉を顰めて悩んだ。
「ほんとだ。凄い気になる……お兄さんはきっと薔薇の妖精とか美しい何かだと思うけど」
ウェーブした柔らかな金髪を指先で跳ねながら笑むフランス。
「フランは淫魔とかけったいなモンちゃうの？親分はトマト農家しといて欲しいわ」
サラッと辛辣な言葉を吐き、スペインは真っ赤に熟れたトマトを片手に微笑む。
「魔界に農家なんか無ぇだろ。あとフランスは淫魔以外有り得ねぇ！まあ、俺様は小鳥カッコイイ黒の騎士だろうな！！」
ケセセー！と胸をはるプロイセンにフランスとスペインは不満げに半目になってプロイセンに向き直る。
「騎士って…プーちゃんどこまで厨二なの。プーちゃんなら魔界でも一人寂しく自宅警備員かもしれないし」
「一人寂しく魔界の隅っこで芋栽培しながら自宅警備員しとるんちゃう？」
呆れと揶揄いが混じった2人からの言葉にプロイセンは唇を尖らせる。
「なんで自宅警備員なんだよ…しかも一人寂しくとか酷くね？」
そんないつもの悪友達の遣り取りを他所にドイツはいつまでも喧しい面々に溜息を吐いた。
「まったく…、すまないな菊」
菊の心境を思えば早く解決してやりたい事案なのに皆が皆自由過ぎて纏まりがない。ドイツの申し訳無さそうな表情に菊は眉を下げて頭を横に振った。
「いえ！、ル……ドイツさんが謝る事ではありません。それに、緊迫した空気よりも幾らか私も気が紛れているんです」
それが本心なのか分からないが、菊の纏う空気が柔らかい事からドイツは素直に頷いておいた。
「ねぇねぇ！向こうにも俺が居る？どんな奴かな？」
イタリアがドイツの肩にぶつかりながら菊に興味津々とばかりに問い掛けた。勿論｢おいイタリア｣と苦言を零すドイツをまるっと無視だ。
「イタリアさん……は、何方になるんでしょう？」
「え？……それって」
菊の返答にイタリアはくるんと眉を下げた。まさか自分だけ向こうに存在しないなんて悲し過ぎる。
「ケッ！バカ弟なんか後で良いだろ！菊、俺はどうだ？」
ロマーノはイタリア同様もう一人の自分について興味があったようで「酷いや兄ちゃん！」と訴えるイタリアを無視した。
そこで菊はハッと目を丸くする。
イタリアと同じ姿をした魔界の住人など見た事が無い。天界に居るのかもしれないが、どんな人物かと言われても説明出来ずに頭を悩ませていた。しかし、先程のロマーノとイタリアの遣り取りにあった兄弟を思わせる内容(顔が似ているとは思っていたが)に漸く魔界の人物を思い出せた。菊の無二の親友であり、ルードヴィッヒの婚約者でもある魔女のフェリシアーノだ。
「ロマーノさんはヴァンパイアです。あとイタリアさんは魔女ですよ」
「……魔女？」
魔女という単語に反応したのはロマーノだ。自分はヴァンパイアと聞いて「カッコイイじゃねえか」と心躍らせていたが続く魔女に目が点になる。
「わあ！凄いや！俺魔女だって！！魔法使いだよドイツー日本ー！ヴェヴェ」
嬉しそうに両手を上げて喜ぶイタリアにドイツと日本、ロマーノは何とも言えない顔で菊を見遣る。
「…すまないが、其方のイタリアは魔女で間違いないのか？」
ドイツの僅かに動揺した雰囲気に今度は菊の方がキョトンとなる。
「？、ええ。フェリシアーノさんと仰って魔女で私の親友なんです」
｢ヴェ！菊と親友なんだー！嬉しいなぁ。ね！日本！俺達向こうでも仲良しなんだって！｣
天真爛漫に笑むイタリアに日本は眩しさを覚えながら｢そうですね。とても光栄です｣と微笑んだ。
そんな2人を横目にドイツは疎外感を感じて少し寂しくなるが、菊に向き直る。
｢では、其方のイタリアは女性という事か…｣
｢はい。とても素敵な女性なんですよ｣
ドイツの問い掛けに菊は自分のことの様に嬉しそうに答えると、フェリシアーノが如何に素晴らしい女性であり魔女なのかを熱弁する。
好奇心旺盛に聞き入るのはイタリアと日本。ロマーノは何だか複雑な心境に手元の炭酸水を煽り、ドイツは向こうでの自分の婚約者であるという事に動揺し、顔を真っ赤に染め上げて固まってしまった。
｢……あとフェリシアーノさんの淹れる珈琲は魔界一と言われているぐらい絶品で、勿論料理も素晴らしくて…はぁ……、思い出すだけでお腹が空いてしまいます｣
うっとりとした菊にイタリアと日本もそこまで絶賛する珈琲と料理を是非口にしてみたい。と美食国家としての素直な気持ちが顔を覗かせ、思わず唾を飲み込んだ。
｢その、1つ聞いても良いだろうか？｣
ホワホワと思いを馳せる3人に少し戸惑いながらドイツは気になっていた事を尋ねる事にした。
｢其方でのプロイセン……俺の兄貴なんだが、どんな人だろうか？｣
｢！、｣
兄は現在、亡国ではあるが毎日ドイツと衣食住をこなし、偶に仕事の補佐をしてくれて、軍の助っ人教官として忙しく過ごしている。亡国だとしてもお役目御免だなんて有り得ない。
まさか向こうでプロイセンという存在が無いなんて事は無いだろう。もしそうなら胸が張り裂けてしまいそうだ。それでも尊敬する大好きな兄の事だからこそ、聞いておきたい好奇心には勝てなかったのだ。
しかし、ドイツの視線の先である菊はさっきまでの楽しそうだった雰囲気から悲しみを帯びた様な憂いを帯びた雰囲気にガラリと変わっている。
｢……、｣
｢……菊さん？｣
ドイツは口から空気しか吐き出せず、日本は嫌な予感に喉を鳴らした。
｢ねぇ、菊？どうしたの？｣
イタリアが眉を下げて目線を落とした菊に問い掛ける。
｢…あ、すいません。少し感傷に浸ってしまって……｣
｢…感傷｣
ポツリと往復した日本にドイツがハッと菊を見詰めた。
｢コチラのプロイセンさんはギルベルトさんと瓜二つですね｣
菊は眩しそうに騒ぎ立てている悪友トリオのテーブルを眺める。
そんな菊の眼差しとセリフに日本とドイツは言い知れぬ絶望感にドキリとした。
｢あ、ごめんなさい。向こうでのプロイセンさん、ギルベルトさんの事でしたね。彼は……｣
菊が気を取り直した様に日本達に向き直り、ギルベルトの事について語ろうとした時だった。

ーーーーバチンッ！！！！
｢｢｢｢！？！？｣｣｣｣

大きな破裂音と閃光。
突然の事に菊も化身達も皆その場で自身を守る様に屈んだ。
 ]]>
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		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2020-04-11T12:49:22+09:00</dc:date>
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		<title>9</title>

		<description>
ーーガッ！
「くっ！」
クロスした腕…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 
ーーガッ！
「くっ！」
クロスした腕に魔王であるギルベルトの拳がぶつかり、鈍い音を発した。
アルフレッドはビリビリと痺れる腕越しにギルベルトを見据えた。
「…いい加減、正気に戻ってくれないかい？」
「……」
アルフレッドの問いかけにギルベルトは無言を貫く。しかし、それも直ぐに膝蹴りがアルフレッドの腹部に迫った事で後方に大きく飛び退いた。
ギルベルトの遥か後方にアーサーの姿が見えるが、まだ合図が無い。
ロヴィーノは何が何なのか分からない秘書Aの腕を掴み魔法陣の外で不安気に此方を見ている。
アルフレッドはギルベルトとの圧倒的な力の差に眉根を顰めた。
「アルフレッド！余所見しとる場合ちゃうでアホ！！」
「！？」
バチン！と雷の轟音にハッとすれば、目の前でメタル化した大きなカボチャが煙を上げている。
ギルベルトの雷をアントーニョがカボチャで防いでくれたのだ。
「…分かってるさ」
アルフレッドはバツが悪そうに唇を尖らせると再度ギルベルトに集中する。
アントーニョと二人がかりでも劣勢な状況にアルフレッドは焦っていた。
カツンと一歩ギルベルトが足を踏み出すだけで逃げ出したい感覚に襲われる。それでも、どうにか対峙していられるのは、拳を握り締めて己を律しているからだ。

アルフレッドが待ち望む合図。それはロヴィーノのあの言葉、「一かバチか…一言叫べば良い」から作戦が始まった。
「は？なんて叫ぶのさ！」
「ンなの、菊が居たぞ！って叫べば良いんだよ」
アルフレッドはドヤ顔で顎を上げるロヴィーノの言葉が急に理解出来なくなり、自慢のケモ耳を撫で摩った。そんなアルフレッドの行動にロヴィーノは訝しむ様に睨む。
「おい、何だよその反応は…」
「いや、だって君さ今なんて？」
「だぁあ！ファンクーロ！あのな！俺が何の考えも無しにこんな事言うわけねえだろ！？」
顔を真っ赤にして怒鳴るロヴィーノを前に、何か考えあっての事だったのか。良かった。とアルフレッドは安堵した。
「…痛ぁあッ」
 突然、背後から聞こえた声にアルフレッドとロヴィーノは肩を跳ねさせて振り返る。そこには眉根を寄せて肩を抑えながら上体を起こしたアントーニョが居た。
「…お、お前…ッ、いつまでシエスタしてやがんだこんにゃろう！！！」
「えぇ…第一声はもうちょい優しくしてや」
言葉とは裏腹にロヴィーノの表情は何処と無く嬉しそうで、アントーニョの表情も柔らかい。
「ほんで？親分は何したらええの？」
どうやらアントーニョはちゃっかりロヴィーノ達の会話を聞いていたようだ。ロヴィーノはフンと鼻息を鳴らすと、三人で顔を突合せた。
ロヴィーノの作戦はこうだ。
ギルベルトの注意をアントーニョとアルフレッドに向けさせている間にロヴィーノがアーサーにこの作戦を告げ、移転魔法で菊の元にギルベルトを飛ばす。
出来上がった魔法陣の中にギルベルトを吹き飛ばせば、後はアーサーが詠唱を唱えて転送は完了だと。
アルフレッドとアントーニョはあまりにもシンプル過ぎる内容に不安を滲ませていたが、ロヴィーノの「アーサーが責任をとるだろ」と何とも人任せな返答に「そうやな。親分知らんへんし」「アーサーなら問題ないよね」と此方もまた軽かった。アーサーが聞いたら激怒しそうだが、この場に本人が居ないのは幸いである。
【どんな事になってもアーサーが責任をとるのでお咎めなし】という事でアルフレッドとアントーニョは清々しい程の笑顔で立ち上がり親指を立てた。
「ほな！行こかアルフレッド！」
「OK！要するに魔法陣が完成したらそこにギルベルトを吹き飛ばせば任務完了だね！」
「おう！頼んだぞお前ら！」
勇ましくギルベルトとアーサーに向かっていく2人の背中を見送った。
ロヴィーノにとって、ここまでは簡単だった。

アントーニョとアルフレッドが何とかアーサーを救い出した所でロヴィーノは作戦をアーサーに告げる。しかし、アーサーの魔力の消耗が激しく魔法陣を錬成させられるのかが問題となった。
「…今回の事は悪いと思ってんだ。ある程度のお咎めは覚悟してるさ。だが、俺の力が足りない。魔法陣を錬成しても転送させるには補助となるアイテムが必要になる」
ギルベルトに首を掴みあげられている間に治癒魔法や首の鋼鉄化に魔力を消耗し続けていたのだろうとロヴィーノは顔色の悪いアーサーを観察しながら思った。そうでなければ今この場にアーサーは生きていられない。
「…アイテムってどんな？」
「より濃い繋がりや執着がある物。そうじゃねえと妃とゴリラを飛ばした世界線を探せねえんだ」
「…繋がりや執着のある物」
ロヴィーノは思案するように腕を組み、荒れた室内に視線を彷徨わせた。
そんな物あるのだろうか？ギルベルト自身を向こうに飛ばすのだからギルベルト自体が繋がりや執着ある物としてのアイテムにはならない。
しかもだ、より濃い物。菊やゴウリーと繋がりがあって執着もある…そんな物あるのだろうか？
ふとロヴィーノが彷徨わせていた視界に人影が入る。床に突っ伏して涙に暮れる秘書Ａだ。
「…うぅッ、もうこの世の終わりですよ……」
菊が目の前で消されてしまった喪失感と文句を言いながらもこれまで寝食を共にした同じ境遇のゴウリーへの哀愁。
そんな秘書Ａの心情を他所にロヴィーノはハッと目を見開くと不敵に笑んだ。
「そうか。……何とかなりそうだぜ？」
不敵に笑むロヴィーノにアーサーは疑問符を浮かべた。

＊

ギルベルトの向こうでは額に大粒の汗を流しながら魔法陣を錬成していたアーサーが魔法陣の錬成が完成したのか床に座り込んだのが見えた。
「……！頼むでアルフレッド！！」
「OK！！」
アントーニョの声を合図にアルフレッドは残った魔力で全身の筋肉を倍加し、ギルベルトに真っ直ぐ駆け出す。
ギルベルトが禍々しいオーラを纏い出すと今度は座り込むアーサーの隣でロヴィーノが大声を張り上げた。
「…菊だ！！菊が居るぞこんちくしょうめ！！！」
「え！？ど、何処ですッふが！！」
「！？！？」
ロヴィーノの発した「菊」という名前にギルベルトは動きを止めて、大きく目を見開いた。ついでに馬鹿みたいに大きな声で反応した秘書Aの口を塞ぐ。なんで此奴が1番大きく反応しているんだとロヴィーノは苛立ちさえ覚えた。
チャンスとばかりにアルフレッドが倍加した大きな身体でギルベルトにエルボーを炸裂させ、見事魔法陣の範疇に吹き飛ばす。
「今だアーサー！！」
「任せろ！」
「ちょっ、痛ッあぁああぁああ！？！？」
ギルベルトが魔法陣の範囲に入ると同時にロヴィーノがアーサーに声を張り上げながら魔法陣の中へと秘書Aを蹴り飛ばした。
アーサーは不敵に笑むと星の付いたステッキを魔法陣に向ける。
「transference！」
短い詠唱と同時に魔法陣が真っ白に発光し、その光はあっという間に部屋全体を飲み込むように大きな閃光となった。

ーーバチッ！！

破裂音のような音が響き渡り、影も何もかもが真っ白な光の中に消えていく。１分にも満たない時間で光が弾ける。
「……ッ！、」
窓から吹き込む風でハッと目を開ければ、魔法陣の上に人影が無い。あれ程禍々しいオーラで空間を圧迫していた感覚が忽然と消えていた。
アーサーはドッと倦怠感に襲われる体を無視して今後の作戦を考える。
転送には恐らく成功した筈。向こうに繋がりのある対価として秘書Ａ自体を魔術の工程式に置き換えたのだ。きっと大丈夫。問題なのは向こうに着いたギルベルトが菊を探し出してこの世界線に戻ってくる方法がない事。
向こうに自分と同程度の【おまじない】の力を持つ物と知識量を持つ者がいれば何とかなるだろう。そういう人物をギルベルト達が探し出せるか……そこでアーサーはハッとした。
「……くっそ、対価が問題じゃねえか。帰りの事考えて無かったぜ」
そう、行きの対価が秘書Ａだとして、帰りの対価が必要なのである。ガシガシと頭を搔くと考えあぐねた。

「せ、成功した……？」
ようやく訪れた静寂にアルフレッドが力無く座り込むとアントーニョも気が抜けたように床に大の字に寝転がる。
「もうギルちゃん強過ぎやし！親分疲れたからシエスタしたいわ〜」
そんな中未だに沈黙するロヴィーノに気付いたアーサーが思考を中断し、訝しげに近寄りながら声を掛ける。
「？、おいお前…」
「……くっそ！目が痛え……ッ！」
忌々しげにロヴィーノが吐き捨てた。
目を閉じて腕で覆い隠していてもチカチカとした光が瞼の裏で明滅を繰り返し目が痛くなる。堪らず座り込み、膝を抱えた。それでも瞼の裏の明滅は収まらないのだ。失明の恐怖に歯を食いしばる。
「おい、目を開けろ」
苦しげなロヴィーノに見兼ねてアーサーが星の付いたステッキを片手にロヴィーノの前で膝をつく。
「…開けろって、簡単に言うんじゃねぇよ」
「うるせぇ。早くしろ直ぐ終わる」
「ち、ちぎ…！分かりましたで御座いますコノヤロー」
指先で瞼を押し上げなければ自力で開眼など無謀だ。ロヴィーノは硬く閉じる目蓋を親指と人差し指で抉じ開けた。
「……ッ！」
開けた視界が刺す様に痛い。
因みにロヴィーノの語尾に流れるように付いたスラング、コノヤロー発言については聞こえなかったフリをするアーサー。一応ロヴィーノの起点が働き、命拾いしたような物なので少しばかり心は寛大なのだ。
「recovery」
アーサーがステッキを小さくロヴィーノに向けて振り、治癒魔法を唱えれば漸くロヴィーノの視力が正常になる。パチパチパチと何度も瞬きを繰り返して焦点が一致すればホッと恐怖から解放された。
「……あ、」
少しばかりボヤけた視界では腕組みをして何故か不機嫌な様子のアーサーと床に座り込むアルフレッドとアントーニョのキョトンとした姿が見える。
「こ、これはお前の為なんかじゃなくて俺の為なんだからな！後から目が見えなくなったとか愚痴られたら天界の外聞もあったもんじゃねえし！！つ、つつつつまり全部俺の為なんだからな！！勘違いすんなよこのバカァァ！」
「チギャア！？か、かかか畏まりました！！全部アーサー様の為ですともコノヤロー！！！」
アーサーの剣幕に怯えてロヴィーノも必死に大声でフォロー（のつもり）をしたのだが、アーサーは逆に傷ついた顔で眉を寄せる。
「……なんでそんなビビってんだよバカ」
「めめめめ滅相もないですコノヤロー！！早くお帰り上がり下さいませチクショー！ファンクーロ！！！」
「…てめぇ…ッ喧嘩売ってんだな？上等だコラ」
「ちぎゃあああ！！売ってませんで御座います！買わないで下さいませカッツォ！！！」
「さっきから流れるように語尾に罵倒語つけてんじゃねぇぞこの馬鹿ぁあ！！」
「ちぎゃあああ！？」
「待てコラァア！！！」
罵り合っていると思えば今度は鬼ごっこを開催するアーサーとロヴィーノにアルフレッドとアントーニョは小さく笑った。
「なんや緊張感あらへんなー」
「君が言うと違和感しか無いんだぞ」
呆れるアルフレッドの目の前で黄色い塊がフヨフヨと現れた。その上に引っ付くようにオレンジ色の塊も居る。ハゲとザコだ。
「What's ？どうしたんだい？」
アルフレッドが問いかけるとハゲはザコの頭頂部に水性マジックで文字の羅列を並べた。ボード代わりにされたザコは擽ったいのか小刻みにピクピク揺れる。
「ん？どないしたん？」
アントーニョが隣からザコの頭を覗き込めば、アルフレッドと共に目を丸くした。
【連れ戻すから眉毛の人に魔法陣をもう一度起動させてほしいデス】
「え？連れ戻す？……って誰をだい？」
ーードゴッ！！
不思議そうに頭を傾げたアルフレッドの額にハゲの頭突きが炸裂した。
「No!!すっごい痛いんだぞ！！！」
涙目のアルフレッドにフスーッと湯気を立てるハゲ。
アントーニョは暫し沈黙した後、「分かった！」と手を打つ。
「ギルちゃんと菊ちゃんの事やろ！あの2人に異空間に転送する能力無かったと思うで！転送出来ても半径10kmがええとこやってギルちゃん何でか知らんけどドヤ顔で言うとったし！」
アントーニョの回答が正解だったのか、気をよくしたハゲはアルフレッドの前髪から手を離して大きく頷いている。ザコもどこかキラキラしたような目でアントーニョに拍手を送っていた。
「……随分凶暴なゴーストなんだぞ」
痛む額を撫でながらアルフレッドが唇を尖らせていれば、アントーニョは未だに鬼ごっこを繰り広げる2人を呼び寄せた。
「おーい！いつまで遊んでんねん！まだやる事あんでー！！戻って来ぃな！！！」
「「遊んでねえ！！！！！」」
「なんや、息ピッタリやん」
のほほんとアントーニョが笑えば、ロヴィーノとアーサーは頬を引き攣らせた。
「ま、まぁいい。ところで、大事な事を言うのを忘れていたんだが…」
コホンと咳払いをして気を取り直したアーサーが深刻に告げれば、アルフレッドが眉を顰めた。
「何だい？もう今だって大変なのにこれ以上面倒事を増やさないで欲しいんだぞ」
「…ッ、」
ぐぬぅと唸るアーサーにロヴィーノはハゲの頭に頬杖をついてバレない様に口角を上げている。
ザコがアントーニョの服の裾をグイグイと引っ張った事でアントーニョは当初の目的を思い出した。
「あかん、また流されよったわ…。おおきにザコ」
アントーニョの微笑みにザコが目をキラキラさせて得意気に頷いた。そんなザコの頭にアントーニョが掌を載せてアーサーに向き直る。
「そこでや、このゴーストちゃん達をあの魔法陣でギルちゃん達の所に送ったってや。ゴーストやから既に死んどるし、対価とか要らんやろ？」
「！！、お前…対価の事知ってたのか？」
驚くアーサーにアントーニョは半眼になると撫でていたザコの頭をグニュッと鷲掴みアーサーに掲げて見せた。ザコの目が更に輝いてピンク色に顔が発光しているのはスルーだ。
「あほか。そんなけったいなモン知る訳ないやろ。ゴーストちゃん達の助言や」
人が下手に出てりゃこのカボチャ野郎……ッとアーサーが拳を握ったところで、アルフレッドが「アーサーにしか出来ない事なんだから、さっとやってくれないかい？」と言う発言に気分を向上させる。
チョロい奴と呟いたロヴィーノの言葉も聞こえない程、魔力を魔法陣に注いでいた。

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		<dc:subject>-</dc:subject>
		
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		<title>8</title>

		<description>痛い。と呟やきながら起き上がった日本は…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 痛い。と呟やきながら起き上がった日本は己の身体の上に人が居るのに気づく。
はて？誰だろう？
煙が晴れてくると、その人物が良く見えた。
長い黒髪、女性特有の柔らかさと細腰。

…え？…女性？

ドイツは煙の晴れた日本を助けようと近寄って来る。
イタリアもドイツに伴いやって来た。
そして、ドイツもイタリアも日本の状態にビシッと固まってしまう。

何故なら倒れた日本の上に女性が覆い被さって居たのだから。

「〜っ、こ、ここは？」
女性が上体を起こして辺りを見渡す。
その顔を見た化身達は更なる衝撃に驚き固まった。
その女性の顔がそのまま日本と同じなのだ。
いや、中性的な顔の日本よりも完璧な女性だ。
睫毛は長く、琥珀の瞳は大きい。唇は桜色で顔が小さく随分整った容姿だ。
「え？ここは…何処ですか！？」
混乱しているのは女性も同じようだ。

「ヴェヴェ！ベッラだベッラー！」

会議室にはイタリアの歓喜の叫びだけが響き渡った。


[newpage]

「ぁあん！！マイスウィートベイビー！！！！」
イタリア以外の固まった空気をぶち壊す野太い奇声に夫々がハッとした。
身動きの取れない日本は条件反射で思わず身を固くしたが、遠くで「ぎゃぁああ！なんでコッチ来てんだバカ！！」と嘗ての相棒であり現在友人である島国の化身イギリスの悲鳴が聞こえてきた事にキョトンとした。
「…あ、あれ？」
土煙を上げる勢いで日本の目の前を駆け抜けて行ったゴウリーの逞しい背中を見送る。あの恐怖の時間がまた始まると何処か諦めの境地で身を固くしていたが、その恐怖の対象はイギリス目掛けて一直線に通過して行った。心からホッとしたのは内緒だ。
しかし、そんな悠長な気分でいてはいけないと日本は気を引き締め、目の前で…というか押し倒しておいて未だに固まっている女性を注視する。薄々気が付いてはいたが、女の顔はまるで鏡のように日本と瓜二つなのだ。これ如何に…？
「……あの？大丈夫ですか？」
「！！も、申し訳ありません！」
日本の声にやっと気を取り戻した女が飛び上がる様に日本の上から退いたが、女の鞭の様な尻尾が床をビタンッと鳴らした音に思わず目を丸くした。偽物では有り得ない力強さと柔軟性があり、ユラユラと恥ずかしそうに立ち尽くす女の尻で揺れるさまは猫の尻尾のようだ。機械的な動きではない。信じ難い事だが本物の尻尾であろう。


事の発端は、半年前まで遡る。

いつもの踊る会議で日本の秘書とSPが日本に(巻き添えで)向かってきたイギリスの魔法を受け、何処かに飛ばされてしまった。日本は大いに慌てふためいた。
残念ながら慌てふためいた所で解決策はイギリス曰く「何か繋がりが無ければ時空を探し出せないし、見つけることも出来ない……すまない」といつに無く意気消沈気味に言われては日本もイギリスを責める事が出来なかった。
その後は関係者家族友人に秘書Ａとゴウリーは長期出張に向かっている為、音信不通となります。と頭を下げた政府関係者達。その間、日本は何か手掛かりが無いかとイギリスと共に魔術書関係を漁りに漁ったのだが、コレという情報も無く半年という月日が流れてしまったのだ。
そして今日の世界会議。
前回の1件もあり、イギリスはフランスの野次にもアメリカの無茶ぶりにも沈黙を通していた。そう、通してはいた。だが、元々短気な性格の海賊紳士とまで言われていた男が沈黙を貫くなど無謀だったのだ。
フランスのちょっかい(主にお尻)にブチ切れた。
イギリスが星の付いたステッキを振り上げたところで、堪忍袋の緒が切れたドイツが「静粛に！！」と声を張り上げた瞬間、会議室全体が眩しい光に覆われた。
漸く薄目を開いて見遣れば、エロい格好の黒髪美女と服装がスーツから何処で仮装していたのか真っ赤なフリル付きのドレスを纏うSPの姿。
そのSPは何故かイギリスに向かって熱烈な愛を叫びながら突進し、現在涙目で心底ブチ切れしているイギリスを剛腕の中に囲いこんで不気味に笑んでいる。
「……一体何が？」
イギリスには悪いが日々の悪夢から解放された事に安堵した日本は人知れず安堵の息をついたが、まだ問題はある。何故SPは戻ったのに日本の秘書が戻らないのか、そしてこの女性は見るからに人間では無いという事だ。
見事な長い黒髪は艶々と美しい。白い肌に赤い唇は黒髪によく映えて何とも艶めかしい美女だ。
だが、その美女の頭には湾曲した黒い角と尻からは鞭の様な黒い尻尾。
もしかして日本の秘書は何故か性転換を果たして帰ってきたのでは？と有り得ない思考が過ぎる。
「……貴方がニホン…さん？」
「ぇ…、あ、はい。日本と申します」
思考に耽っていれば美女から名を呼ばれ、思わず日本は背筋を伸ばした。
「では此処は平行した世界という事ですね？あ、申し遅れました。私は菊と申します」
平行した世界？菊？？情報量の多いワードに日本は無表情ながらも内心混乱を極めた。
「……え？平行？？貴女は一体…」
「ベッラは菊って名前なんだね？けど花の方が恥じらうぐらい君は魅力的な女性だよ」
日本の台詞を遮り、スッと間に割って入ったのはスーパーラテンイタリアだ。いつものほのぼのとした表情は也を潜め、今はキリッと菊の指先を恭しく持ち上げている。
日本は心の中で、誰ですかアンタ。と頬を引き攣らせた。
「おいバカ弟退け」
「ヴェ！？」
そこへ南イタリアことロマーノがイタリアを押し退けて菊の反対側の指先を優しく持ち上げてみせる。
日本の目は最早遠くを眺めていた。
「こんなに魅力的な女性が存在するなんて知らなかった。指先まで美しいなんて、俺を虜にするベッラ……君は重罪だな？」
オリーブ色の瞳に熱を込めて、菊の手の甲に唇を落とすロマーノは絵になる。日本とイタリアはポカンとその光景を眺めていたが、今度は薔薇の匂いを辺りに漂わせたフランスが現れた。
「おいロマーノ。そんなんじゃまだまだ甘いね。お兄さんなら…こうするよ？」
「わわっ……！！」
フランスは菊の細い腰をグッと引き寄せると何処から出したのか赤い薔薇を1輪差し出した。
「ほら、君はこの赤い薔薇よりも美しい……」
声音がエロい。至近距離であんな台詞を言われれば大体の女性が堕ちる。
しかし目の前の菊はキョトンと目を丸くするだけで頬を染める事も無い。アレ？とフランスを含めた化身達は疑問に首を傾げた。
「……え、嘘でしょ？」
「なんやフランお前でもあかんて事やん！ここは情熱の国親分の出番やで！セニョリータ！」
明るい声と共にフランスの囲いから菊を奪い去ったのはスペインだ。
「親分とフラメンコ踊ってみる？エスコートしたるで？ほんで、疲れたら親分とシエスタせぇへん？」
大きな掌で菊の細い腰を引き寄せ、左右にゆっくりと揺れるスペインに「そりゃチークダンスだろ」と総ツッコミが入る。
スペインの色気のある顔とスタイルは多くの女性を魅了する。さらにこんなにも密着され、菊の腰を官能的に撫でているのだ。堕ちるだろう。と誰もが思った。
「恐れ入りますすいません。私ダンスは苦手なんです」
頬を染めるどころか、眉を下げて申し訳無さそうにする菊にスペインの心は傷ついた。
「……なんや悲しいわ」
「まぁまぁ仕方ないって…ッ」
落ち込むスペインの肩にニヨニヨと嬉しそうなフランスが手を置いて頷いている。
遠くではゴウリーに抱き締められているイギリスをアメリカとロシアが楽しそうに眺め、中国は香港と台湾に菓子を勧めていた。
夫々自由過ぎる。
日本は人知れず小さく嘆息すると、マカロニ兄弟の間で眉を下げている菊に向き直った。
「あの、菊さん。貴女は此処に来るまでの記憶がありますか？」
日本の問い掛けに菊は漸く事の次第を打ち明け始めた。
平行した世界がある事、魔界の事、此処にいる化身達がその世界にモンスターとして存在している事、秘書とゴウリーが突然城の庭に落ちて来た事。
信じ難い内容に日本を含めた化身達は驚きの色を隠せないでいる。だが、現に目の前の菊には角と尻尾があるし、なんの仕掛けも無いのに指先に紫色の炎を出されては信じる他無い。
イギリスの摩訶不思議な魔法で異世界から召喚されてしまったと思えば少なからず納得出来そうだ。
しかし、ゴウリーと共に飛ばされた秘書が魔界に残ったままで悪魔の菊がこの場に来てしまった事は頂けない。
菊にだって家族や仲間が居て心配しているだろうし、我が国民であり我が子が今どうなっているのか不安でしかない日本は事の発端者であるイギリスを頼るしか道は無いと頷いた。
「成程…。向こうの世界の方々が貴女を心配しているでしょう。早く戻れるようにしないと…、あの菊さん？」
「はい、何でしょう？」
「その…ぷらいばしーな事とは思うのですが、向こうの世界で御家族はお有りで？」
言葉を慎重に選びながら日本は問い掛けた。こんな状況下で更に不安を煽る問い掛けだけに、慎重にならざるを得ない。
菊は小さく笑みを作るとコクリと頷いた。
「えぇ。家族もおりますし、夫もおりますよ。勿論友人も」
「ですよね。えぇえぇ、旦那様やご友人はさぞかしご心配で……て？？あれ？？？」
そうだろう、そうだろう。と大いに同情しながら日本が縦に頷いていたが、ふとあるワードに気づき言葉を紡ぎきれないで固まる。
「え？ちょっと待って菊ちゃん既婚者？？？」
そこは流石ラテン。フランスは目を丸くして菊に問い掛けた。
「えぇ既婚者です」
「……ッ！！？？」
何でもない事のように応えた菊にその場に居たラテン系が全員突っ伏した。
「ちょ、ちょっと待って下さい…。貴方が向こうの世界の私だとしたらお相手は…？」
「私の旦那様は魔王様なんです」
うふふ。と音が付きそうな程、嬉しそうに笑みを浮かべる菊の返答に日本の頬が引き攣る。
なんだって魔王と？いやいや待ってほしい。という事は菊は妃という事になる…。
「Hey！魔王だって！？」
地獄耳なのか何なのかイギリスを揶揄って傍観していたアメリカがコーラ片手に菊の背後に仁王立ちしていた。中々の威圧感を纏っている。
「アメリカさん……」
面倒なのが来た。と顔には出さずに苦笑してみせた日本にアメリカは何を勘違いしたのか胸を張って目を輝かせた。
「大丈夫なんだぞ日本！安保なんて関係なくHEROが悪を倒すんだゾ！」
Fooooo!!と1人盛り上がるアメリカに菊は一瞬目を丸くしたが、直ぐに笑みを浮かべた。魔界の狼男であるアルフレッドの性格そのままで少しばかり驚いたのだ。
「あらやだ！？菊ちゃんが大変だわ！祖国と言えどMy Friendに手を出そうってんならこのゴウリーちゃんが黙ってないわよ！！！」
「！？」
意気込むアメリカの背後から野太い声が響いたと同時に目の前には巨体ゴリラことゴウリーが菊を背に庇うように立ち塞がる。
ゴウリーの身体からは闘気のオーラが色濃く立ち上り、筋肉量も倍増しになっている気がする。
「…さあ、アタシが相手よん」
オネェ言葉がよりゴウリーの不気味さを際立たせ、アメリカは思わず一歩足を引いた。
「わぁ！もしかしてアメリカ君怖いの？」
「！」
そこへロシアの心底楽しそうな声が聞こえる。
いつの間に来たんだとアメリカは不愉快に眉根を寄せ、ロシアをギッと睨んだ。
「Hey…、怖いだって？誰がだい？」
「誰って、自分の事じゃない」
ニコニコと笑んではいるが目が笑っていないロシアとドス黒いオーラを纏う無表情のアメリカ。冷戦再びという2人の空気感にゴウリーを初め、一同は2人の半径3メートルは距離をとった。
しかし、日本はそんな空気感など無視するように溜息をつくとポケットからスマホを取り出す。
「菊さん、こうしていても時間ばかりが過ぎてしまうだけですので、今夜は私の泊まるホテルに部屋をお取りします。其方へ移動をお願いできますか？」
日本は眉を下げて菊に提案する。
もう1時間もすれば会議終了となる。確か、この次の予定ではこの部屋に清掃が入り、大統領や首相等、国の重鎮達がスプロール化する都市の活性化を議題に真面目でちゃんとした国際会議を始める筈だ。延長しただけでなく、この騒ぎがプラスされればもう間も無く我慢の限界に達したドイツの怒号でお開きとなるのは明白である。
「…すみません、宜しくお願い致します」
菊は収集のつかない事態に眉を下げて日本にこの後の処遇を頼むことにした。
「では手配をして来ますので、この場から移動しないで下さいね」
それだけ念を押すと日本は会議室に隣接する控え室へと急ぎ足で向かう。
菊は日本の背中を見送ると小さく嘆息し、未だジリジリと間合いを詰めているアメリカとロシアを見やった。

ーーバァアアン！！！

冷戦状態な2人が睨み合う空間を割くように会議室の大きな扉が勢い良く開け放たれる。
「！」
「何だ？まだ終わってなかったのか？まぁ良いか」
勿論開け放ったのは会議に参加していないプロイセンで、会議終了時刻になっても談話室に誰も来ない事に痺れを切らして乗り込んできたのだ。
「俺様参上！！一人楽し過ぎる時間に飽きたぜー！メシ行こうぜ日本とヴェストとイタちゃんとお兄様！！」
「…兄さ、兄貴……」
「「「……」」」
静まり返る会議室でドイツが頭を抱え「また面倒なのが増えた…」と呟いている。怒号を浴びせる前に興が削がれたとも言える。

「…ギルベルト、くん？」
ポツリと呟いた菊の言葉に誰も気づない。菊は魔界の王たるギルベルトと瓜二つであるプロイセンに驚いたと同時に、どうしようも無く不安な気持ちが押し寄せて来てしまった。
ーー《菊……、ずっと一緒だ。》
「……ッ」
逢いたい。次元を超えて離れてしまうだなんて考えもしなかった。
菊はギュッと掌と唇を噛み締めて不安な気持ちを押さえ込んだ。
「あら？プロイセン君来たんですね」
菊の後方から日本の少しトーンの高い声が響いた。その声音が菊には嬉しそうに聞こえる。
プロイセンは輝かしい笑みを浮かべて日本の元に足を向ける。
「よう！にほーん！メシ行こうぜ！！あと昨日のゲームの続きやるぞー！！」
「またですか？貴方直ぐ私に八つ当たりするし爺相手に3時コースは御遠慮下さい。今日は寝ます」
「……ッ」
軽口を叩き合う日本とプロイセンの間で菊は切なさに苦しくなった。一歩一歩革靴の底の鳴る音がやけに大きく聞こえる。
何時もあの朝焼けの美しい瞳は真っ直ぐ菊だけに注がれて、嬉しそうな笑みも優しい笑みも菊だけのものだった。それが今は菊を視界に入れているのかも分からない程、自分は空気となっていたのだ。更に胸が重く苦しくなる。
あの人はギルベルトと瓜二つであっても、菊の知っているギルベルトでは無い。日本が【プロイセン】と呼んでいたのだ。ギルベルトじゃない。彼は別人だ。
菊は頭で必死に繰り返し理解させた。
「……ん？おいなんだ？誰だよその女？」
「！」
日本と瓜二つの女が居る事にプロイセンの眉間に皺が寄る。しかもだ、日本(恋人)の側に知らない女が居るのはどうも面白くない。
プロイセンからの僅かに冷たい視線を受けた菊は身を固くした。
「此方の方は…」
日本が菊の隣に並び立った所で自己紹介を促された事に気づいた菊は慌てて居住まいを正した。
「…ぁ、初めまして。私は菊と申します」
「……」
ペコリと頭を軽く下げた菊にプロイセンは目を丸くした。その容姿に名前まで日本と似ているのだ。日本の女装と言われても分からない程に。
「…ッ、は？え？え…ッとハジメマシテ？？？」
菊に釣られるようにプロイセンも会釈を返したが、ニコニコと此方を見上げる日本の腕をとり、状況の説明を乞う。
「どうなってんだ？これ誰だよ？コスプレか？」
「えーとこの方はですね、イギリスさんのほあたの影響を受けて平行世界というか異次元というか…まあそんな感じの所から召喚されてしまった私の女性バージョンです。ゴウリーさんは戻って来られたのですが、私の秘書の代わりに彼女が此処に……？代わり？なんですかね？すいません、私もまだ少し整理が追い付かなくて」
「なんだよ、眉毛の呪いか？ってかお前女でも男でも身長ほとんど変わってなくね？」
「五月蝿いですね……」
ケセセと皮肉に笑うプロイセンに日本はモヤモヤとした複雑な気持ちになる。
女バージョンの日本。ナルシストかと言われてしまうかもしれないが、菊は魅力的だ。いくら自分とは言え、女性なのだ。もしプロイセンが女の日本が良いと思っていたら…？突如そんな嫌な考えに陥りそうになり、日本は「馬鹿馬鹿しい」と自己嫌悪に大きく息を吐いた。
「おい、日本？急に考え込んでなんだよ？」
揶揄いの口調だが、その瞳は優しく労りの気持ちが滲み出ていた。日本はホッと安堵感を覚えたが、やはり気になる事はそのままにしておけない精神が顔を覗かせる。
「…あの、プロイセン君はあの方を見てそれだけしか思わなかったんですか？」
日本はプロイセンの腕を引き寄せて小声で話掛けた。視界の先では菊がイタリア兄弟と話に花を咲かせているようだ。
「あ？あの女？他に何かあんのか？…んー、あ！日本に長髪の鬘被せたら双子の姉妹だって言われても分かんねえな！！」
「……そ、そうですか」
さっきとは違う複雑な気持ちになりながらも、日本は今度こそ心から安堵した。
もし、このもう1人の自分にプロイセンが惹かれてしまったらどうしようと焦燥感に煽られたが、何も心配無かったようだ。こんな気持ちだったのだとプロイセンに知られたらきっと「俺様を信用出来ねえってのか？」と怒られるに違いない。日本は胸の内に秘めておこうと誓った。

「兎に角だ。この会場からそろそろ撤収せねばならん。日本、彼女をホテルまで頼めるだろうか？俺も引継ぎが終わり次第其方に向かう。改めて今後の事を話し合おう」
「ドイツさん…」
ドイツの有難い言葉に日本は目を輝かせて胸中で拝んだ。
そして菊は魔界に居るルードヴィッヒと同じ統率力を発揮するドイツに感嘆している。
「ケセセー！流石俺様の弟だぜー！じゃ、早速移動しようぜ」
プロイセンが誇らしげに笑うと、未だついていけてないメンバーに声を上げて移動を促した。
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		<dc:date>2020-04-11T12:47:34+09:00</dc:date>
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		<title>7</title>

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アントーニョは面倒な事になったと笑顔…</description>
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			<![CDATA[ 
アントーニョは面倒な事になったと笑顔から一変不機嫌に眉を寄せて騒ぎの元へと戻る。
それに気づいたゴウリーが頬を薔薇色に染め、嬉々としてアントーニョを迎えた。
「おかえりアントーニョちゃん！突然だけど私達の披露宴でスピーチお願いね！」
なんでやねん。笑いもんにされたぁ無いわボケ。と言いたい所だが、今言ってしまえばややこしい事になるのは明白だったので我慢する。
「だーかーらー！！人の話をちゃんと聞け！！俺はお前みたいなゲテモノゴリラと結婚する趣味は無えって言ってんだろうが！！！」
ゲテモノにゴリラが付いた。
アーサーの命名に思わず同感しそうになるが、生唾と共にゴクリと喉の奥に飲み込んだ。アントーニョには役目があるのだ。面倒な事この上ない役目が。
ハァと大きく嘆息すると、ゴウリーの額に杖（星の先の尖った所）を押し付けて天使とは思えない悪魔の様な顔を晒すアーサーに待ったを掛ける。
勿論、抗議をしている途中で邪魔されては自分の意思が1mmも伝わらない。アーサーは忌々しいとばかりにギロッとアントーニョを睨み据えた。
「まぁ落ち着きぃ。お前ホンマに天使かいな？眉毛がえらい事になってんで？怖いわぁ」
「眉毛じゃなくて目付きだろうが！！」
唾を飛ばす勢いでアーサーが怒鳴るとこちらの耳が痛い。
「どうでもええけど、もう解散してなー。ウチの魔王様がご立腹やねん。めんどいわー」
「あらやだ！ギルちゃんオコなの？ま、丁度いいわ！」
ゴウリーはアーサーの腕に自分のデカい腕を無理矢理絡ませると何やら意気込んだ。
「は、離せ！この汚ねえ腕を離せ！クソッ！！」
「やぁだ！そんなに照れなくても良いのよん！」
青ざめて最早涙目のアーサーは必死に抵抗する。デカい腕を抓ったり殴ったりと試みているが、この剛腕ビクともしない。傷も付かないなんて恐れ入る。
「今から式場予約に行きましょう！アーサーちゃんは天使なんでしょ？なら天界に行って、ご家族や上司さん達にもちゃんとご挨拶しなきゃね！ムフフ！ゴウリー緊張しちゃう！！」
「…や、やめろぉおおおおおおお！！！！」
不気味に笑むゴウリーにアーサーは残り少ない気力を振り絞って叫んだ。冗談じゃない。なんでこんなバケモノを上に連れ帰らにゃならんのだと胸中では言いたい事が駆け巡る。
そんな2人を前にアントーニョはそれはそれでギルベルトの機嫌を損ねると思い悩む。個人的にアーサーが結婚しようが関係ない。だが、アーサーは会食に参加している天界代表である。アーサー以外の部外者を全員外に連れ出すのがアントーニョの受けた命令なのだ。よって、この場からアーサーに出て行かれては困るのだ。
「チッ……ちょい待ちぃ。式場行くんは後にしてくれへん？今は公務の最中やろ？親分は会食に関係無い奴等を連れ出さなアカンねん。せやからゴリラも外出てくれへん？」
「あらん、お仕事なら仕方ないわね。分かったわ、外で待つわね。あとゴリラじゃなくてゴウリーよ。アントーニョちゃんのお茶目さん」
意外にもすんなり言うことを聞いてくれたゴウリーに驚くも、殴り付けて外に追い出す手間が省けたので良しとする。アントーニョはロヴィーノとアルフレッド、ゴースト達にも撤退命令を告げた。
そんなアントーニョにアーサーは要らぬ借りを作ってしまった気分になり、苦虫を噛み潰したような表情で拳を握り締める。
「…ッ、礼は言わねえからな」
「は？なんの？どうでもええけど、帰りにあのゴリラをちゃんと持って帰ってや？」
「なっ…！？なんでだよ！？持って帰らねぇぞ！！」
少しだけしんみりした気持ちを返してもらいたいとばかりにアーサーはアントーニョを睨んだ。
持って帰るなんてとんでも無い。天界の爺様方が父なる全能神の元に召されたらどうしてくれる。
そうこう葛藤している内に、ゴウリーは「あっ！そうだわ！菊ちゃん聞いてちょうだい！」と野太い声を上げて菊の元へとドシンドシンと走って行った。
「……ッ！」
アーサーは眉間を指先で揉み解しながら何とか精神崩壊しそうな気持ちを堪える。
肩を震わせるアーサーを見遣り、アントーニョは大仰な溜息を吐いた。
「なんやねん、もっと喜べや。これで眉毛も既婚者の仲間入りやんけ」
「おっ！？お前なぁ…ッ！！この世界のどこにあんなゲテモノを嫁にって薦められて喜ぶ狂人が居るってんだよ！？しかもアレ男だろうが！？俺はノンケなんだ！！！」
巫山戯んな！！とアーサーは再度沸き立つ怒りそのままにアントーニョを怒鳴りつける。
対するアントーニョは小指を右耳の穴に突っ込み「やかましぃ眉毛やのぅ」とウザそうに眉を顰めていた。適当な態度のアントーニョにブチンッと頭の中で何かがキレる音がする。アーサーは口の端を吊り上げ…いや、引き攣らせた。
「……ッ！！は、はは！OKOK！一先ず結婚どうのって話は後回しだ……先ずはやらなきゃならねえ事があるからな」
「…？」
不穏に笑うアーサーにアントーニョは胡乱気な目を向ける。
「テメェに礼節ってもんを教えこんでやるぜ！！このカボチャ野郎が！！！！」
「！！」
突然殴り掛かってきたアーサーの拳を瞬時に避けて、アントーニョは数メートル後方に飛び退いた。
大変面倒な役目を押し付けられ、言いたい事も言えずシエスタも不十分で更に先に天敵である相手から攻撃を仕掛けられた事にブチッと長い筈の堪忍袋の緒がキレたアントーニョは表情を削ぎ落とし、翡翠の瞳を冷たく眇める。
「…その喧嘩高うつくで？…あと俺はトマトの方が好きや。覚えとけ…このクソ眉毛がぁあああ！！」
ダッと床を蹴り、アーサーに向かってアントーニョが跳躍すると、頭部目掛けて蹴りの体制に入った。
当然アーサーは右腕でガードし、忌々しそうにアントーニョの足を薙ぎ払う。


突然起きた乱闘に周りの者達は一瞬唖然としたが、サッと顔色を変えて2人の周囲に集まり出す。
アルフレッドは骨付き肉を手にテーブルに座ったままで、ロヴィーノはテーブルの下でゴースト達を足元に、キレたアントーニョの姿に驚き唖然と固まっていた。
いつの間にか復活した秘書Aはスマホのカメラで菊を盗撮している。こいつは後でシメる。とギルベルトが今後の予定に組み込んだ。
ゴウリーは菊の手を握ったまま目を丸くし、菊は場内乱闘にアワアワと慌てている。
「えっ！？ど、どうしましょう！？アーサーさんには記憶喪失になってもらうしか無いですかね！？ですよね！？もうそうしましょうか！！」
「はあ！？記憶喪失ですって！？アンタの頭の中がどうしましょうってレベルなんだけど！？」
記憶喪失と何とも恐ろしい単語を吐く菊にゴウリーはギョッとする。それでもゴウリーの言葉が届いていないのか尚もテンパる菊にギルベルトは待ったを掛けた。
「落ち着け菊。俺様が行く」
「ギルベルト君……ッ」
「やだギルちゃんがカッコイイわ！」
ギルベルトは肩の装飾を外すと、指先をボキボキ鳴らしながら乱闘する2人に近付く。
アーサーもアントーニョも漏れ出る殺気が冗談にしては剣呑である。
「……チッ」
ギルベルトは舌打ちすると盛大に眉を顰めた時だった。
「ラチがあかねぇ！いっそテメェの存在ごとこの世界から消えやがれっ！……ほあたっ！！」
「！」
アーサーが青筋を浮かべ、目を血走らせたまま星付きの杖をアントーニョに向けて呪文を唱えた刹那、星から眩しい閃光が飛び出した。
咄嗟の事にアントーニョは身を交わして難を逃れたが、ソレは背後に迫っていたギルベルトに向かう。
「！？ーークソッ！！」
ギルベルトも間一髪で横に逸れたが、そこでハッとする。
「やべっ！！菊！！！」
そう。背後には菊が居るのだ。振り返ったギルベルトはしまったと目を見開いた。
息を呑む菊とゴウリーの元で閃光がゴウリーのデカい腕に当たる。
「ーーッ！？」
ーーカッ！！
ーーーバチンッ！！！
「あん！痛ッ！？へっ！？…ッウォオオオオギャーッ！！！」
そのまま眩しい光がパッと広がると、悍ましいゴウリーの悲鳴(？)が響き渡る。あまりの眩しさに周りの者は目を開けていられない。
「……ッ！」

漸く光が収まり、ギルベルトが目を開けた時には、菊とゴウリーの居た場所には誰も居なかった。
「……」
ギルベルトはフラフラと足を進めながら、あたり一帯を見渡す。だが、菊の姿を捉える事はできなかった。
「……ッ、菊？菊、何処だ……？き、きく？ーー菊ッッ！！！！」
アーサーもまさか自分の魔法が魔界の妃である菊に当たるとは思わず放心した。
誰もが信じられない出来事に呆然としている。
しかしその中で行動が早かったのは自他共に認めるストーカーであるゴースト達。ゴースト達は空中に浮遊すると、天井裏や城の外をくまなく捜し始める。
「……ギルちゃん」
アントーニョは呆然と立ちす尽くすギルベルトの背中にそっと手を掛ける。
「ーー、」
ボソボソと小さく呟いているギルベルトにアントーニョは眉を寄せた。
アントーニョが再度ギルベルトの名を呼ぼうとした瞬間、ギルベルトから赤黒い瘴気が上がりだした。その瘴気を認識したと同時に、見えぬ何かにバチンッと凄まじい勢いで弾き飛ばされてしまう。
「ーーグァッ！！！」
「！、トーニョ！！！」
壁に穴を開けて床に崩れ落ちたアントーニョは意識が無いのかピクリとも動かない。そんなアントーニョにロヴィーノが悲鳴混じりに叫ぶが、アントーニョからの返事は返らなかった。
「……ッ、おい…？アントーニョ？……おいッ！！」
ロヴィーノにとって育ての親であり、兄でもある太陽の様なアントーニョはいつも強く逞しく守ってくれていた。どんなに苦しくても辛くても笑い、弱り切った姿を見た事が無いのに……、今、アントーニョはロヴィーノの目の前で床に伏しピクリとも動かない。
一体ギルベルトが何をしたのか分からなかった。ただ、ギルベルトから赤黒い瘴気が上がった事しか分からない。
ロヴィーノはテーブルの下から飛び出すと、横たわるアントーニョの身体を揺さぶった。
「おい！おい！！起きろこんちくしょうめ！！……ッアントーニョ！！！」
固く閉じられた瞼は開かない。太陽のような笑顔を見せてもくれない。ロヴィーノは震える唇を噛み締めた。
ロヴィーノの隣にアルフレッドが直ぐに現れ、アントーニョの胸元に耳を当てて目を閉じている。
アルフレッドは上体を起こすと険しい表情でロヴィーノを見つめる。
「……おぃ、どうなんだよ…ッ」
「よく聞くんだロヴィーノ」
アルフレッドのその不穏な雰囲気に思わずゴクリと喉がなった。
「落ち着くんだゾ。…大丈夫、アントーニョはただ寝てるだけさ」
「…………は？」

ただ寝てるだけ？

ロヴィーノは拍子抜けした様にポカンとした。アルフレッドの神妙な顔にもしかして死んでしまったのでは？と嫌な考えが過ぎった自分が恥ずかしくなる。
だが、生きていて良かったと安堵感から眉間のシワを緩めた。
大袈裟なアルフレッドを殴り飛ばしてやりたい衝動に駆られたが、返り討ちにあうのでやめておく。
アルフレッドはそんなロヴィーノの心情にお構いなく「それよりも……」と未だ立ち尽くし、沈黙したままのギルベルトを見つめた。
ロヴィーノもいつに無いギルベルトの雰囲気に恐怖を覚える。
「俺の見解なんだけどさ、ギルベルト、キレちゃってるみたいだね」
「…は？……はあ！？誰がどう見てもそうとしか思えねえだろうが！コノヤロウ！！」
目の前で最愛の妻を消されたのだ。キレない方が可笑しい。しかもギルベルトは魔界でもかなり有名な愛妻家である。
そうなると、事の発端であるアーサーが危ない。
アルフレッドはどうしたら良いのか分からないのか、呆然と自分の杖を見つめるアーサーを見遣った。
「ロヴィーノ、俺たちは今こそHEROになる時なんだゾ！俺はあの眉毛を此処から連れ出すからギルベルトの事頼んだよ！君なら出来るさ！」
「……チギッ！？いやいやいやいや！何でだよ！？まだベッラのナンパに成功した事もねえのに此処で死ねるか！俺は絶対ベッラとデートするんだ！ってか魔界でHEROとか寝惚けてんのか！？俺は嫌だ！他の誰かに頼めよ！…ッ良い笑顔でこっち見んなカッツォ！！！」
ロヴィーノが猛抗議をしていた時だ、突然ザワリと空間が張り詰める。目の前のアルフレッドは言い知れぬ恐怖に目を見開いて冷や汗が流れ、尖っている筈の耳は横に垂れている。ロヴィーノは再び襲う緊張感に身を固くした。
「……ッァァアアアアアァアアアアアア！！」
「「「ーーッ！？」」」
ハッとした時にはギルベルトの姿が消え、アーサーの首を片手で締め上げている。
「ア…、アーサー！！！！」
アルフレッドが悲鳴に似た声で名を叫ぶ。
飛び出そうとしたアルフレッドをロヴィーノが肩を掴む事で阻止すると、アルフレッドはギッと睨み据えてくる。当然ながらその瞳には批難の色が濃い。ロヴィーノはオリーブ色の瞳で真っ直ぐ見つめ返した。
「落ち着けコノヤロー。今向かって行ったところでトーニョの二の舞だぞ」
「分かってるよ！でもどうすれば良いんだ！！」
悔しげに眉根を寄せるアルフレッドにロヴィーノは「一かバチか…一言叫べば良い」と不敵に笑んだ。
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		<title>6</title>

		<description>高級感漂うレストラン。
天井高くから吊…</description>
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			<![CDATA[ 高級感漂うレストラン。
天井高くから吊り下がる大きなシャンデリア、白いテーブルクロスの上に金色の燭台と赤い薔薇。そして豪華な食事の数々。
ギルベルトは久しぶりの外食だというのに、どこか複雑そうな表情を浮かべていた。
それもその筈、この外食は公務だからだ。
どうせ外食するなら愛する妻、若しくは可愛い弟とが良かったのだが仕事なのだから仕方ない。
今回は妻である菊も同席するのだから今までより退屈という訳では無いのだが、自分の妻をありとあらゆる視線に晒すのが嫌なのだ。
特にこの天界からの外交官には会わせたくなかった。
「今度良い茶葉が手に入ったら、直ぐにお届けしますよ」
キラキラ輝く金髪に翡翠の瞳。高い鼻筋、白い肌。紳士というよりまるで御伽噺の王子様の様に微笑む外交官。
「まあ、それは楽しみですね。有難う御座います」
艶やかで黒く長い髪が背中に流れ、小振りな赤い唇に低いが形の綺麗な鼻。大きな琥珀の瞳と物腰柔らかな微笑みを浮かべる妖艶な己の妻。
「魔王様にも是非ご賞味頂きたい」
妻に向けるのとは違う冷たい翡翠の瞳が此方を見遣る。
ギルベルトは赤の瞳に苛立ちを込めて皮肉に片方の口端を釣り上げた。
「…それは是非と言いたいが、俺様は珈琲派でな。鼻につく匂いは吐き気がする」
途端に外交官の翡翠の瞳が剣呑に光る。
「…ハハ。これは失礼しました。茶葉は優雅な妃様にこそ相応しいですね。私には珈琲はどうも…、泥水のようで臭くて敵いませんよ」
「ぁあﾞ？」
瞳を眇めて睨み合う赤と緑。
菊は大きく溜息をつきたくなるが、何とか耐える。どうも魔王であるギルベルトと天界の外交官、アーサー・カークランドは馬が合わないようだ。
そもそも魔界と天界なのだから合わなくて当然である。
ギルベルトの祖父（先先代魔王）がまだ若い時代、人間界を挟んで戦争していたが、既に過去の事。
今は魔界と天界は共存する関係になっていた。
天界との半年に一度の会食は大事な公務の１つ。
魔界からの外交官として天界にはルートヴィッヒが派遣されている。
天界から魔界へと派遣されたのが、この天使職のアーサー・カークランド。
ギルベルトとの結婚式の際には天界からも上官クラスが多く祝辞にやって来た中にアーサーが居り、愛想良く笑う菊に気を良くしたようで(というか人妻を厭らしい目で見ている)、何かと天界から贈り物をしてくる。それは大きな薔薇の花束だったり、茶葉だったり、真っ黒な炭(即処分)であったりと様々だ。
「「……」」
睨み合いが続く２人にどうしたものかと菊が困り果てた所でバタバタと扉の向こうから足音が響き渡る。
「あ？なんだ？」
「ケッ、魔界の高級レストランとやらも従業員の育ちの悪さは隠せねぇな」
騒音に眉を顰めるギルベルトにアーサーがここぞとばかりに皮肉を存分に込めて…というか、皮肉しか無い台詞を投げつけて鼻で笑った。
カチンと来たギルベルトが手元のフォークを握り締めた所で、両開きの扉が音を立てて開かれる。あろう事か扉は無事に開く役目を終えるどころか衝撃で無惨に吹き飛んだ。
「ッ！？」
「アーサァア！！！見つけたんだぞー！！！」
金の髪に碧色の瞳、茶色い犬の様な耳とフサフサの尻尾を持つ狼男、アルフレッドが目に涙を溜めてアーサーを睨んだ。
「ア、アル！？」
「あらまあ…」
まさか騒音の主がアルフレッドとは思わずアーサーは目を大きく見開いて驚いた。
ギルベルトはポカンと口を開けて固まり、菊は口元を指先で隠して驚いた声を上げる。
「もう！どうにかしてくれよ！！君なら何とか出来るだろう！？駄目なら天界で隔離してくれないかい！？」
「ッ！？ちょっ…！アル！…首！！…ちぎれ…ッ！」
アーサーの前まで走って来ると、大きな手でアーサーの肩を掴み、何事かを訴えながら激しく揺さぶった。
前後に揺さぶられるアーサーの頭が飛んでいきそうだ。
「ケセセ、良いぞ！そのまま捥いじまえ！」
「ギルベルト君！何て事を…！外交問題ですよ！」
囃し立てるギルベルトに菊はギョッとし、天界からの抗議に青褪める。
ギルベルトは「まあ落ち着けって」と、あたふたする菊の指先を絡め取って握り込むと呑気に宣う。
「何を呑気な！」
「いやいや、アレも一種の戯れ？んー、愛情表現ってやつか？」
天井のシャンデリアを見上げてギルベルトが放つ台詞に菊の目が見開いた。
「あ、愛情表現……？」
「そーそー。昔は兄弟みてぇに育ったらしいぜ？デカくなったアルが魔界に移住しちまって、そんで、眉毛が外交のついでにアルの世話焼きに来てんだ」
ギルベルトの説明に何と稀な関係かと菊が目を丸くする。遠くで「眉毛って聞こえてんだよ！クソイ〇ポ魔王が！」とスラング混じりの批難が飛んでくるが、ギルベルトはどこ吹く風だ。
「アントーニョにご飯に誘われて行ったらそこは地獄で……ッもう！兎に角！あのバケモノを何とかしてくれよ！！」
「あ？アントーニョだ？ってかバケモノ？」
どうにも穏やかじゃない。
アルフレッドはアーサーの肩を解放すると頭を抱えてその場に蹲る。
尋常じゃないアルフレッドの様子にアーサーが慌ててその隣に膝をついて様子を窺った。
「アル？バケモノって何だ？何があった？」
「何度殴っても、吹っ飛ばしても、埋めても意味が無いんだよ！何回だって真っ赤な分厚い唇で笑いながら復活するんだぞ！！もう限界なんだ！！」
涙目で叫ぶアルフレッドの肩を慰める様に叩き、アーサーはキリッとした表情とは裏腹にニヤけそうになる頬を必死に抑えた。
あの生意気な元弟がやっと、やっと頼って来てくれた。しかも涙ながらにこの兄の存在を頼って来ている。今まで邪険にされて来た事が全て報われていく心地がした。なんて清々しい気分だ。
「俺に任せるんだ。絶対守ってやるからな」
「ア、アーサー…」
２人の世界が作り出されていく片隅ではギルベルトと菊が「バケモノ？」と頭を傾げている。
ここ最近、そんな手強そうなモンスターの情報は入って来ていない。寧ろ何処の地区のモンスターも比較的大人しく生活しており、討伐依頼すら来ていないのだ。
しかも討伐隊で最も腕っ節の強いアルフレッドが泣き言を言う程に強いモンスターなど居たのだろうか？
ギルベルトは眉を顰めて思考するが、とんと覚えが無い。
そんなギルベルトを菊が心配そうに見上げた。
「ギルベルト君？そんなに恐ろしいモンスターが？」
「ん？いや、まだ報告は受けて無えし、そんな強えのが居たら野放しになんかしてねぇし…どっかから迷い込んだのか？」
しかし何処から？と更に唸るギルベルト。眉間に皺を刻んで黙り込んだギルベルトを菊は不安げに見つめた。
「バケモノの特徴はあるか？」
「え、えっと、俺よりも大きくて、力も強くて…あ、あと！オーガに似てるゴリラみたいな変なモンスターさ！」
「オーガに似てるゴリラ？」
アルフレッドの挙げた特徴にアーサーは新種のモンスターなのかと訝しむが、ギルベルトは「あ」と該当してしまうモンスターを浮かべる。
「…マジか、アイツ…マジか」
ギルベルトが心底「やっちまった」感を醸し出しながら息を吐けば、遠くから「Myスウィートォオオオオオ！！！」と野太い咆哮が響いて来た。
「「ッ！？」」
「NOooooo！！！！」
「…やっぱりかよ」
アーサーと菊は息を呑み、アルフレッドは恐怖のあまり悲鳴を上げ、ギルベルトは納得がいったのかゲンナリした表情を浮かべた。

ズオオオオオオッと音がしそうな勢いで部屋の中に駆け込んで来た人物、そう、ゴウリーだ。
堀の深い目元には影が差して真っ黒だが、悍（おぞ）ましい程に碧色の瞳が光っていた。
その眼光がある一点、怯えるアルフレッドの姿を捉えるとニタリと真っ赤な口角が釣り上がった。
「んふふ。見ぃつけたぁ〜My Sweet」
気合いの表れか、いつも以上に赤く塗られて油の様にテカテカする唇から投げキッス（凶器）をお見舞いしている。
「Nooooo!」
「何だこの汚ねえゲテモノ！気持ち悪っ……！」
アルフレッドは白目で卒倒しそうな程叫び、アーサーは素直に罵倒した。
「ちょいと！そこの眉毛！誰がゲテモノよ！！」
アーサーの発言が気に入らなかったのかゴウリーが食ってかかる。
「ぁあ？眉毛は紳士の証だろうが！クソが！！」
「今度はクソ！？巫山戯んじゃ無いわよ！アンタの眉毛このゴウリーちゃんが細くしてやろうか！？ぁあﾞん？」
ゴウリーがゴソゴソと可愛いハート型のポシェットから取り出した物……お手入れ用の剃刀だ。
「ンだと？……ッ上等だこのゲテモノが！！塵にしてやる！！」
凡そ天使とは程遠い凶悪な人相でアーサーは星付きの杖を構えた。
「…ハッ！そうだ！……Hey！アーサーの眉毛が細くなったらきっと君好みのイケメンになるよ！！我ながらNICEな見解だよね！」
「「ッ！？」」
そこでアルフレッドがハッとしてポンと手を打ち、ゴウリーに提案する。
その提案にゴウリーは目を見開き、アーサーはまさかの裏切りにギョッとアルフレッドを振り返った。
傍観を決め込んでいたギルベルトも元とは言え兄を売るアルフレッドに頬が引き攣る。薄情な奴だなと。
「……な、なんですって…！まさか…」
「…ア、アル？」
「想像するんだ！眉毛を無くしたら…君の大好きなイケメンなんだぞ！！」
ゴウリーに向かい、親指を立てて華麗にウィンクを飛ばすアルフレッドにアーサーは若干涙目だ。
ウィンクを飛ばされたゴウリーは己の手にある剃刀とアーサーの眉毛を交互に見て、カッと刮目すると同時に頬を真っ赤に染めた。
「…おい、何だその気味の悪い反応」
アーサーは一歩足が後退する。
「…良いかもしれない。何故その可能性に気付かなかったの！？んもぅ！ゴウリーのお馬鹿ちゃん！」
テヘッとデカい拳で己の頭をゴツンと叩くゴウリーに吐き気を催す一同。だがその中でもアーサーだけは身の危険を産まれて初めて体感していた。
「んふ！どんな形が好み？優しい感じの？それともセクシーな感じ？何ならアタシ好みにお任せしちゃう？良いわよぉ任せな！」
一人で話を進めて決定するゴウリーに、アーサーは恐怖から杖を構えた。
「くっ来るなゲテモノ！！！一歩でも近付いてみろ！お前をこの場から消し去ってやるからな！？」
毛を逆立てる猫の如く、アーサーは引き攣る頬を我慢しながらゴウリーを威嚇した。
そんな威嚇もゴウリーからしたら子猫同然。
「やぁね、震えちゃって可愛いわ」
「なっ……！？ふ、震えてなんかねえよ！！どんな視力してんだコラ！塵にすんぞバカぁ！！！」
図星をつかれたアーサーは弱味を見せまいと必死である。その様子が少し哀れにもなってくる一同。
「…ゴウリーさん、一度座ってお茶でも如何ですか？」
そこに天使の声…いや魔界の妃の声が凛と響いた。緊迫していた空気を和らげる菊にギルベルトは苦笑する。魔界の者でありながら元来争い事を好まない菊らしいと思った。
「そうだな。まあ、落ち着けよお前ら」
ギルベルトも座っていた席に座り直し、テーブルに頬杖をついて唖然とする周りの者達に目を配る。
「……仕方ないわね。菊とギルちゃんが言うならゴウリーちゃんもお茶会に参加してあげるわ」
「いや、茶会じゃねえし。ゲテモノは帰れよ」
はぁと大きなため息をついて、肩を竦めるゴウリーが空いていた適当な席に座る。そこはアーサーの席だ。
「……おいコラ」
思わずアーサーはゴウリーが座った椅子の脚を蹴る。
するとゴウリーは何故か頬を赤く染めてアーサーを見つめてきた。ビクッとアーサーの肩が跳ねる。
「やだ、早く帰ろうって催促なのん？こっちでもツンデレしちゃうのね。あっちだと面倒臭い子とか思ってたけど、見方を変えたら可愛いじゃない！！」
訳の分からない事を1人でブツブツ言うゴウリーにアルフレッドは快活な笑みを浮かべた。ゴウリーの隣に椅子を引いて持ってくるとそこに座り、アーサーに声を掛ける。
「アーサー良かったじゃないか！ずっと独身貴族だったけど、君に良い伴侶が見つかって嬉しいんだゾ！！式はいつだい？」
「アルゥウウウウウ！？！？」
「いやん！アルちゃんったら、気が早いんだから！アタシは今から挙式でも良いんだけどね！でもそうよね！善は急げって言うじゃない？そうと決まればウェディングドレス選びに行かなくっちゃ！！」
「や、やめろォおお！！！」
アルフレッドの裏切りにアーサーは血の涙を流す勢いで泣き叫んだ。
しかもだ、結婚ルートがトントン拍子にすすんでいくでは無いか。人の話を聞いて欲しい。何故こうなった。
またギャーギャー騒ぎ出した3人を前に、ギルベルトは興味を無くして目の前の珈琲を飲み、菊は「外交問題…でもゴウリーさんは人間だから魔界とは関係無いけど……ああそうです！此処は魔界…」等と青い顔をしていた。
そこでパシャッと聞こえたシャッター音にギルベルトはゲンナリした顔を晒す。このシャッター音が聞こえたという事はだ、奴が居る。
ーーゴッゴン！！
〈あっ、ちょっと…痛ッ！？痛い！何すんですか！？毎回毎回同じ所狙って来てッ痛い！！〉
ーーガンッ！ゴッ！！
「……次から次へと」
聞こえて来たのは争っている様子の例の変態コンビだ。しかも犬猿の仲の方の。
ギルベルトは大きく嘆息すると、両開き扉に掌を翳して、クルッと返したのと同時に勢い良く扉が開いた。
「ーーッどゎああ！？！？」
扉から身を投げ出すように飛び込んだのは秘書Ａと、黄色いゴーストのザコだ。
突然の乱入者に菊も、騒いでいた3人も驚いた様に扉で転がる者を見下ろした。
ザコは慌てて空中に浮遊すると、手にしていた小さなハンマーで秘書Ａのカメラをゴシャッと粉砕し、慣れたように菊の背中に隠れる。
「……ッカ、カメラァアアア！！！！」
粉々になったカメラの残骸を前に床に伏したまま秘書Ａは叫んだ。煩い程に。
ギルベルトは隣に座る菊の背後に隠れてニヨニヨしているゴーストに嘆息した。なんでこうもやる事は同じな癖して仲が悪いんだろうと頭を抱えたくなる。
「…おい、お前ら偶には仲良く出来ねぇのか？目的は同じなんだろ？」
「ーーッ！？！？！？」
ギルベルトの発言が天変地異でも起こしたのかという表情でザコが目を真っ白にポカンとしている。なんだこの顔。
するとザコはハッとした様に辺りをキョロキョロと見渡し何かを探している…ように見える。
「……ッ！！！」
探していたと思ったら、今度は短い手先で自分の額辺りをペシッと叩くザコ。何だか既視感が半端ない。
「？、何かお探しですか？」
心配そうに菊がザコに訊ねるとザコは大きく頷いた。
それはお困りでしょうと菊が共に探そうと申し出るも、ザコは左右に頭を振り拒否している。生意気な。
ザコはフンッと意気込むと、顔を紫色に発光させた。突然の顔色の悪さに菊もギルベルトもギョッとする。
目を閉じてうんうん唸っているザコが、短い手をパッと前方に伸ばした瞬間、辺りに白い閃光が走った。
「！？」
ギルベルトは咄嗟に菊の腕を捕まえて抱き込むと、安全な場所である部屋の隅に空間移動する。
光の納まった場所を見遣れば、そこには喜ぶザコともう一体のゴースト、オレンジ色のハゲがいた。おまけにロヴィーノとアントーニョまで片手にトマトを持ってキョトンとした表情で佇んでいたのだ。
「……は？え？」
「なんやの？ここ何処なん？」
キャッキャッと喜びを分かち合うゴースト達の隣で疑問をこぼすアントーニョ。そりゃそうだろう。
どうやらザコは念能力か何かでハゲの居た一帯をココに転送させたようだ。万能ゴーストか。
さっきの何かを探している様子も相棒のハゲの事だった。ザコの相棒は用心棒の為に昨日からロヴィーノに付きっきりだったのだ。しかも意志を伝える為の手段、ホワイトボードはハゲが持っている。不便だと思ったザコは転送能力を使って呼び寄せたのだ。
「……あらやだ！ロヴィーノちゃん！それにアントーニョちゃんじゃなぁい！」
ゴウリーの心臓にまで響く声音にロヴィーノは、ちぎゃあああああああ！？と恐怖に飛び上がり、アントーニョは呑気に手を振って答えている。
「ゴリ…ゴウリーやん！ここで何しとるん？」
「それがねアントーニョちゃん！聞いてちょうだいよぉおお！！」
アントーニョに向けてドスドスと歩み寄るゴウリーにロヴィーノは慌ててその場から逃げ出し、テーブルの下に潜り込んだ。
「どないしたん？」
「どうもこうも！！アタシね！！」
ロヴィーノの反応を他所にアントーニョはゴウリーと世間話をしている。何故平気なんだ！とロヴィーノは胸中でアントーニョを批難した。
「明日結婚式を挙げるのよ！絶対アントーニョちゃんもロヴィーノちゃんも来てね！ゴウリーの綺麗で可愛い姿を見てちょうだい！！」
「……？、なんや突拍子の無い。葬式やのうて結婚式なん？冠婚葬祭の意味分かって言うてんの？それとも寝言なん？」
何とも失礼極まりないアントーニョの返しにゴウリーは気分を害するどろか、ウフンと不気味に笑む。
「やぁね、冠婚葬祭ぐらい分かるわよ！アルちゃんがアーサーちゃんを紹介してくれたのよ！もう目と目が合う瞬間に……を見事に体現したわ。腹の底から溶岩が噴き出しそうになる怒りにも似た感情は恋だったのね…。お互い一目惚れなのよ。ゴウリー幸せで死んじゃいそう！いやーん！！！」
「きっしょ。そのまま墓穴行けや（ボソッ）。そーなん？おめでとうやなぁ。ほんでもあの眉毛も物好きやなぁ。クセもん同士お似合いやと思うで」
のほほんと会話するゴウリーと軽くディスるアントーニョにアーサーは奇声をあげそうになって、紳士たるもの慌てて叫ぶなんて有り得ない！と何とか堪えた。
「……ッ、お、おい待て。何捏造してんだ。一目惚れなんかする訳無いだろう」
頬が引き攣るも我慢して冷静を装うアーサー。
「やだ酷いわ！でもツンデレなのは分かってるの！ゴウリー傷付いてなんか無いから安心して！」
ゴウリーはプレパラートガラスのような心を持つ乙女(？)では無く、鋼の心を持つ乙女(？)である。
「ーーなッ！？ひ、人の話をちゃんと聞けゲテモノが！！！ツンデレじゃなくて本心だってさっきから何遍も言ってんだろおおおおおがァアアアｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞ！！！！！」
アーサーはとうとう紳士の顔をかなぐり捨てると白目を剥いて叫んだ。混乱を極めているのか語尾が奇声になっている。

またギャーギャーと騒ぐ団体。しかも今度はアントーニョまで参戦してゴウリーを囃し立てて遊んでいる。
ギルベルトはテーブルの端に座りまだ残っていた料理を平らげようとするアルフレッドを見遣る。このゴウリーの暴走はアルフレッドの計算によって招かれたものだと予想した。
ゴウリーからのアプローチが上手い具合にアーサーに向き、アルフレッドはさぞ清々した事だろう。料理を口に含みながら笑みを浮かべ、騒ぎに関しては知らぬ顔。テーブルの下に潜り込んで震えるロヴィーノにサラダを差し出してさえいる。サラダは野菜嫌いのアルフレッドがロヴィーノに押し付けているようにも見えるが……。
「……ったく、今じゃなくても良いだろうに」
ギルベルトは思わず溜め息を吐いた。
わざわざこの魔界と天界の会食の日じゃ無くても良いのに。何か問題があれば〈だから魔界は…〉と天界のじぃさんやあの眉毛にネチネチ文句という名の抗議文がギルベルト宛に届くのだ。しかも大層な書簡で。アレは本当に面倒くさい。無視したらしたで更にクレームがくる。あの眉毛から。
また大きく溜め息を吐くと、ギルベルトは未だ騒ぎの真ん中で笑うアントーニョを呼び寄せた。
アントーニョはニコニコと笑みを絶やさずに、ギルベルトの呼びかけに頷くと、ひとっ飛びで目の前にやって来る。人の気も知らずに能天気だ。…いや元から能天気だったとギルベルトは胸中で落胆した。
「ギルちゃんなんやの？今オモロい所やねんで？混ざりたいん？」
「誰が混ざるか！それはそうと、お前アルフレッドに何かしたのか？」
ギルベルトはアルフレッドが最初に語っていた《アントーニョにご飯に誘われて行ったらそこは地獄で……ッ》という台詞に違和感を覚えていた。そこに悪友であるアントーニョの名前があったのだ。
アントーニョは最初キョトンとしていたが、アルフレッドに何かしたのか？という問いに納得がいくと、パッと眩しい程の笑みを浮かべた。
「ぁあ！それな親分の妙案やねん！血を流さず、平和的にバケモンから子分を守ってんで！親分凄ない？な？」
隣で話を聞いていた菊は疑問符を浮かべていたが、何か思い当たる事があったのか「なるほど」と頷いている。いや、なるほどじゃない。
「菊？何か知ってんのか？」
「え、えぇ。先日フェリシアーノさんの所でお茶をしたでしょう？あの日、ロヴィーノ君がフェリシアーノさんのお店に伝票のサインを貰いに来たら、ちょうどゴウリーさんと鉢合わせまして…」
そこまでの説明でギルベルトは「なるほど」と思ってしまった。どうせその時にロヴィーノに一目惚れをしてストーカーになったんだろう。
ギルベルトは当時のロヴィーノに心から同情した。女好きなロヴィーノがオンナまがいな化け物しかもマッチョゴリラから追いかけ回されたら夜も眠れなかったに違いない。
「そうやねん。親分がサイン貰わんかったばっかりに可哀想な事してもうたわ……」
はぁ。と溜め息をつくアントーニョ。
「で？その子分を守る為にお前がゴリラにアルフレッドを宛がった訳だな？」
「お！正解！なんや鋭いやんギルちゃん！ゴウリーにな《アルフレッドって可愛い男がもう直ぐしたらココに来るで。お前に会いにな！》って言って頬染めとるゴウリーにアルフレッドを呼び出したってん。どや？平和的やろ？最初は人ン家の床やら壁やら壊しよるから、どつき回して埋めたろ思ってんで」
「お前……」
ギルベルトはアントーニョの発言に言葉を失う。何とも魔界的な発想だが、そのおかげで会食が大惨事だ。菊も隣で言葉を失い青ざめていた。
「ほんでも、あのバケモンが眉毛に行くとはなぁ…、結婚する言うとるし、魔界とはオサラバやん。結果オーライやない？」
勝手に完結させようとするアントーニョにギルベルトは何度目かの溜め息を吐いた。
「兎に角だ。ココは公式な場だからな揉め事は困るんだっての！お前が原因なんだからな！何とかしろよ！」
「えーっ！？なんで親分なん！？理不尽やで！」
ブーブーと文句を言うアントーニョにギルベルトは顳顬に筋を浮かせた。
「ア？理不尽？この世はなぁ！理不尽で出来てんだよ！！そんなに理不尽ってんなら【魔王様からの勅命】って事でちゃんと問題解決しやがれ！！じゃねえとテメェの農園を閉鎖させてやる！！」
「ちょお待ってや！！理不尽以前に職権濫用やで！？信じられへん！」
「うっせえ！あのゴリラとその他諸々全部連れて外に出ろ！！」
ガッと怒りを顕に怒鳴れば、アントーニョは唇を尖らせて「はいはい魔王さんの仰せのままにー」と渋々騒ぎの元へと戻って行った。大事な農園を閉鎖される訳にはいかない。
「本当に大丈夫なんでしょうか…」
「んー。そうだな大丈夫じゃなかった時は殴って記憶喪失にでもしてやろうぜ。あの眉毛をな」
それは私情が混ざってやしないだろうか？と菊は思うも、これも魔界と天界の平穏の為だと思えば、アーサーには記憶喪失になってもらう方が早いと思えた。
そう、多少手荒だとしても平和に問題解決できる。菊は争い事が嫌いなのだ。
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		<title>5</title>

		<description>年がら年中作物が瑞々しく実るカリエド農…</description>
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			<![CDATA[ 年がら年中作物が瑞々しく実るカリエド農園。魔界随一の大農家だ。
今日も今日とて農園はほのぼの平和である。
しかし、平和とは程遠い表情でビクビク過ごす吸血鬼が農園の事務所に居た。まるで何かから怯えるように、小さな物音にも顔を青ざめさせて泣きだしそうになる始末。
デスクの上には未処理のまま置かれた納品伝票や請求書達。
ロヴィーノは懐を抱き締める様に屈むと「お前だけが頼りなんだぞこのヤロー」と一人呟く。
アントーニョは今朝から様子の可笑しな子分に目を瞬かせて観察していた。
いつもの横柄な態度は成りを潜め、煩いくらいスラングを吐き出す声音は小さい。さっきから独り言が多いばかりで仕事が進んでいないのだ。
「なんや？どないしたんロヴィ？」
アントーニョが溜まりかねて眉を下げて尋ねればロヴィーノは蒼い顔でジトリとアントーニョを見上げた。
「そもそも…ッ、トーニョのせいだろうが！！お前がサインさえちゃんと貰っとけば俺はこんなにも恐怖する事が無かったんだ！こんちきしょうめ！！」
鬱憤を撒き散らす様に怒鳴りだしたロヴィーノにアントーニョは朗らかに笑う。
「お、元気そうやなぁ！良かったわぁ。親分体調悪いんか思って心配したんやで？風邪は万病の元言うから気ぃつけなあかんよー」
ニコニコと笑うアントーニョに頬が引き攣る。ダメだ。話が通じない。とロヴィーノは白目を剥いた。
「チギーッ！！もういい！くたばれトーニョこのヤロー！！」
「なん？酷いわぁ。でも元気が一番やもんなぁ」
ニコニコと躱すアントーニョにロヴィーノは大きく舌打ちすると、書類の束に手を伸ばす。

漸く仕事を再開したロヴィーノにうんうんと頷くと、アントーニョも書類の山に手を伸ばした。

＊

そろそろ昼休憩に入ろうかという頃合。
アントーニョは大きく伸びをして、凝り固まった肩関節をバキバキと鳴らす。
アントーニョに倣う様にロヴィーノも眉を顰めて肩を揉み解しながら大きく息を吐いている。
「お疲れさん！昼メシにしよかー」
「おい、トーニョ！あれ食いてえぞ」
「あれ？…ぁあ！アヒージョかいな？ほんなら、オムレツとフランから貰ったバゲットも用意しよか。親分に任せとき！」
ロヴィーノからの要求に大きく頷いたアントーニョ。【あれ】だけで把握するアントーニョにはロヴィーノとの生活の長さが窺える。
ジャックオランタンであるアントーニョはロヴィーノが幼い頃からずっと一緒にいる親代わりであり、兄弟の様な存在でもある。意思の疎通も難儀しないのだ。
「あ、あと生のトマトと白米もな」
アントーニョが席を立ったと同時にロヴィーノから追加されたメニューに身体の動きが止まる。
「へ？トマトは勿論やけど、バゲットやったらあかんの？白米がええのん？」
バゲットがあるのだから白米は不要だろうとアントーニョが目を瞬かせると、ロヴィーノは「どっちも出せよ！」とアントーニョの疑問には答えずに先に席を立って退室してしまう。
ポツリと残されたアントーニョは未だに腰を中途半端に浮かせた状態で目を瞬かせていた。
「え？ほんまどないしたんあの子？」

１人零した疑問は誰も聞いてくれない。

＊

疑問符を浮かべながらも、ちゃんと釜で炊いた白米を準備する。アヒージョにバゲットにトマトのサラダ。
食卓に並ぶ料理を囲むのはアントーニョとロヴィーノの２人だけなのだが…
白米を茶碗によそい、しゃもじでペンペンとよそった白米の頭頂部をならし、アントーニョは目の前のロヴィーノの仕草に釘付けとなっていた。
「…ん？美味いか？」
さっきから自分の懐に喋りかけているのだ。しかもトマトを丸ごと懐に放り込んでおいて、美味いか？と問い掛けてさえいる。
そんな呆然としているアントーニョに気付いたロヴィーノが急に目を吊り上げた。
「チギーッ！何ずっと見てんだよ！気色悪りぃな！さっさとメシ寄越せこの野郎！！」
「えー、酷いわぁ。ほんでもさっきからロヴィはどないしたん？何か抱えとんの？」
山盛り茶碗を手渡しながらアントーニョが問い掛ければ、ロヴィーノは一瞬キョトンとした顔になった後、何か合点がいったのか「言ってなかったか？」と呟いた。
「親分何も聞いてへんで？ずっとご飯の準備しとったんやから」
キッチンに篭りっぱなしだった為、ロヴィーノから何の話も聞いていない。と言うより話しかけてもくれないのだ。理不尽に思う。
ロヴィーノはご飯茶碗をテーブルに置くと、徐にシャツの合わせ目を引っ張り「よし、出て来い」と言うや否や、中からオレンジ色のゴーストがニュルンと出て来た。
「！？、あれ！？何でハゲが此処に…ってか、何でロヴィーの懐で居るん！？」
トマトをムシャムシャと丸齧りするハゲを指差してアントーニョが問えば、ロヴィーノは至極嫌そうな顔で椅子に座り直した。
「コイツは俺のボディーガードだ。バケモンから身を守る為のな」
物騒な台詞にアントーニョは思わず真顔になる。
「…へぇ。バケモンなぁ。何の種族なん？親分がバーンしてドーンして来たるで？」
真顔でバーンだとかドーンと言われても可愛くもない。逆に怖い。
ロヴィーノが頬を痙攣らせながらバゲットを手に取ったところで、地響きのような異音と共に床板がミシミシと音を鳴らした。
「…なんだ？地震か？」
「バーンしてドーンですって！？やれるもんならやってみなさいよおおおおお！！！」
「ちぎゃあああああ！？！？」
突如響き渡った怒号にロヴィーノは恐怖から悲鳴をあげ、ハゲはプラカードを構えた。そしてアントーニョは第三者の声にキョトンとして辺りを見渡している。
「え？何なん？」
アントーニョが辺りを見渡しても人の影が見えない。
さっきのは空耳だろうか？と首を傾げた瞬間、ドゴンッ！！！と食卓テーブルの隣の床板が吹き飛んだ。
「「ッ！？」」
「ドゥアァアリン（ダーリン）！！！」
飛び散り舞う床板の残骸の中、真っ赤な布地を身体に巻き付けた…オーガ…いや喋るゴリラ？いっそバケモノと言い表せた方がしっくりくるモノが現れた。
「ちぎゃぁあ！！ハゲ！アントーニョ！どうにかしろ！この野郎！！」
テーブルの下に避難してガタガタと支柱を握り込むロヴィーノ。その震える手は支柱を揺らし、テーブル全体をガタガタと大きく揺らしている。
「いやん！ダーリンったら恥ずかしがり屋さんね！！ダーリンのゴウリーちゃん参上だっちゃ！うふん、嬉しくて震えてるなんて可愛いわ！！」
「チギッ！？お、おおおおおお帰り下さいませこの野郎！！」
大きな巨体がテーブルの下を覗き込み、目当てのロヴィーノを見つけてニンマリと笑う。
「さあ、ダーリン？ゴウリーちゃんの特性カップケーキは如何？｣
ゴウリーの恐ろしい声音と笑顔にロヴィーノは震える事しか出来ない。辛うじて頭を横にぎこちなく振る事は出来た。
｢え？……あらやだ！ゴウリーちゃんも戴きたいですって！？OK!come on!!」
一言も喋ってないのに会話がドンドン不穏な方向に流れてロヴィーノは言葉を失う。一体どんな聴覚だ。いやこの場合、ゴウリーの妄想が斜め上を行き過ぎているのだ。恐ろしい。
更に顔を寄せて来たゴウリーの厳つい顔にハッとなる。獲物を狩る鋭い眼光と目が合った瞬間、ロヴィーノはどうしようも無い恐怖から絶叫した。
「ーーッち、ちぎゃああああああああああ！？」
ーーズドンッ！！！
「ンゴふぉおッ！？」
痛快な音と共に、巨体な身体がドスンと後ろに倒れた。その顔にはプラカードが突き刺さっている。
アントーニョがポカンと眺める先には、ハゲが顔色を真っ赤にしてロヴィーノを守るように陣取っていた。あのプラカードはハゲのアイテムだ。
「…ぉ、おおおおお！！！良くやったぞこのヤロー！！！ザマァみやがれバケモノが！！ケ・バッレェエエ！！！」
漸く状況を理解したロヴィーノが喜びの声をあげてハゲのツルツルした頭を撫で繰り回しながらバケモノに中指をたてている。その顔があまりにも悪役地味ていてアントーニョは嘆息した。
「ロヴィ？友達と遊ぶんはええけど、友達は選びや？親分将来が心配や」
子分の交友関係にとやかく言うつもりは無いが、あのバケモノみたいなのはちょっと…と思ってしまう。アレは明らかに変態だ。悪友にもフランシスとか言う変態は居るが変態の系統が違う（と思いたい）等と考えが過ぎり、面倒になったアントーニョは思考を放棄した。
「ま、ええねんけど…」
「〜っおま！？よりにもよってアレが友達はねえぞ！！どんな目ぇしてやがんだこの野郎！！！」
チギーッと真っ赤な顔で怒りを露わにするロヴィーノ。
「そうよ！！友達だなんて薄っぺらい関係じゃないのよ！！運命の人よ！ディスティニーよ！！！」
「ちぎゃぁあ！？気色悪りぃぞ！！お黙り下さいこのカマ野郎！！！」
「あん！ツンデレのツンばっかりねん！！つれないわ！」
フンッ！とプラカードを粉砕しながらディスティニーだと宣言したゴウリーにロヴィーノは自分の身体を抱き締めながら必死に抗議する。
そんなロヴィーノに対してゴウリーは唇を尖らせて頬を膨らませた。可愛こぶりっ子のつもりだろうか。不気味である。
アントーニョはその頬を張り飛ばしてやりたい気持ちをグッと耐えて、粉砕されたプラカードを呆然と見つめるハゲの隣に座り込んだ。
「あーぁ、メッチャ粉々やん」
どう足掻いても、粉砕されたプラカードは元に戻せない。ハゲはプルプルと顔を青に染めてアントーニョを見上げる。丸っこい瞳には涙が光っていた。
「あー、泣かんといて？元には戻せへんけど、親分がまた新しいの作ったるさかい、それでもええか？」
瞬間ハゲの顔色は黄色に発光する。どうやら嬉しいようだ。
このプラカードはアントーニョのお手製だ。新調してくれるのだと思うとハゲはアントーニョの頭の上で踊り出した。
「そない嬉しいん？はは。親分頑張るでー！」
ニコニコと穏やかな雰囲気を醸し出していれば、「トーニョこの野郎！！！」と罵倒が飛んで来た。
アントーニョが振り返るといつのまにか壁際にまで追い込まれたロヴィーノがゴウリーを眼前に大泣きしている。
「…あーもー、何なん？平和やったのにぶち壊しやん」
至極残念そうに嘆息しながらも、この大柄な化け物をどうしようかと思考する。
服から覗くゴウリーの筋肉はオーガ級だ。アントーニョよりも2周り…3周りは太いだろう。
「あら？邪魔しようっての？それとも混ざりたいのかしら？3Pなら大歓迎よ…」
化け物はニンマリと微笑む。気色悪い。アントーニョは全身鳥肌に襲われた。
「うーん、取り敢えず親分はちゃんとした女の子の方がええかな。…子分泣かすような化け物は勘弁や」
「……あらん、残念ね」
ボキボキッと指の関節を鳴らすアントーニョとアントーニョに向き直り拳を握り締めたゴウリー。
睨み合う二人の周辺気圧が変動していく。ミシミシと家鳴りが聞こえて、殺気が充満していくのがロヴィーノにもよく分かった。思わず固唾を飲み込んで目の前の光景を見守る。
すると徐にアントーニョが薄ら寒い笑みを浮かべて人差し指を1本立てた。
「……一つ、ええ事教えといたるで」
「あら？なぁに？命乞いなら1割だけ聞いてあげるわよん」
「命乞いとちゃうわアホ。何なら耳寄り情報や」
「ーーッ！、良いわ。聞こうじゃないの」
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		<dc:date>2020-04-11T12:44:52+09:00</dc:date>
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		<title>4</title>

		<description>カリエド農園はカボチャやトマト等の野菜…</description>
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			<![CDATA[ カリエド農園はカボチャやトマト等の野菜を栽培して出荷している魔界最大手の農園である。
この農園の経理担当であるロヴィーノ・ヴァルガスはフェリシアーノの兄にあたる。種族は吸血鬼。特徴的な髪のクルンがフェリシアーノとは反対側に付いていた。
ロヴィーノがデスクで片付けているのは、全て納品伝票である。
経理管理が緩い農園主であるアントーニョに変わり、農園の経理を担当しているのだ。紙束を全てファイルに綴じ入れて、とりあえずのノルマを達成し、大きく腕を上げて伸び上がる。
「ん〜！今日も働いぞこのやろー」
顧客リストのファイルをパタンと閉じようとした時、ふとデスクの下に落ちている伝票を見つけた。まだあったのか。危なかった。と内心冷や汗を流し、伝票を拾い上げて名前を確認する。
「…ん？」
しかしその伝票には、印字された名前だけがあり、受取のサインが成されていない。配達したのは誰だとシフトを確認すれば、やっぱりというかアントーニョだ。
「あんの野郎…！！」
堪忍やで？と言いながら笑うアントーニョが頭に浮かぶ。ロヴィーノは前髪をぐしゃりと掴み眉根を盛大に顰めた。
きっと配達先で話に夢中になり、サインをもらい忘れたのだろう。
そのアントーニョ、今日は悪友であるフランシスの所へトマトの配達に赴いており、そのまま飲み会をして農園には戻らないという。自由人か！とロヴィーノが苛立ちに任せてデスクを殴りつけるが、自分の拳がジンジンと痛むだけだ。
「くっそー。仕方ねえ…。偶にはアイツに何か作らせるか」
ロヴィーノは大きく嘆息すると、ジャケットを手に部屋の出口に向かう。ジャケットのポケットには納品伝票がある。
明日二日酔いで出勤するだろうアントーニョに頭突きで挨拶してやろう。と密かに鬱憤晴らしの矛先を定めて、農園を後にした。

農園の外に出れば、太陽の光が眩しく目に痛い。吸血鬼は夜行性なのだが、ロヴィーノは昼間に行動する希少な吸血鬼であった。
ロヴィーノはコウモリになる事も出来る。コウモリになって飛んで行けば早いのだが、ロヴィーノは市街地をのんびり歩くのが日課である。
当然、目的あっての事だ。
「君の様に美しい金の髪に世界が嫉妬を覚えそうだぜ、俺は君の髪に虜だけど」
「あら、ありがと。でも彼と待ち合わせしてるの。ごめんなさい」
「チギ…ッ！」
ロヴィーノの目的はナンパだ。
目に付いたありとあらゆるヴェッラに声を掛けては撃沈している。ロヴィーノの昼間に行動する希少種というのも、このヴェッラをナンパする為という、何とも気合いの入った理由である。世間一般からは「何だその理由」と渋い顔をされるだろう。
「なんだよ…、全然上手く行かねえぞ！これもアントーニョのせいだ！ファンクーロ！！」
アントーニョの奴、絶対とっちめてやる！と些か私情も含めた怒りが湧いた。
ロヴィーノがヴェッラをナンパしながら目的地に着いた頃には既にオヤツ時だった。
今日も完敗だったと沈んだ気持ちで目的地の裏口扉を潜り、勝手にドカドカと店内に入り込んだ。
勝手知ったる何とやらである。
「おい、バカ妹。伝票にサインが無えぞこのやろー」
伝票片手に妹であるフェリシアーノの姿を探し、カウンターを覗きに行けば此方に背を向けた大柄な男、きっとオーガかなんかのモンスターだろう。
そのモンスターと向かい合う位置に妹のフェリシアーノ。何で向かい合ってんだ？と思いながら、その後方に居た人物にロヴィーノの気分は一気に上がった。
サッとその人物、魔界の妃である菊の隣に跳躍すると、細い指先を優しく包み込む。
「！、あら、ロヴィーノ君、お久しぶりですね」
少し青い顔の菊はロヴィーノの出現に驚いたが、どこかホッとした様に微笑んだ。
「菊、顔色が悪いな。どうしたんだ？あの馬鹿魔王と何かあったのか？良かったら相談に乗るぞ」
菊の顔を覗き込む様にロヴィーノが窺う。
「いえ、ギルベルト君とは良好なんですよ、今は問題が…」
眉を下げて余程困った顔をする菊にロヴィーノは指先に力を込めて「俺を頼れよ」といつに無い真面目なオーラで囁けば、菊がバッと期待に満ちた顔を上げる。
だが、菊の背後に張り付いていたオレンジ色の塊、ハゲが必死に頭を左右に振っている。
「？よう、ハゲ。お前も居たのか。ってか何だ？何かあったのか？」
頭に疑問符を浮かべるロヴィーノの背後に大きな影が差した。
「ま、まさか…そんな…、ロ、ロマちゃんなの！！？？」
「は？何だ？？」
ロヴィーノが低い声音に驚き、振り返った先には大きな黒い塊。
上下真っ黒なスーツに短い金髪。逞し過ぎる筋肉、男らしいケツ顎、高く大きな鼻からは何故か鼻血。そしてその口にはカボチャらしきカスが張り付いて汚い。思わず「チギッ…！」と動揺の声が漏れる。
「だ、誰だこのやろー！！ゴリラにもオーガにも知り合いは居ねえぞ！こんちくしょうめ！」
クルンが萎びているが、菊の手前必死に強気に出る。正直目の前のゴリラには勝てる気がしないが、自称伊達男にもプライドぐらいあるのだ。
「ひ、酷いわ！！ロマちゃんまで！でも、でもね、良いの！！貴方が男ならそれで良いのよ！だってロマちゃんにはちゃんとチン○が、金○マが付いt《メキッ！》ッンゴォオ！？」
「ちぎゃあああああ！？」
目に涙を溜めてジリジリとロヴィーノに歩み寄るゴリラの顔面目掛けてプラカードが凄まじい勢いで減り込んで来た。ゴリラのあまりにも恐ろしい姿と呻き声にロヴィーノが堪らず悲鳴を上げる。
そんな怯えたロヴィーノの前に果敢に陣取るオレンジ色。ゴーストのハゲ。
減り込ませたプラカードを回収し、手の中でスイングしている。ブォンッ！と勇ましく空を裂く音が聞こえた。殺る気満々だ。
菊の隣では黄色の塊、ザコが両手にポンポンを持ってハゲを応援しているが、ロヴィーノは状況が飲み込めない。
「痛いじゃない！！乙女の美しい顔に何て事すんのよ！このオレンジ野郎がぁああああ！！」
「ーーッ！！（プシューッ！）」
凄まじい剣幕（野生的本性）で怒鳴るゴリラに対して、ハゲも顔を真っ赤に発光させて頭からプシューッと煙を噴き出している。大激怒だ。
「お、おぃ…、ハゲ、大丈夫なのかよ…？」
すっかり戦意をなくしたロヴィーノは青褪めた顔でハゲを心配する。あの巨大なゴリラと小さなゴーストでは優劣は明らかだ。
「大丈夫だよ〜。アタシも加勢する！」
そこへロヴィーノの妹であるフェリシアーノが星のステッキ片手に声を上げるが、目がまったく笑っていない。
コイツら本当、何があったんだ？と疑問に思うがあのゴリラは危険な感じがする為、事情は後で聞く事にした。
だって自分の身が大事だ。

こんな状況に遭遇したのも、すべてアントーニョの所為だと思うロヴィーノ。
明日、無事に帰れたら、先ずは頭突きからのトマト食べ放題だ。後は仕事をサボってシエスタする！

『チギーッ！！！アントーニョこの野郎！！』


「ぶえっくし！」
「ちょっ！？…汚いなぁ。何？風邪？」
遠く離れたフランシスのレストランではアントーニョが盛大にくしゃみをしていた。
そのくしゃみの飛沫をモロに受けたのが、正面でワインに舌鼓をうっていたフランシス。
飛んできた唾の飛沫を紙ナプキンで拭き取って眉を顰めている。
「んー、何やろ？またロヴィが怒っとるんかもなぁ」
「何だそれ。いつもの事だろ？」
明日の事など頭に無いアントーニョはフランシスと朝まで飲み明かしたのだった。
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		<dc:date>2020-04-11T12:44:08+09:00</dc:date>
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		<title>3</title>

		<description>
何とか検査を終え、指先のネイル具合を…</description>
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			<![CDATA[ 
何とか検査を終え、指先のネイル具合を暇そうに見つめるゴウリーと眉を下げて佇む菊、そして床に転がる秘書Aにゼーゼーと息を切らずルートヴィッヒ。
ルートヴィッヒからひたすらに逃げ惑い、捕まえる寸前で生娘の様に泣き叫び、ルートヴィッヒが固まる。また逃げ出した秘書Aが菊に泣き縋る寸前で捕まえる事に成功したのだが、この秘書A、またも生娘の様に恥じらい、ルートヴィッヒに動揺と悪寒を存分に与えた。
その間に検査を終えたゴウリーが事態が進まなさ過ぎると痺れを切らし、秘書Aの首元を吊るし上げ、その隙にルートヴィッヒが検査を行った。という背景がある。

ルートヴィッヒは半眼になったままギルベルトを見上げて人相悪く結果を紡ぐ。
「…げ、言動は危険だが、数値、は人間だ…」
「お、おう。ご苦労だったな…休めよ、な？」
我が弟ながら、鋭い眼光が怖すぎる。ギルベルトは引き攣る頬を必死に抑えながら、労をねぎらい休む様に促す。
「そうさせてもらおう」
撫で付けたオールバックから、髪が所々飛び跳ね、より一層疲労感を醸し出すルートヴィッヒは調書を側近に手渡して自室へと引き上げる。
「菊はこっち来い」
兵士に連れられてゴウリーと秘書A、ルートヴィッヒが連れ立って部屋から出て行くのに、菊も後に続こうとしていたのをギルベルトが呼び止めた。
「妃様、後は私共にお任せ下さいませ」
「そ、そうですか？では、お願いしますね」
振り返った側近の男が誇らしげに胸を張り進言すれば、菊は一瞬逡巡した後、任せる事にした。


菊がギルベルトの側までやって来ると、華奢な腕を引き寄せて膝の上に優しく抱え込んだ。
頭を垂らし、大きく嘆息するギルベルトの髪を優しく撫でながら菊は小さく笑う。
「なーに笑ってんだ、てめぇはよ」
ギルベルトが恨めしいとばかりに菊の身体を左右に揺らし、グリグリと菊のたわわな胸元に頬を擦り寄せながら抗議する。
「ふふ…。だって、あの２人が向こうの世界で私は男性だったと仰るから、どんな方かな？って想像して…、あんなに従順な部下に愛されてる男性の私…、会ってみたいです。そして、その私を見て、貴方がどんな反応されるのかと想像したら可笑しくて」
クスクス笑う菊に、ギルベルトの眉間に皺が寄った。
「いくらもう１人の菊だっつっても、他所の男に会いてえなんて思ってんじゃねぇよ。それにだ、俺様は菊が良い。悪魔で妃で俺様の嫁で、俺様だけの菊が良いに決まってんだろ。もう１人のお前に会っても、目の前のお前じゃ無えなら、興味ねえし、気持ちも何も変わんねえ」
「！…私も、貴方でないと嫌です」
頬を赤らめながら、ギルベルトが良いと告げる菊に胸がカッと熱くなった。その衝動のまま、赤く色付く唇に噛み付く様なキスをする。
長いドレスの裾を割って、膝から太腿にかけて柔らかな肌を撫で上げた。
既に息の上がっている菊の抵抗など無いも同然。
「はっ、マジで飽きねえな。１発じゃ終わんねえぞコレ」
チュッとリップ音を鳴らして唇を離し、鼻先を菊の頬に擦り寄せた。今すぐ此処で抱くと宣言する様な台詞に菊はトロンとした瞳を顰める。
「此処では、駄目ですよ…、まだお仕事があります」
「忘れたか？俺様は魔王だぜ？」
「…職権濫用です」
「俺様には優秀な弟と家臣がいるからな。半日遅れたって問題無えよ」
この場にルートヴィッヒが居たなら「問題大有りだ！！」と目を吊り上げて怒鳴っていただろうが、残念ながら疲れ果てて自室に引っ込んでいる。
ギルベルトの指先が菊のたわわな胸に伸びて、その柔らかさを堪能する様に揉み解せば、菊から抑えきれない色のある声が漏れた。
「お前は、夜まで我慢出来んのかよ？」
意地悪く菊の耳に熱く艶っぽい声を吹き込む。
「…んぅッ！…は、ぁン！出来、ません」
熱が抑えきれないとばかりに潤んだ瞳で此方を見つめてくる。これも日頃の調教の賜物だろうとギルベルトは満悦に笑った。
「ケセセ。上出来だ」
今は邪魔者が居ない。

釣り上がる口角をそのままに、ギルベルトと菊は濃い霧の中に消えた。



[newpage]
魔界の市街地を物珍しいとばかりにキョロキョロと見渡す秘書Aとゴウリー、そして疲れた表情のルートヴィッヒが３人で歩いている。
何でも向こうの世界に帰れる日まで城の外にアパートを借りて２人に与える事になった。
完全なるギルベルトとルートヴィッヒの思惑通りなのだが、そのアパートの住所を聞いた時、ルートヴィッヒは盛大にアパート選びに参加しなかった事を後悔した。面倒だからと部下任せにすべきでは無かったのだ。
その住所というのが…

立ち止まったルートヴィッヒの背中に倣い足を止めた２人。
「…この建物の２階だ」
その言葉に２人は建物を見上げる。赤いレンガ造りで３階建の物件。隣接するのはアンティークショップとカフェ。
「中々良い所ですね」
「魔界ってもっと悍（おぞ）ましいイメージだったんだけど、アタシ達の世界と変わらないのね」
悍ましいのはお前だ。と言葉を飲み込んでルートヴィッヒは沈黙した。周辺を見渡す２人はかなりの好感触に各々言葉を放つ。
「隣は…？？コレ…カフェ？ですか？」
「あらやだ！可愛いじゃない！カボチャがモチーフなのね！後で行かなくちゃ！」
２人の目線は隣接するカボチャのカフェに向く。…そうカボチャのカフェだ。
「…行っても良いが、大人しくするんだぞ！決して口を開くな、喋るな。お茶が終わればさっさと引きあげろ」
眉間に皺を寄せて凄んでくるルートヴィッヒに驚きながらも、２人は顔を見合わせて、またルートヴィッヒを見遣る。
「お言葉ですが、話さないと注文も出来ませんよ？」
「なぁにぃ？あのカフェに何かあんのかしら？アンタさっきから様子可笑しいわよ」
２人の最もな意見にグッと詰まる。
「いや、何でも「何してんの？ルート」ブッ！？」
咳払いをして、何でも無いと装うルートヴィッヒの言葉を遮る第三者の声に２人は目を丸くし、ルートヴィッヒはびくりと肩を揺らした。
ルートヴィッヒが振り返ると、そこには淡いウェーブした長い茶髪に鳶色の瞳、赤い唇の美女が不思議そうに立っていた。
「フェ、フェリシアーノ…！何でここに！？」
「何でって、ここ店の前だし？」
ルートヴィッヒの疑問に益々不思議そうにするフェリシアーノ。確かにカボチャのカフェはフェリシアーノと菊の店だ。今ではフェリシアーノが１人で切り盛りしている。自店の前に店長であるフェリシアーノが居ても何ら可笑しい所は無い。
「フェリシアーノって…イタリア殿！？あなたまで女体化ですか！？なんて美女！！！」
「オーマイガッ！！エンジェルまで女になってるの！？どんな悪夢よ！悪夢なら早く目覚めろアタシィイイイ！！」
ルートヴィッヒの背後から驚いた声が上がり、ルートヴィッヒもフェリシアーノも目を丸くした。
「まさか、フェリシアーノもそっちの世界で存在するのか…」
「ヴェ？誰だれ〜？」
ルートヴィッヒの横からピョコッと顔を出すフェリシアーノの瞳には好奇心が浮かんでいる。
「おや、申し遅れました。わたくし、秘書Aと申します」
「へぇ、宜しく！フェリシアーノだよ！其処のカフェを経営してるから遊びに来てね！」
ニコニコと挨拶を交わした後、フェリシアーノは秘書Aの隣で茫然と空を見上げるゴウリーを見遣る。
「…ねえ、大丈夫なの？この人」
「ああ、問題無い。大体こんな奴だ。コイツはゴウリーという」
フェリシアーノの問い掛けにルートヴィッヒが真面目に答えると、へぇ。と興味無さげにフェリシアーノが頷く。
「…あり得ないわ、ベイビーだけでなく、エンジェルまで…そんな…ッ！…Nooooo！！！金○マはそんな疎かにするものじゃ無くってよ！！！」
ブツブツと独り言を呟いていたゴウリーが突然金タ〇と咆哮した事に、その場に居た者がギョッとゴウリーを見上げた。
「女体化した挙句、こんな冴えない女になってるなんて！…ん？あ！待って！良く見たらアタシとキャラ被ってるじゃなーい！厚くて赤い唇はアタシの専売特許なのよ！ダイナマイトバディはアタシの方が上だけどね！」
「…ぁあ゛？」
フェリシアーノに指差して嘆いているのか罵っているのか分からないがゴウリーはわなわなとしている。その指摘されたフェリシアーノからは恐ろしい程の冷気が漂っていた。
「ま、待て待て！フェリシアーノ落ち着くんだ！コイツの発言には俺も頭が痛くなるが、今は落ち着け！一応モンスターみたいな見た目でも人間なんだ！」
慌ててルートヴィッヒがフェリシアーノの肩を掴んで抑える。
「ちょっと！？モンスターみたいな見た目ですって！？酷いわ！アタシ達打ち解けたと思ってたのに！とんだ裏切りよ！ルートちゃん！！」
「打ち解けた覚えは無いぞ。あとちゃん付けやめろ」
ルートヴィッヒが頬を痙攣らせながらゴウリーに抗議した。そしてさっさとアパートに入ってくれと促そうとした時だった。
「よう、お前ら。何して…ってアレ？フェリちゃんじゃねえか」
「フェリシアーノさん、お久しぶりですね」
上空から呑気な声が２人分。
４人が上空を見上げれば、其処には黒いペガサスに乗ったギルベルトと前に抱えられた菊の姿。
「祖国ぅう！あ、違う！菊様ぁあああ！！下からのアングルがまた麗しさに妖艶さが追加されておりますぅう！そのヒールで踏み躙ってk《バシンッ！》あぶっ！？」
いち早く反応したのはやっぱり秘書Aだ。祖国に瓜二つとされる菊に思いの丈以上の言葉を口にしている途中で何処からともなく現れた黄色のゴースト、ザコのプラカード攻撃により黙らずを得なくなった。
「〜ッあ、あなた…また…！！」
顔面を抑えながら睨む秘書Aを丸っと無視してザコがカメラを手にギルベルトと菊の姿を収めている。どうやら秘書Aの立ち位置が絶好のアングルだった様だ。
その隣ではオレンジ色のゴースト、ハゲがプラカードを消毒液で綺麗に拭うとボイスレコーダーをギルベルトと菊の方向に構えた。
「チビ共…、まぁた着いて来たのかよ」
呆れた様に嘆息するギルベルトに対し、菊はクスリと微笑む。
「魔王も妃も何故此処に？」
「あ？散歩に決まってんだろ？な、菊」
ルートヴィッヒの疑問にギルベルトが何でも無い様に答えたが、これは執務が面倒でサボったに違いない。絶対。
何だって自分ばっかり貧乏くじを引くんだ。とルートヴィッヒは悲観に暮れた。
頭を抱えるルートヴィッヒの隣でフェリシアーノが笑みに花を咲かせて菊を見上げている。
「チャオ菊！コーヒー飲もうよ！昨日新作のチョコレートが手に入ったんだ〜」
さっきまでの雰囲気が嘘の様に無邪気に誘うフェリシアーノ。
「新作のチョコレート！？是非是非！ご一緒させて下さいな！ね？ギルベルト君」
目を輝かせて振り返る菊に反対する理由も無く、ギルベルトは大きく頷いた。
「勿論だぜー！俺様も美味いコーヒー飲みてえし！」
ニコニコと会話する夫婦に非情なる声が二重に響く。
「何を言ってるんだ。貴方は執務に戻ってくれ」
「えー、ギルベルトも？？」
「ぐっ…！酷え！！」
可愛い弟とアイドル的存在に辛辣な言葉を浴びせられ、ギルベルトは菊の肩に鼻先を押し付けてスンスン鼻を鳴らす。特にフェリシアーノからの台詞はダメージが大きい。
フード越しにギルベルトの頭を慰める様に撫でて、菊は苦笑するしかない。
そんな夫妻を間近でカメラに収めるゴースト達。秘書Aはスマホを取り出し菊の姿を何とか収めようと奮闘するが、ハゲのプラカードが意図的に邪魔をして菊の姿だけが絶妙に見えない。黒のペガサスの鼻先を収めたところで何も萌えないと歯軋りしていた。
ゴウリーは飽きたのか、カフェのウィンドーに反射した己の身嗜みを整えたり、何か奇妙なポーズをとっている。
「〜ッええい！！収集が付かん！貴様等変態共はさっさとアパートに入れ！先ずは貴様等から片付ける！兄貴はそこで待機していろ！逃げたら…分かるな？」
「ちょっと変態ですって「ゴウリーさん！空気読んで黙る！！」んんん！！！」
「俺様此処で待ってるぜ…、ケセ…」
秘書Ａが反論しようとしたゴウリーの口の中に持っていたハンカチを丸めて押し込む事で黙らせ、ギルベルトは弟の眼光にお利口さんに待つ事を誓った。

その後、ルートヴィッヒに引き摺られながら城に戻る魔王を多くの住人が目撃し「またか…」「魔王も凝りねえな」等と噂されていたらしい。
菊はギルベルトの状況に見て見ぬフリを決め込み、フェリシアーノとおやつタイムに興じる。
同じテーブルには小さなゴースト達も機器片手に同席している。
フェリシアーノがチョコレートとコーヒーを準備してテーブルにつき、楽しいお茶会の開催だ。

暫く穏やかにトークを楽しんでいれば、チリンチリンとドアベルが来客を告げた。
「あ、いらっしゃ……」
「！」
招かれざる客にフェリシアーノのオーラが氷点下にまで下がり、菊とゴースト達は頬を痙攣らせた。
皆の視線の先ではゴウリーが腰に手を当てて仁王立ちしていたからだ。

「…ハァイ。お邪魔するわよん」


＊


「あーあ、アタシのベイビーとエンジェルが男になってるなんて…、しかもアタシとキャラが被ってるとか無いわー。ま、アタシの方が良い身体してるけど？」
まさかのキャラ被り発言にフェリシアーノの頬が引き攣り、痙攣を起こしている。その隣では菊が蒼ざめ、遠い眼差しで窓の向こうを見つめていた。
ゴースト達は我関せずとばかりにカメラやボイスレコーダーの記録を確認し合っては頷いている。
「…わぁ、化け物と同等のキャラとか嬉しく無いなぁ。お前の世界じゃゴリラが美人だって言われてるの？ゴリラに似てるお前みたいなゴリラがモテるの？傑作だね。で？そこ何てジャングルさ？それとも動物園かな？」
口元は何とか笑ってるが、目がまったく笑っていない。
「ゴリラに似てるアタシがゴリラって何よ！？まんまゴリラじゃない！アタシがゴリラみたいな化け物だっての！？それとも、アンタみたいな冴えない女をアタシの引き合いに出しちゃ、アンタが惨めだったかしらん？美し過ぎてごめんなさいねぇ」
何故か勝ち誇った笑みを浮かべ、更にフェリシアーノを煽るゴウリーに菊はそっと両手で顔を覆い隠した。胸中では切実に誰かに助けを求める。
「お前みたいな酷い化け物なんか居ないよ。ある意味魔界一のブスキャラじゃん。一位だよ、良かったねー。お祝いに顔面にカボチャあげようか？そのまま地獄見せてあげる」
氷点下にまで下がった場の雰囲気。フェリシアーノが片手に持ち出したのは、とっても硬質なカボチャ。そうギルベルトの顎にヒットさせたあのメチャクチャ硬質なカボチャだ。【魔王と悪魔（後編）参照】しかもこのカボチャはあの時より一回り大きい。
「あら、カボチャ戴けるの？アタシ大好物なのぉん」
指の関節をボキボキ鳴らしてゴウリーが椅子から立ち上がると、フェリシアーノもゆっくりと立ち上がった。
「あ、あの…！お、落ち着いて話を…！」
何とか場を取り持とうと菊が冷や汗を流しつつ、声をあげればニッコリと２人に見下ろされて思わず押し黙った。魔界の妃という位置に居ながら、何と不甲斐ないと少しだけ気落ちする。

菊の肩をゴースト達がトンと慰める様に叩いた。
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